2020年度CO2排出量は過去最少。新型コロナで産業・運輸部門が大きく低減
2022/07/06
環境省が2020年度の温室効果ガス排出量を発表した。前年度より約5%少なく、2013年度比では約18%の削減となった。算定を始めてからもっとも少ない排出量となったが、パンデミックからの経済復興も急がれる。
7年連続の減少で過去最少に
産業と運輸で減少するも家庭は増加
2020年度の温室効果ガスの総排出量は、CO2換算で11億5,000万トンと前年度に比べ5.1%減少した。環境省が4月14日、確報を発表した。2013年度と比べると18.4%低減し、国が掲げる2030年度の排出削減目標である46%に少し近づいたことになる。
これは排出量の算定を始めた1990年度以降で最小の値で、2018年度から3年連続で過去最少を更新し続けている。
(温室効果ガス総排出量の推移。出典:環境省)
環境省は、前年度からの減少要因を「新型コロナウイルス感染症の感染拡大に起因する製造業の生産量の減少、旅客及び貨物輸送量の減少等に伴うエネルギー消費量の減少等」とした。
部門別の排出量では、運輸部門で前年度と比べ10.2%、産業部門で8.1%の減少となった。その一方で、家庭部門は前年比4.5%の増加となり、1世帯あたりの電力消費量が増加したことも報告されている。
(総合エネルギー統計における電源構成の推移。出典:環境省)
環境省はまた、電源構成に占める再生可能エネルギーの割合も明らかにした。それによると、2020年度の水力発電を含む再生可能エネルギーの割合は19.8%と、前年度の18.2%から1.6ポイント増加した。
このうち、太陽光発電は全体の7.9%を占めるとされ、前年度の6.8%から1.1ポイントの増加だ。太陽光発電の増加が再生可能エネルギーの拡大をリードしている形だといえる。
クリーンエネルギー戦略でGX推進
脱炭素と経済発展の両立目指す
2020年度の排出量が過去最少だったことに喜んでばかりもいられない。というのも、2020年度の実質GDP(国内総生産)の伸び率は、リーマンショックのあった2008年度の-3.6%を下回る-4.5%に落ち込んだからだ。これは、物価の変動による影響も除いた実質GDPであるだけに、経済の低迷が憂慮される。
そこで、政府は、脱炭素化とともにさらなる経済成長を目指す「クリーンエネルギー戦略」の検討を始めている。クリーンエネルギー戦略とは、将来にわたり安定的かつ安価なエネルギー供給を行うため、産業部門など需要側のエネルギー転換を図るための方策だ。
そのほかのエネルギー基本計画やグリーン成長戦略などとの関係は下図のようになっている。
(クリーンエネルギー戦略の位置付け。出典:経済産業省)
5月13日に経済産業省が発表したクリーンエネルギー戦略の中間整理では、昨今の世界情勢を踏まえ、エネルギー安全保障を確保しながら、脱炭素を加速させるとした。また、脱炭素を経済成長につなげるグリーントランスフォーメーション(GX)なども整理するとしている。
DATA
環境省:2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について
文:山下幸恵(office SOTO)