フロントランナーにインタビュー 大和エネルギーの“FIP転”攻略法とは
2025/03/05

大和エネルギーは、太陽光発電所の“FIP転”や蓄電池の併設によって売電収益の向上を目指す新サービスを開始する。電力事業部の相良圭亮氏と事業企画グループの髙須真佳氏に、新サービスを活用したFIP転成功の秘けつを聞いた。
1.FIP転や蓄電池の併設をアグリゲーションで後押し
2.SPEAKER
FIP転や蓄電池の併設を
アグリゲーションで後押し
「ChangeTheEnergy」をミッションに掲げ、総合的なエネルギーソリューション事業を展開する大和エネルギー。160ヶ所以上の再生可能エネルギー発電所の開発、運転・保守(O&M)、さらには設計から施工までを一貫して行っている。
それらの経験を通じて培ったノウハウを活かして、今年1月、新たにアグリゲーションビジネスを開始した。新サービスでは、FIT認定中の発電所をFIP制度へと切り替える「FIP転」や蓄電池を併設した際に必要となる、需給管理などのアグリゲーションサービスを提供するという。
――どのような発電所がFIP転に適している?
髙須 FIP制度では、市場価格にプレミアムが加算されて売電収益となります。再エネ出力制御が実施されている時間帯は、市場価格が0.01円/kWhとなりますが、その時間帯のプレミアムは他の時間帯に割り増しして加算されます。そのため、出力制御が実施されているエリアでは、運用次第でより多くの再エネ電力を生み出せるチャンスがあると考えています。
こうした考えから、当社のサービスでは、出力制御が比較的多く実施されている中国・四国・九州エリアを当面の対象エリアとし、発電所の規模は高圧以上を対象としています。蓄電池を設置する場合には、FIT単価が32円/kWh以上のサイトだと収益を上げやすいと考えています。蓄電池を併設しないFIP転のみの場合は、現状のFIT単価によらず対応できます。
――FIP転を成功させるために重要なポイントは?
相良 当社は早くから、自社運営の太陽光発電所2ヶ所をFIP転し、蓄電池を併設する実証に協業先とともに取り組んできました。そこで学んだのは、スケジュールを遅滞なく進めることの重要性です。経済産業省や一般送配電事業者への届け出には、案件によっては数ヶ月から半年を要する場合があり、蓄電池併設の場合はさらに時間を要することが想定されます。また、申請するエリアによっても必要な手続き期間が異なるため、余裕を持ったスケジュールを策定し、迅速に対応することが重要だと考えています。
髙須 特にFIP制度では、FIT特例として免除されていた発電計画の作成・提出などの需給管理が義務化されます。いかに精度の高い需給管理を実施できるかどうかも、収益性に深く関わるでしょう。当社は、需給管理業務を内製化して自社発電所の需給管理を行い、多くのノウハウを蓄積してきました。太陽光発電事業を知り尽くした当社だからこそ、再エネに特化したアグリゲーションサービスで収益の最大化に貢献したいと考えています。
――FIP転に適した蓄電池の条件は?
相良 蓄電池を併設する場合、もともと蓄電池を置くことを想定していない発電所に後から設置するケースがほとんどです。 特に、スペースが限られた発電所では、蓄電池がパッケージングされた大型コンテナをそのまま搬入できないことも想定されます。そのため、蓄電池の容量だけでなく、いかに設置スペースや搬入経路を確保するかも重要なポイントだと考えています。当社は発電所のシステム構成や地形、メンテナンス性など、設置環境を熟知しているため、輸送や施工の方法を考慮して蓄電池を提案することが可能です。
太陽光のパワーコンディショナ(PCS)と蓄電池の両方を制御できるエネルギーマネジメントシステム(EMS)の選定も重要です。当社では、PCSと蓄電池のメーカーが異なる場合でも対応できるようなEMSの準備を進めており、柔軟なサービス提供を目指しています。
――今後の展望は?
髙須 今後、 FIT期間が満了した卒FIT発電所が増えるとされています。セカンダリと呼ばれる既存発電所の活用も課題になります。それらはCO2排出のない再エネ電力を生み出せる貴重な電源です。当社は、1kWhでも多くの再エネ電力を系統に送り出すことで、「kWhの最大化」を目指します。新たに開始したアグリゲーションサービスを充実させながら、「省エネ×再エネ×蓄エネ」を通じて社会課題の解決に貢献してまいります。
SPEAKER
大和エネルギー株式会社
電力事業部 エンジニアリンググループ
相良圭亮氏
大和エネルギー株式会社
事業統括本部 事業企画グループ
髙須真佳氏
問い合わせ
大和エネルギー株式会社
大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス33F
TEL:06-4703-3208
取材・文:山下幸恵(office SOTO)
SOLAR JOURNAL vol.52(2025年冬号)より転載
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