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太陽光発電、導入量米国No.1! カリフォルニア州の注目制度、CSIとは

蓄電池の併設で
余剰電力の逆潮流を防ぐ

カリフォルニア州で太陽光発電や高効率省エネ設備機器を標準仕様化している分譲住宅地。 出所:Pardee Homes

カリフォルニア州では、CSIプログラムや再生可能エネルギー利用基準(RPS)などの州の政策によって太陽光発電の導入が大きく拡大した。しかし、太陽光発電の大量導入が加速することで、同州の電力市場に大きなミスマッチが生じてしまった。

太陽光発電の出力が最大になる昼間には電力需要が低く、出力がゼロになる夕方以降に電力供給がピークを迎えてしまうのだ。電力会社は昼間の過剰な電力供給に対応するだけでなく、夕方以降に発生する電力需要の急激な上昇にも火力発電を稼動させるなどして対応しなくてはならない。この電力需給のギャップは「ダックカーブ」現象と呼ばれ、その悪化が懸念されている。



今回の義務付けにより住宅用太陽光発電の導入が拡大され、日中に発電した電力がグリッド(送電系統)に溢れてしまうと、同州のグリッドに悪影響を与えかねない。しかし、家庭で発電した電力を全て自家消費することで、グリッドの安定性を保つことができる。この「グリッドとの調和」を実現するために、今回の建築物省エネ基準には蓄電池併設という選択肢が含まれている。

カリフォルニア・エネルギー委員会(CEC)は、「電力需要とコストが低い昼間は太陽光発電による電力を蓄電池にため、電力需要とコストが高い夕方以降に蓄電池からグリッドに電力を送る。これによってグリッドの安定性を保ち、全ての電力消費者に恩恵を与えることができる」と蓄電池併設の背景を説明している。

カリフォルニア州で2020年以降に建設される新築住宅には、太陽光発電設置が義務化される。 出所:J. Movellan

ちなみに、カリフォルニア州では「ダックカーブ」現象を緩和するため、新しい時間帯別電気料金メニュー(TOU)が2016年に導入された。これは、昼間の電力消費を促し、夕方から夜間にかけて節電を奨励する「昼が安く、夜は高い」という構成である。しかし、これは太陽光発電所有者にとっては電気を「安く売り、高く買う」ことになり、太陽光発電の経済的メリットが減少してしまう。

CECは、蓄電池の併設によって太陽光発電所有者をTOUからの打撃を緩和し、さらにグリッドを助けることができるとしている。ちなみに、蓄電池併設が新しい規定に適応されるためには、(1)太陽光発電の自家消費を最大限にする(グリッドへの電力逆潮流を最小限にする)、(2)電力消費をグリッドのオフピーク時へシフト、(3)デマンド・レスポンスなどのプログラムに参加、などが要求される。



CECによると、この太陽光発電導入の義務化を含めた「2019年基準」に沿った場合、新築住宅1軒あたりで約9500ドルの追加コストが生じるが、システムが稼働する約30年間を通したエネルギーコストの削減は19500ドルに達すると予測している。

これは、月々約80ドルの暖房、冷房、照明などの光熱費削減に相当するそうだ。高効率の省エネ設備を搭載することで、太陽光発電のシステムサイズを「最小限」にでき、初期投資コストは既存の住宅に設置するよりも安くなるというわけだ。

太陽光発電の普及が拡大するにつれて、コスト削減も加速した。以前は政府の補助金無しでは自立することができなかった太陽光発電市場に、変化が起こり始めている。カリフォルニア州の新築建物の太陽光発電導入義務化は、政府の直接補助金普及政策からの卒業へと一歩進展を示す。

PROFILE

モベヤン・ジュンコ

太陽光発電電池メーカーで7年間産業経験を積んだ後、2006年から太陽光発電調査会社米ソーラーバズでシニアアナリストとして活躍。2013年よりジャーナリストとして、米国の太陽光発電政策や市場トレンドに関する記事を日欧米のメディアに多数執筆。


文/モベヤン・ジュンコ

SOLAR JOURNAL vol.30(2019年夏号)より転載

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