脱炭素

【クリーンエネルギー戦略】地球温暖化対策を経済成長につなげるための戦略とは?

クリーンエネルギー戦略は、2050年カーボンニュートラル実現に向けた成長戦略であり、昨年決定された第6次エネルギー基本計画を具体化するものでもある。先ごろ、同戦略に関する審議会の中間整理が発表され、その方針が明らかになった。中間整理の内容をひもとく。

クリーンエネルギー戦略とは

クリーンエネルギー戦略には、成長が期待される産業ごとの具体的な施策、需要サイドのエネルギー転換、クリーンエネルギー中心の経済・社会・産業構造への転換、地域・くらしの脱炭素化に向けた政策対応などが盛り込まれる。中間整理をみると、エネルギー安全保障の確保についても重きを置いた内容となっている。

第1章
エネルギー安全保障の確保

第1章では、ウクライナ危機や電力需給の逼迫を踏まえた対応と今後の方向性が示される。「日本はロシア依存度の低減というトランジションと脱炭素のトランジションを乗り越えていかねばならず、再エネ、原子力などエネルギー安全保障および脱炭素効果の高い電源の最大限の活用など、エネルギー安定供給確保に万全を期し、そのうえで脱炭素の取り組みが必要となる」との観点から、資源燃料、電力など分野ごとの具体的な対応が整理されている(表1)。

エネルギー政策の今後の方向性(表1)

第2章
炭素中立型社会に向けた
経済・社会、産業構造変革

第2章では、脱炭素の実現と同時に、日本経済の成長・発展を実現させていくため、現在のエネルギー需給構造を転換することに加え、産業構造も大幅に転換していくことが重要であるとして、そのための対策を以下のとおり4節に分けて説明する。

第1節
エネルギーを起点とした産業のGX

2050年カーボンニュートラルに向けては、国内外のビジネス環境(国内のインフラ制約、設備投資、国内外の規制等)、国内外各産業の市場規模を踏まえて、脱炭素手段の需給バランスや競争関係・補完関係の変化を見極めることが重要。クリーンエネルギー分野における国際的な大競争を勝ち抜くため、成長が期待される分野において投資の予見可能性を確保し、大規模な投資を引き出していく(表2)。

※GX(グリーントランスフォーメーション)とは、経済成長と両立したカーボンニュートラルを実現するために、経済社会システム全体を変革していくこと(編集部注)。

 

成長が期待される分野とGXの方向性(表2)

第2節
産業のエネルギー需給構造転換

徹底した省エネを追求し、CO2フリーなエネルギー消費へ転換していく方向性は業種横断で共通の考え方。他方、技術の選択肢・カーボンニュートラルへの道筋は一つではなく、企業のエネルギー消費・設備状況などに応じて異なる。各企業が利用可能な技術、サプライチェーン上の位置づけなど自社の置かれた環境を踏まえて、適切なトランジションを描く必要がある。

政府は企業行動を促す必要性・緊急性や、投資規模の大きさなどに起因する事業リスクの高さ、支援・規制の相当性等を踏まえて適切な手法を組み合わせた政策を実施。とくに資金調達に関しては、企業・業種ごとのトランジションのパターンに応じて、適切な支援策を実施する。

わが国の雇用の約7割を支える中小企業等は、日本全体の温室効果ガス排出量のうち1割~2割弱(1.2億t~2.5億t)を占め、目標実現には中小企業の努力も必要不可欠。中小企業がカーボンニュートラルに取り組むことは、省エネによるコスト削減、資金調達手段の獲得、製品や企業の競争力向上の点において経営力強化にもつながり得る。

中小企業に対しては、温室効果ガス排出量の見える化、設備投資促進、支援機関からの「プッシュ型」の働きかけ、市場創出等の施策で後押ししていく。

第3節
地域・くらしの脱炭素に向けた取組

経済社会全体やエネルギーインフラのトランジションの時間軸を俯瞰しつつ、「地域脱炭素ロードマップ」「みどりの食料システム戦略」「国土交通省環境行動計画に基づく国土交通グリーンチャレンジ」等の政策プログラムと連携。地域における新たな需要を創出し、将来に向けた投資拡大の一翼を担うものとする。

再エネ含め、各地域の特色ある地域資源を最大限活用し、地域経済を循環させ、防災や暮らしの質の向上など地域課題解決に貢献するよう、Win-Winで進めていく。

消費ベースでみると、わが国のライフサイクル温室効果ガス排出量の約6割が、衣食住を中心とする家計消費に起因しており、消費者の意識・行動の変化も重要。

資源循環関連産業の発展にも取り組み、サーキュラーエコノミー関連ビジネスの市場規模を2030年までに80兆円以上とすることを目指す。生物多様性への負荷低減を脱炭素と同時に図り、気候変動に適応する社会へ転換する。

第4節
GXを実現するための
社会システム・インフラの整備に向けた取組

炭素中立型社会に向けた今回の転換は、産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会・産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させるものであり大規模な投資が必要である。

投資の予見可能性を高めるためのロードマップを含めた「成長志向型カーボンプライシングの最大限活用」と「規制・支援一体型の投資促進策の活用」という基本コンセプトのもと、政策の骨格は下表の5本の柱を軸に構成(表3)し、年末策定に向けてさらなる具体化を図る。

社会システム・インフラの整備に向けた取組の全体像(表3)


取材・文:廣町公則
出典:経済産業省「クリーンエネルギー戦略 中間整理」

SOLAR JOURNAL vol.42(2022年夏号)より転載

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