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経産省が教える! 電力小売自由化の実情

電力小売全面自由化がスタートして、半年が過ぎた。小売電気事業者の登録件数は、事前登録受付開始から1年余りの間に350社にも達している。しかし、大きな地域差があるのも事実だ。今回は、電力小売自由化の実情を紹介する。

スイッチング3%
着実な伸びが続く

電力小売全面自由化がスタートして、半年が過ぎました。小売電気事業者の登録件数は、事前登録受付開始から1年余りの間に350社に達しています( 10月11日時点)。一般家庭による契約会社切替えの申込件数は、9月末時点で約188万件、総契約口数の3%を超えるに至りました。旧一般電気事業者の自社内の契約切替え件数と合わせると、合計で約377万件、およそ6%が切替え申込をしたことになります。

電力小売自由化は、2000年以降、段階的に進んできたものですが、今回はじめて一般消費者が電力会社や料金メニューを選べるようになりました。電気をどのように選択するかという、ある意味で「価値観」の選択が、一般消費者によって行われることになったのです。現時点では価格が大きな要素として競争が行われていますが、電気には価格以外にも様々な価値基準があります。電力小売全面自由化は、改めて、それを問うているのだとも言えるでしょう。

再エネを後押しする
電源構成の開示

価値基準の1つに環境適合性があり、その判断材料に「電源構成」があります。「エネルギー基本計画」にも示されているとおり、小売電気事業者が電源構成等の情報を開示することは非常に重要なのです。

電源構成の開示は、義務化こそされていませんが、小売営業に関するガイドラインにおいても「望ましい行為」と位置付けられています。私たちとしても、事業者に対して開示を呼びかけており、その一環として「電力の小売営業に関する指針等に係る取組状況に係る調査」を実施しているところです。ちょうど現在、2回目の調査結果を取りまとめており、近く公表する予定です。

ちなみに1回目の同調査では、5月1日時点の情報を集計したのですが、電源構成を開示している会社は全体の23%弱にあたる57社。開示予定を含めると58%にあたる145社でした。一般家庭に供給を開始している事業者だけにしぼってみると、そのうちの約73%にあたる70社が開示済もしくは開示予定という結果でした。

なお、環境適合性や地産地消のアピールにおいては、卸電力市場や常時バックアップに大きく供給力を頼っていながら、FIT電気(再エネ)や、地元産の電気ですべてを供給しているかのような誤解を消費者に与えるようなことがあってはなりません。多くの事業者が高い志を持っていることは理解していますが、必ずしもそのような電気の調達ができるとは限りません。正直に努力をしている事業者が評価されるような仕組みが、まずは重要です。100%でなくても、具体的に何%がそのような電気に該当するかを明示することも1つの方法と考えます。

電力小売自由化に
豊かな実りを

はじめに見たとおりスイッチングは着実に進んでいますが、そこには大きな地域差があることも、また事実です(表参照)。地域差を生んでいる理由としては、まず事業者サイドに、①従来の電気料金が安いか高いか、②需要密度が小さいか大きいか、③当該地域での電源確保が容易か困難か、という3つの要因が挙げられます。事業性に直接関わる、この3つの状況によって、新規参入しやすいエリアとそうでないエリアが生じてしまうのです。

ただし、消費者サイドの認知度にも地域差が大きく、これについては広報活動を地道に行っていく必要があると考えています。私たちのアンケートでも、東京や関西では制度の中身まで知っている人がかなりいますが、その他の地域では、自由化されていることを知ってはいても制度がどうなっているかまでは分からないという人がたくさんいます。

私たちは、自由化された電力市場の厳正な監視を行うとともに、需要家の選択肢や事業者の事業機会拡大に向け、市場環境を整えてまいります。電力自由化を実り豊かなものにしていくために、関係各位のご協力をいただければ幸いです。

 

keisansyo_graph01

<契約先・契約の切り替え状況>

 


経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会 総務課長
新川達也

1991年通商産業省入省。電力事業行政、原子力安全規制行政、経済産業行政等に従事。電力・ガス取引監視等委員会 取引監視課長を経て、2016年6月より現職。


取材・文/廣町公則

※「SOLAR JOURNAL」Vol.19 より転載

 

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