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FIT大幅見直しで、バイオマス発電はどうなる?

バイオマス発電は、2018年度FIT改正の目玉となる。輸入材を中心とする大規模案件の急増に対応すべく、 様々な見直しが進められている。バイオマス発電全体のより健全な発展に向けて、いま新たなステージが幕を開ける。

FIT大幅見直しへ。
大規模案件に入札制度を導入

輸入材による大型設備が急増 2030年想定の3倍以上

バイオマスの扱いは、FITの見直しを検討する経産省の審議会においても議論の的となっている。FIT認定量が急増し、エネルギーミックスで想定された2030年度時点の設備容量を既に大きく上回っているためだ。

バイオマス発電のFIT区分は多岐にわたるが、なかでも問題視されているのが「一般木材等バイオマス発電」。チップ・ペレット、PKS(パーム椰子殻)・パーム油など外国産材を主燃料とする発電設備で、比較的大規模なものが多い。その認定量は、昨年 9 月末時点で、2030年度想定の3倍を超える1278万 kW にまで膨らんでいる。

2018年度より入札実施 総導入量をコントロール

経産省は、一般木材等バイオマス発電の導入拡大に一定の歯止めをかけるとともに、国民負担の抑制に本腰を入れていく姿勢を示している。その柱となる施策が、「入札制度」の導入だ。大規模太陽光を対象に2017年度より導入されている入札だが、一般木材等バイオマス発電にも2018年度から取り入れられることとなった。

入札によって競争原理が働けば、国主導で定めてきたFIT価格より、さらに安い価格での導入が促される。 FIT価格の低減は、再エネ導入に伴う国民負担を抑制することにも直結するというわけだ。同時に、入札募集容量として、その年の認定量をあらかじめ決めておけるので、総導入量をコントロールすることも可能となる。

対象は一般木材1万 kW 以上 パーム油発電は全規模で入札

具体的な入札対象は、一般木材等バイオマス発電のうち「1万 kW 以上」の規模となる見通し。さらに、現在は一般木材等バイオマスの一種とされている「パーム油等バイオマス油脂」を新たな区分と して独立させ、これについては全規模で入札に移行する方針だ。

パーム油とはアブラヤシから採れる油であり、チップやペレットなど固形燃料とは性質が異なる。 固形燃料を利用した蒸気タービン発電と、パーム油などの液体燃料を使ったディーゼルエンジン発電とでは、コスト構造にも大きな違いがある。一般に液体燃料の発電設備の方が、固形燃料のものよりも建設費用も安い。パーム油等バイオマス油脂を別カテゴリーとすることで、こうした不整合を解消し、導入価格の適正化を図っていく考えだ。

2018年度の入札募集容量は、一般木材等バイオマスとパーム油等バイオマス油脂を合わせて、200 MW が想定されている。

運転開始期限4年 設備発注期限2年

一般木材等バイオマス発電においては、「未稼働案件」対策も大きな課題。FIT認定を受けた案件のうち、実際に稼働しているものは5%程度にすぎない。そこで導入されることになったのが、「運転開始期限」だ。これも太陽光発電において導入されているも のだが、FIT認定から一定期間を過ぎても運転を開始しない案件に対しては「認定取消」を含む厳しい措置が講じられることとなる。具体的な運転開始期限は、 FIT認定日から「 4年」となる見通しだ。

認定取得済みの案件は「運転開始期限」適用の対象外だが、代わりに「設備発注期限」というものが設けられる。FIT認定日から「2年」以内に設備の発注が行われないと、なんらかのペナルティーが科せられることになる。新たな未稼働案件の発生を抑えるとともに、既にある未稼働案件の解消にも大きな効果が期待される新ルールだ。

今回のFIT改正は、輸入材主体の大規模な案件をターゲットにしたもので、地域に根差した中小規模のバイオマス発電を規制しようとするものではない。一般木材等バイオマス以外のカテゴリーにおいては、FIT価格は今年度のまま据え置かれる。バイオマス発電全体の健全な発展に向けて、この改正が実を結ぶことを期待したい。


取材・文/廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.24(2018年冬号)より転載

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