政策・制度

太陽光の増設、買取価格のルールを見直し。GX脱炭素電源法で追加投資促進へ

再エネ特措法などの改正を盛り込んだGX脱炭素電源法が成立した。既存再エネの有効活用を図るため、太陽光の増設に関する買取価格のルールを見直している。

価格変更は増設分のみに変更
パネルの更新や増設をあと押し

GX脱炭素電源法が5月31日、参院本会議で可決・成立した。同法は再エネ特措法、電気事業法などを束ねたもので、GX(グリーントランスフォーメーション)を進めるうえで「地域と共生した再エネの最大限の導入促進」「安全確保を大前提とした原子力の活用」を目指すための法改正と位置付けられている。

太陽光発電に関する再エネ特措法改正のポイントは大きく2つ。ひとつ目は、太陽光発電設備の更新・増設部分のみに新たな買取価格を適用する新制度が盛り込まれた点だ。

現在のFIT・FIP制度では、国民負担を抑制する観点から、パネルの張り替え・増設では「太陽電池の増出力分が3kWもしくは3%以内」でなければ、当初の買取価格が維持されないルールになっている。これを超えると設備全体の買取価格が最新のものに変更されるため、適切な設備更新や増設が促進されない課題が指摘されていた。
 

(出力の変更等による価格変更事由。出典:経済産業省)

経済産業省の再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会はこのルールを見直して、増出力分にだけ「十分に低い価格」を適用し、当初から設置されていた出力相当分には当初の買取価格を維持する案を示している。「十分に低い価格」とは最新の価格以下の想定だ。
 

(見直し後価格変更イメージ。出典:経済産業省)

上記のイメージによると、増出力分(20kW)の買取価格が10円未満などになる一方で、当初設備分(100kW)には当初の買取価格20円が引き続き適用される。設備全体に最新価格が適用される現行ルールと比べると、パネルの張り替え・増設をあと押しすることになるだろう。

事業規律をさらに強化
違反者には返還命令も可能に

再エネ特措法改正のポイント2つ目は、地域と共生した再エネ導入のために事業規律が強化されることだ。具体的には、関係法令に違反した事業者にはFIT/FIPの国民負担による支援を一時的に留保し、違反が解消されない場合には返還命令をできる措置などを新たに設けるとしている。

また、FIT/FIPの新規認定と事業譲渡の要件に、事業内容を周辺地域に対して事前周知することを追加すること、委託先事業者に対する監督義務を課し、委託先を含めた関係法令の遵守を徹底することなども検討している。

DATA

経済産業省ホームページ

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「太陽光義務化元年」と呼ばれる2023年。パネルの屋根設置や制度の見直し、蓄電池の導入促進といった国の新たな政策にどのように対応するべきか?来年度に導入される発電側課金はどのような仕組みなのか?地方自治体の政策担当者や再エネシステムの専門家を登壇者としてお迎えし、今後のビジネスチャンスを読み解きます。

 


文:山下幸恵(office SOTO)

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