編集部からのお知らせ

大手もベンチャーも続々参入! 業界を超えて盛り上がる「電力シェア」

昨今、再エネ業界で盛り上がりを見せる「シェアリングエコノミー」。電力シェアの価値を最大限発揮するためには、業界の枠を越えて連携していくことが重要なポイントだ。

前回記事:日本の電力流通が変わる? エネルギーは”集中型”から”分散型”へ

再エネの環境価値を
最大限活用

「昨年春ぐらいから、大手企業も出資するようになり、電力シェアリングエコノミーの流れが急にやって来ました。もう黎明期は過ぎました」。

そう話すのは、ベンチャー企業の電力シェアリング社長、酒井直樹氏だ。同社は今年、環境省の「平成30年度ブロックチェーン技術を活用した再エネCO2削減価値創出モデル事業」に採択された。

この事業の狙いは、温室効果ガス排出量の削減目標の達成に向けて、再エネのポテンシャルを最大限かつ効率的に活用すること。そのために、太陽光など再エネ発電の自家消費によるCO2削減価値について、十分に評価できるシステムの構築を推進している。

住宅用太陽光発電の余剰電力は、送配電網を使って電力会社に高い値段で売っている。この余剰電力の売価には、カーボンフリーで作ったという環境価値も含まれる。

その一方で、自家消費分は再エネ100%にも関わらず、現状の電力システムでは火力発電などの電気と混じってしまい、その価値が正確に評価できず埋没してしまっているのだ。その価値は2000億円に達するともいわれている。

それをブロックチェーン技術で見える化し、スマートコントラクトで再エネ電気の価値を買ってくれる人、例えば観光地で電動モビリティをレンタルするドライバーなどに使ってもらうことができる。

そこで同社は、ソフトバンクなどとコンソーシアムを組み、鳥取県米子市と神奈川県川崎市の個人住宅で注目すべき実験をした。

太陽光発電の自家消費分発生値を1分ごとに計測し、リアルタイムでサーバーに送信する。そのCO2削減価値を、香川県豊島でパーソナルモビリティレンタルサービスを展開する「瀬戸内カレン」の持つ電動バイクの充電に使われる電力に遠隔移転する。

これをブロックチェーン上で、1kWhに相当するCO2削減価値を3円で約定・取引するというライブデモに成功したのだ。

業界を超えた融合がポイント

もう1社、環境省の事業に採択されたのがデジタルグリッドだ。同社は、三菱商事など27社からの出資で設立。「デジタルグリッド技術」を根幹とした、自家消費される再エネのCO2削減価値を事業者向けに取引・決済できるシステムを構築しようとしている。

このシステムは、事業運営を100%再エネで調達することを目標に掲げる「RE100」に加盟したいという企業にとっても効果的だ。なぜなら、個人住宅から出てきた再エネの環境価値を、企業が引き取れる仕組みだからだ。

デジタルグリッド技術は、元・東京大学特任教授で同社会長の阿部力也氏が発明したデジタルグリッドルータ(DGR)、デジタルグリッドコントローラ(DGC)という機器、またこれらと連携しながら電力取引機能を受け持つデジタルグリッドプラットフォーム(DGP)により構成される。

この技術なら、クラウド上で環境価値の取引や電力の売買がリアルタイムでできるようになる。また、「機器には気温・気圧センサーがあり、天気も把握できます。例えばコンビニに導入すれば、何曜日の何時くらい、晴天ならこれくらいの客が入るというデータが取れます」と、同社社長の越村吉隆氏は話す。

同社は、埼玉県さいたま市の浦和美園地区で、新たに建設される予定のスマートハウス(戸建て)と、大型ショッピングセンターのイオンモール及びコンビニのミニストップの間で、電力融通の実証試験に取り組んでいる。

ここでは、スマートハウス5戸に対し、DGRと約5kWの太陽光発電、蓄電池を設置。同時に、5戸の間を自営線(特定送配電事業者が電力供給のために自ら敷設した電線)で結ぶ。これにより、5戸の間で太陽光発電により蓄電された電力を常時・非常時ともに融通できるという。


取材・文/大根田康介

SOLAR JOURNAL vol.27(2018年秋号)より転載

関連記事

太陽光関連メーカー一覧

アクセスランキング

  1. 【 参加受付中!】2024年4月23日(火)「第29回PVビジネスセミナー」~ 市場動向/PPA・蓄電池の最適化モデル ~...
  2. 東京都の2024年度系統用蓄電池導入事業 特高5件、高圧6件を採択予定
  3. 太陽光パネルの増設・更新を促進! 2024年度にルール見直し
  4. 市場運用者・広域機関に聞く、長期脱炭素電源オークションが目指すものとは?...
  5. 経産省、新電力ビジネスの経過措置「部分供給」の見直し案 オフサイトPPAへの影響は?...
  6. 【受付中】5/28火 ケーブル盗難のリアルを知るための「太陽光のリスク管理」セミナー開催...
  7. 太陽光発電所 銅線ケーブルの盗難被害が相次ぐ 銅の価格上昇が背景に
  8. グリッドコードとは? 太陽光発電事業者も知っておくべき系統運用の新ルール...
  9. 脱原発完遂のドイツの電源構成、どうなるエネルギー費の再高騰リスク?
  10. 2024年度の脱炭素ビジネス【発電側課金・脱炭素オークション・非化石価値取引】...
太陽光業界最新ニュース

フリーマガジン

「SOLAR JOURNAL」

vol.48 | ¥0
2024/01/31発行

お詫びと訂正

ソーラー電話帳 SOLAR JOURNAL メディアパートナーズ