「屋根バブル」を迎えに行く。 用地仕入れのコツと、EPCの勝機
2026/07/21
再生可能エネルギー市場では、適地の減少や各種規制の強化により、新たな設置場所として工場や倉庫などの屋根に注目が集まるようになった。そんな中、WHEREは人工衛星画像とAIを活用した屋根・用地探索サービスを展開している。今後のEPC事業者に求められる戦略について、同社の高野智樹氏に話を聞いた。
1.まもなく到来する「屋根バブル」
2.オフマーケットが9割以上!用地仕入れの現状
3.AIと人工衛星がEPC戦略を変える
4.デジタルとアナログの二刀流で営業はさらに進化する
5.バブルを待つのではなく、自ら迎えに行く
まもなく到来する「屋根バブル」

「屋根が今後の電力ビジネスの鍵を握る」と、WHEREの高野智樹氏は語る。その理由は大きく二つある。
一つは、野立て太陽光発電の開発環境が年々厳しくなっていることだ。設置可能な土地は限られ、行政の再生可能エネルギー導入目標を達成するためには、土地だけでは十分な導入量を確保できなくなる可能性が高い。特に、景観保全や防災、自然環境保護などを目的とした条例の拡大により、太陽光発電を設置できる区域が減少しているほか、陸上風力発電との用地競合や送電網(系統)の容量制約、地域住民との合意形成といった課題もある。そのため、理論上の導入ポテンシャルがそのまま実際の導入量につながるとは限らない。そうなれば、新たな設置場所として工場や倉庫などの屋根が本格的に活用される時代が訪れる。

もう一つは、ペロブスカイト太陽電池をはじめとする軽量な次世代太陽光パネルの普及である。政府は2030年までの早期にGW(ギガワット)級の量産体制構築を目標に掲げている。また量産化によるコスト低減や施工技術の確立が進むことで、2030年以降は従来のシリコン型では設置が難しかった耐荷重性の低い屋根や建物の壁面への導入が一気に広がると見込まれている。

実際、高野氏は「最近は業界の勉強会でも屋根に関する話題や質問が目立ち、増えており、すでに情報収集など具体的な行動に移す企業が明らかに増えている」と話す。屋根市場は、まさに動き始めたばかりの有望市場といえる。
オフマーケットが9割以上!
用地仕入れの現状

実は、市場に流通している不動産情報は、全体の1%あるかないかといわれる。高野氏は「つまり9割以上の土地はオフマーケットに存在している」と説明する。
再エネ業界も例外ではない。特に地方の農地や遊休地は土地価格が低く、不動産会社が積極的に取り扱わないため、市場に出回らないケースが大半を占める。そのため、多くのEPC事業者は地図や航空写真を見ながら、人の目で発電用地の候補を探しているのが実情だった。
こうした課題を解決するために動いたのが同社である。もともと同社は、不動産業界向けに人工衛星画像を活用し、屋根の劣化検知や空き地探索を行うサービスを提供していた。しかし、顧客から「太陽光発電用地がなかなか見つからない」という相談が相次いだことを受け、既存の技術を再エネ分野へ展開することを決断した。
そこで、これまで培ってきたオフマーケットの土地探索技術を応用し、わずか2カ月で太陽光発電所や蓄電所向けの用地探索サービスを開発した。さらに現在では、AIを活用した屋根解析機能も実装。屋根の形状や面積、設置可能性などを効率的に分析できるようになり、住宅や工場の屋根を活用した太陽光発電の導入支援にも領域を広げている。
AIと人工衛星が
EPC戦略を変える
WHEREによる屋根判定の一例。素材と面積を高精度で判別する
太陽光パネルを設置するために、一件ずつ人の目で工場や倉庫の屋根を確認する従来の方法では、マップ上で屋根の細かな形状や素材までを判断するのは極めて難しい。
同社のサービスでは、大量の屋根画像をAIに学習させることで、屋根の種類を自動判定する。現在はスレート屋根か、折半屋根かの素材も判別でき、判定精度は7~8割程度まで向上している。また、屋根面積の測定については、従来からの技術を活用して高い精度を実現している。人による判断のばらつきも抑えられ、より効率的かつ均一なリスト作成が可能だ。

また、この技術により、自治体が所有する公共施設の屋根の特定や、屋根の形状、面積の算出も可能である。公共施設は国や自治体の再エネ導入支援制度を活用した案件が多く、設置可能な屋根を事前に把握することで、補助制度を踏まえた提案や事業計画の立案に役立てることができる。
同社の強みは屋根情報だけではない。工場の業種や敷地内の空きスペース、駐車場の規模なども把握できるため、「屋根への太陽光パネル設置だけでなく、企業ごとに異なる敷地内の遊休地の活用や蓄電池の併設まで視野に入れた提案が可能になる」
と高野氏は説明する。
さまざまなレイヤーを重ねて条件に合う土地の探索が可能
また、農地地目や森林区分といった土地条件、洪水や土砂などのハザード情報など複数のデータを一画面で確認できる点は、多くの利用企業から高く評価されている。複数サイトを行き来する必要がなくなり、調査時間を大幅に短縮できるからだ。
デジタルとアナログの二刀流で
営業はさらに進化する
一方で、高野氏は「営業活動そのものは今後もアナログが重要」と強調する。
長年受け継がれていた土地を手離すという決断は一朝一夕でできるものではない。そのため、商談には長い時間をかけた地権者との関係性構築や、地権者のニーズに合致した提案など、担当者の営業力が最後の決め手となる。
同社は膨大な時間がかかる土地の検索やリスト作成、DMの発送など「作業」となる部分ををテクノロジーの力で代替することで多くの「取引きの場」を創出することを目的としている。
つまり、技術で効率化できる部分は技術を使い、重要な局面には人の力を最大限用いる“二刀流”こそが、同社の考える新たなEPC戦略である。
バブルを待つのではなく、
自ら迎えに行く
「屋根バブル」を待っていても、必ずチャンスをつかめるものではない。市場が成熟してから参入するのではなく、市場が立ち上がる前から情報を押さえ、営業活動を開始することが重要だ。
同社も、こうした将来を見据えて早期から機能開発を進めていた。その一つが既存の太陽光パネルの設置場所をAIで特定する機能だ。今後拡大が見込まれるセカンダリー市場も視野に入れており、この機能はアグリゲーターによる発電所の買い取りや、保守・修繕対象となる発電所を探す事業者にとって、有力な営業情報となる。
太陽光パネルの検知例
さらに同社には将来的に、パネル設置レイアウトやストリング構成のシミュレーションだけでなく、キュービクルや併設蓄電池の配置まで含めた設備全体をシミュレーションできる機能を実装する構想もあるという。
人工衛星とAIで候補地を見つけ、人の営業力で案件化する。その両輪をいち早く回し始めた企業こそが、次の再エネ市場で優位に立つことになるだろう。同社は、その最前線を支えるインフラとして、EPC事業者の新たな営業戦略を後押ししている。
DATA
取材協力:株式会社WHERE
取材・文:大根田康介






