再エネ促進区域の設定、9市町のみ 環境省が支援策検討
2023/05/26
環境省は4月27日、市町村への再エネの導入推進を目的とした検討会の初会合を開いた。これまでに地域の脱炭素化を推進する「再エネ促進区域」を設定したのは全国で9市町にとどまっていて、今後は市町村・事業者への支援策や自治体の負担軽減策を協議する方針。
地域の脱炭素化へ
再エネ促進区域を設定
去年4月に改正地球温暖化対策推進法を施行
全国各地の自治体が脱炭素化を進めるなか、地域の合意形成や環境へ配慮が大きな課題となっている。このため、環境省は去年4月に地球温暖化対策推進法に基づく地方公共団体実行計画制度を拡充し、地域の環境保全や地域の課題解決に貢献する再エネを活用した「地域脱炭素化促進事業」を推進する仕組みを創設した。
この地域脱炭素化促進事業は、市町村が地域の脱炭素化を推進する「再エネ促進区域」を設定し、再エネ事業に求める環境保全・地域貢献の取り組みを自らの計画に盛り込み、適合する事業計画を認定する内容。地域の合意形成を図りつつ、環境に適正に配慮し、地域に貢献する地域共生型の再エネを推進するのが目的だ。
再エネ促進区域の設定
わずか9市町
再エネ促進区域を設定した9自治体(出典 環境省)
4月27日に初会合を開いたのは、「地域脱炭素を推進するための地方公共団体実行計画制度等に関する検討会」で、座長には早稲田大学法学部の大塚直教授が選任された。環境省によると、今年4月末現在で再エネ促進区域を設定したのは、埼玉県入間市、長野県箕輪市、神奈川県厚木市、神奈川県小田原市、岐阜県恵那市、滋賀県米原市、島根県美郷町、福岡県福岡市、佐賀県唐津市の9自治体。再エネ促進区域の設定が進まない背景には、人材不足や財源不足のほか、促進区域設定による地域経済へのメリットが少ないなどの指摘がある。
神奈川県小田原市は、2030年度の再エネ導入量を2019年度の約5倍の15万kWとする目標を掲げている。市内の建物のうち、設置可能な屋根の3分の1程度に太陽光発電設備を導入する方針。目標達成のために、住宅や建築物に限らず、利用可能な土地などについても地域への適切な配慮がなされながら再エネが導入されるよう「市街化調整区域」を「再エネ促進区域」として設定した。
都道府県基準
17県が策定
都道府県基準の策定・検討状況(出典 環境省)
市町村は、国や都道府県が定める環境保全の基準に基づいて再エネ促進区域を設定する必要がある。今年4月末現在で都道府県基準の策定が完了しているのは17県。太陽光発電が最も多く、次いで風力発電に関する基準を策定している県が多い。
県の基準をマップ化した徳島県
徳島県では、「徳島県促進区域の設定に関する環境配慮基準(太陽光発電設備)」をマップ化し、県の総合地図提供システムで公開している。県の基準をマップ化することによって、市町村が促進区域を検討する際に、具体的な促進区域のイメージを協議会などで共有しながら検討することが可能となる。
熊本県では、市町村が促進区域を円滑に設定できるように、県がゾーニングマップの作成し合意形成を主導している。陸上風力発電については、地域ごとに森林組合、自治会、商工会などの地域関係者を中心とした地域懇談会を県と市町村で共同開催している。県が作成したゾーニングマップをもとに、再エネ導入や環境保全に関する意見交換を通じて、促進区域の範囲を検討している。宮城県では、促進区域の設定を促進するため、主に事業提案型促進区域を想定した独自のガイドラインを策定する方針。区域設定や合意形成の方法についての考え方を示すとともに、市町村の状況に応じて県が伴走支援する。
都道府県基準の検討が進んでいない理由としては「人員が不足している」「環境保全に必要な情報やその他配慮すべき情報、域内の再エネポテンシャルに関する情報が不足している」が最も多く、「地域住民の反対が予想され、地域の合意形成ができない」「他の部署の理解が得られにくい」が続く。今後の検討会では、先進的な都道府県や市町村の事例を参考にしながら、市町村・事業者への支援策や自治体の負担軽減策を検討することにしている。
DATA
取材・文/高橋健一