太陽光発電 市町村の約4割でトラブルが発生、2割近くで未解決
2024/06/06
総務省行政評価局が、太陽光発電設備などの導入に関する調査をした結果、回答した市町村の約4割でトラブルが発生していることがわかった。全体の2割近くの市町村では未解決となっている。
一部の太陽光発電設備で
地域住民とのトラブルが報告
トラブルのイメージ(出典 経済産業省)
2024年4月、GX脱炭素電源法の成立を受けて、改正した再エネ特措法が施行された。事前に説明会を開催するなど、地域住民と共生した再エネ導入のための事業規律が強化される。
こうした動きは、一部の太陽光発電設備などで、地域住民に十分な説明がなされないまま事業が開始されるなどのトラブルが報告されていることが背景にある。総務省行政評価局は、太陽光発電設備などの導入に関する調査を実施し、今年3月に調査結果を発表した。地域と共生を図りつつ、太陽光発電設備などの適正な導入が円滑に進められるための仕組みや運用の改善策、その進捗を把握するための方法を検討するのが目的だ。
2割近くの市町村で未解決トラブル
住民の相談に市町村が対応
太陽光発電設備に起因するトラブルの発生状況(出典 総務省行政評価局)
総務省行政評価局は、2022年6月末時点で太陽光発電設備の認定件数が上位の24都道府県の全943市町村を対象に、基礎調査を行った。その結果、回答が得られた861市町村のうち約4割にあたる355市町村で太陽光発電設備に起因するトラブルなどが発生していることがわかった。全体の2割近くの143市町村では、トラブルが未解決となっている。そこで、未解決のトラブルがある121市町村で実地調査を行い、具体的な内容を把握した。
発電設備の設置に向けた開発段階では、開発工事中の敷地や調整池から、泥水、土砂が流出し道路や河川に流入した、開発工事の施工内容が許可条件と相違している、発電事業者等による地域住民への説明が不足しているといったトラブルが報告された。また、開発工事に起因する災害の発生、騒音、反射、景観悪化への懸念の声なども寄せられている。
発電設備の稼働段階では、設備の敷地から泥水や雨水が流出し農地などに流入した、大雨などでのり面が崩壊したり設備自体が損壊したりした、雑草により通行が妨げられた、設備からの反射や騒音といったトラブルがあった。また、害虫の発生や火災、柵塀の未設置や不適切な設置による通行者の危険への懸念の声なども寄せられた。標識の未設置などにより、緊急時に発電事業者へ連絡できないという苦情もあった。発電事業者の監督官庁は経済産業省だが、住民は身近な市町村に相談し、市町村が事業者への連絡窓口になっているという報告もあった。
経済産業省への勧告
地域と共生した設備の導入・普及に期待
太陽光発電設備に起因するトラブルの発生状況(出典 総務省行政監察局)
このようなトラブルの把握を受け、総務省行政監察局は、監督官庁の経済産業省に対して是正を勧告した。トラブルなどの未然防止に向け、発電設備への現地調査を強化することや、法令違反の状態を放置している発電事業者への指導を着実に実施し、改善されない場合は交付金の留保などの必要な措置を適確に実施することなどを求めている。総務省行政監察局は、経済産業省の改善措置状況をフォローアップするとしている。
用語解説
再エネ特措法
再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法。太陽光、風力などの再生可能エネルギーで発電した電気を、国が決まった金額で一定期間買い取る制度。FIT制度とも呼ばれる。
総務省行政評価局
他の省庁や地方自治体の業務内容を調査し、改善すべき点を勧告する行政機関。
DATA