政策・制度

東京都の太陽光設置義務化、都議会で可決なら2025年度から施行の見通し

東京都による新築建物への太陽光パネルなどの設置義務化を求める新制度の輪郭がはっきりとしてきた。大手住宅メーカーを対象とし、区域ごとに3段階の算定基準率を定める方向だ。今後、都議会での審議・決議を経て、2025年4月の施行を目指すとされた。

都内の大手住宅メーカーが対象に
設置基準の求め方も公開

東京都は、2030年までにCO2排出量を50%削減(2000年比)する「カーボンハーフ」の実現を通じて、2050年カーボンニュートラルの実現を目指している。9月9日には、2030年を目途とした「カーボンハーフの実現に向けた条例制度改正の基本方針」を策定した。

この基本方針は、これまでの東京都環境審議会やパブリックコメントなどの検討を踏まえ、条例改正に関する制度を強化・拡充する方向性を示したもの。「新築建物のCO2削減を強化・拡充」「既存建物のCO2削減をさらに強化」「都市づくりでのCO2削減を高度化」「利用エネルギーの脱炭素化を加速」「カーボンハーフの取組を支える連携・協力」という5つの方針が示された。

この中で、新設が計画されているのが「建築物環境報告書制度(仮称)」だ。住宅など中小規模の新築建物に対し、再生可能エネルギー設備の設置の義務付けや誘導を計画している。都内における年間供給延床面積の合計2万平方メートル以上の大手住宅供給事業者が対象となる見込みで、太陽光パネルに加えて太陽熱・地中熱利用設備などの設置も認められる方向だ。

現時点で示されている、太陽光パネルの場合の設置基準は「設置可能棟数×算定基準率×棟当たり基準量」で求められる。まず、設置可能棟数は、狭小住宅(算出対象の屋根面積が20平方メートル未満)など物理的に太陽光パネルの設置が困難な住宅を除いて算出する。次に、算定基準率については、日照条件や日影規制なども考慮し区域ごとに85%、70%、30%という3段階を設定する。最後に、棟当たり基準量は1棟当たり2kWとする。

施主と住宅供給者の双方へ支援も
都議会を経て2025年度にも施行へ

「建築物環境報告書制度(仮称)」の実施にあたって東京都は、施主・購入者と住宅供給事業者の双方に対して支援策を講じるとしている。具体的には「初期費用ゼロスキームへの補助」として、リースや電力販売、屋根借りなど初期費用なしで太陽光発電設備を設置するサービスを提供する事業者を支援するとした。補助金相当分を施主・購入者に還元することで、リース料などの費用負担を軽減する考えだ。

また、住宅供給事業者に対しては「事業者への制度施行に向けた着実な準備に対する支援・先行的取組へのインセンティブ」として、施工技術の工場や購入者への説明を行うための体制整備などのサポートを行うとした。

さらに、普及啓発策として総合相談窓口の設置や、設備のメンテナンス手法に関するセミナーの開催なども実施するとしている。

今後のスケジュールとしては、10月上旬まで開催される令和4年度第3回都議会定例会での審議を経て、12月ごろの第4回都議会定例会への提出を目指すという。都議会で議決された後は、2年程度の準備・周知期間を設け、2025年4月からの施行を計画している。

DATA

カーボンハーフ実現に向けた条例改正基本方針|東京都


文:山下幸恵(office SOTO)

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