警察庁 金属ケーブル盗難防止に向け法整備を検討、三重県は新たに条例制定へ
2025/03/06

太陽光発電所で金属ケーブルが盗まれる被害が急増していることから、警察庁は法整備を検討している。三重県は、金属類などを売買する業者に届け出を義務づけることなどを盛り込んだ条例を新たに制定する方針だ。
1.全国各地で盗難被害が急増
2.三重県が今年10月の条例施行を目指す
3.警察庁も新たな法整備を検討
全国各地で
盗難被害が急増
出典:太陽光発電協会
金属ケーブルの盗難は、銅価格が急騰した2021年ごろから北関東や名古屋市で被害が増えた。警察庁の調べによると、2023年は茨城県(2889件)、千葉県(1684件)、栃木県(1464件)、群馬県(1437件)、埼玉県(1172件)の関東5県で被害全体の約半数を占めている。近年は、三重県や兵庫県などでも盗難被害が急増している。
三重県警察本部によると、24年1月から11月までに確認した金属類の盗難被害は514件で、4年前に比べて約6倍に増えた。太陽光発電施設で金属ケーブルが盗まれる被害がこのうちの250件と半数近くに及んでいる。6月には県内の太陽光発電施設で、送電用の金属ケーブル約1600メートル、約750万円相当が切断されて盗まれる被害が発生している。三重県警は11月までに、太陽光発電施設でケーブルを盗んだなどとして35件を摘発したが、太陽光発電施設は人目の少ない山あいの地域に設置されるケースが多く、捜査は難航しやすいという。
三重県警は、太陽光発電施設の周辺のパトロールを増やすとともに、6つの言語で書かれたポスターを作成して、被害の防止に努めている。盗まれた金属類は買い取り業者などに売却しているとみられていて、警察は売却ルートの解明にチカラを入れている。
三重県が今年10月の
条例施行を目指す
三重県では、金属くずの買い取りを規制する「県金属くず取扱業条例」を1957年に制定している。朝鮮戦争の特需による金属類の価格高騰を受けて、金属類の盗難被害が多発したため制定されたが、その後、金属類の盗難件数が減少したため条例は2000年に廃止された。急増している盗難被害の防止を図るため、三重県は金属類などを売買する業者に届け出を義務づけることなどを盛り込んだ条例の制定を目指している。
24年9月に公表された「県特定金属類取扱業の規制に関する条例(仮称)」の素案では、切断されたマンホールや電線、多数の空き缶を圧縮した金属塊、雑多な金属類、壊れた室外機などを「特定金属類(仮称)」と定義している。特定金属類を買い取る業者が営業活動をするには、県公安委員会への届け出を義務付ける。金属類を買い取る際には、相手の身分証明書を確認するとともに、盗品の疑いがある場合は、警察への申告を求める方針だ。
届け出に係る事項に変更が生じた場合や廃業する場合は、一定期間内に届け出る必要がある。県公安委員会は、6ヶ月以上営業を休止し、現に営んでいないときは、営業を廃止したものとみなす。悪質な違反には、罰則の適用を検討している。24年9月27日から10月26日にかけてパブリックコメントを実施し、県民からの意見を募集した。三重県警は、今年10月の施行を目指して県議会に条例案を提出する方針だ。
警察庁も
新たな法整備を検討
出典:警察庁
一方、警察庁は金属類の買い取り業者に対し、取り引きの際に顔写真付きの書類で本人確認を義務づけることなどを盛り込んだ新たな法整備を検討している。警察庁は24年9月に法律の専門家や業界団体などで構成する有識者検討会を設置して議論を重ね、今年1月に報告書をとりまとめた。そのなかでは、金属盗の防止という目的のために必要最小限の規制とする観点から、特に被害実態の多い金属を中心に規制すべきであり、被害実態に鑑みると、まずは少なくとも銅を規制すべきであること。一方で、今後、金属価格の変動等により、異なる金属の盗難被害が増加することもあり得ることから、その時々の犯罪情勢に応じて、規制対象とする金属を追加することを可能とすべきであること。ただし、下位法令において規制対象とする金属を追加することができることとする場合には、下位法令への委任の趣旨を法律において明らかにする必要があるとしている。
検討会の議論を踏まえて、新たな法律では金属の買い取り業者に対し、取り引きの際に、顔写真が付いた書類で本人確認を厳格に行うことや、取り引きの記録を作成し、保存することを義務づける方針だ。
金属ケーブルの窃盗に用いられる工具の所持については、軽犯罪法以外の法規制がないのが現状だ。軽犯罪法の罰則は軽く、抑止効果が限定的であり、効果的な取締りが困難であるとして、警察庁は銅線を切断するケーブルカッターなどの工具を、隠して持ち歩くことを禁止することも検討している。
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太陽光発電所オーナー向けにケーブル盗難対策ウェビナーを3月14日に開催します。被害状況や行政動向の最新情報、そして増えつつある低圧発電所の被害、対策ガイドライン解説、費用対効果まで、盗難対策の最新情報とノウハウを3時間で網羅します。
DATA
取材・文/高橋健一