【PVビジネスセミナーレポート】2025年度の政策動向と蓄電池・PPAの先進事例
2025/06/16

2025年最初となる第32回PVビジネスセミナーは1月29日に開催された(リアル会場は秋葉原駅近く)。「2025年度の政策動向と蓄電池・PPAの先進事例」をテーマにスピーカーが多数登壇し、会場を訪れた聴衆とオンライン参加者はじっくりと耳を傾けた。収益最大化のポイントについてさまざまな学びを得られる場になったようだ。セミナー後の懇親会も盛況。太陽光業界の発展に尽力する方々がビジネスの情報交換をしながら、楽しい時間を過ごした。
1.2030年カーボンハーフ実現に向けた東京都の取り組みについて~建築物環境報告書制度の概要~
2.次世代管理システムによる太陽光発電所の運用保守向上
3.10年目の発電所運用を迎える事業者が取り組むべき土木点検をO&M会社のシニアエンジニアが解説
4.非FIT太陽光発電所の商業運用― ドイツにおける教訓 ―
5.これからの太陽光/蓄電システムに求められるエネルギーマネジメントシステム
6.JPEAビジョン『PV OUTLOOK 2050』 400GW導入に向けた道筋
7.太陽電池用取付架台新製品のご紹介
8.環境配慮型再エネ×脱炭素農業=地域再生
2030年カーボンハーフ実現に向けた
東京都の取り組みについて
~建築物環境報告書制度の概要~
東京都環境局
制度調整担当課長
小山 利典氏
東京都では、今年4月から新築住宅などへの太陽光発電設備の設置、断熱・省エネ性能確保などを義務付ける制度が実施される。約2年間の準備期間を経て施行された経緯や、制度の概要、事業者・購入者への支援策などについて詳しく説明した。
次世代管理システムによる
太陽光発電所の運用保守向上
東芝エネルギーシステムズ株式会社
カーボンニュートラル営業第2グループ グループ長
平畑 秀諭氏
太陽光発電所の運用保守を支援するクラウド型サービスである「PV統合管理サービス」を紹介した。東芝グループが蓄積してきた実績と知見を生かして、複数の太陽光発電所を一元管理し、運用保守業務の効率化と発電損失の最小化を実現するサービスをアピールした。
10年目の発電所運用を迎える事業者
が取り組むべき土木点検を
O&M会社のシニアエンジニアが解説
自然オペレーションズ株式会社
エンジニアリング部 工事グループ
門中 章二氏
稼働して10年を経過した発電所が全体の4割以上を占めるなか、定期的な点検の必要性を訴えた。なかでも重要なのは、土木面においては「予防的管理(=補修)」を重視すべきという点で、コスト面からみても「何かあってからの修繕」より「早期の点検・補修」の方が負担が少なく済むことを強調した。
非FIT太陽光発電所の商業運用
― ドイツにおける教訓 ―
Second Foundation Japan合同会社
シニア アグリゲーション スペシャリスト
アダム ロッド氏
独自のアルゴリズムをもとに、自社開発した取引ソフト「ソフォン」を活用し、電力トレーディング事業で急成長している。2023年5月に日本で100%子会社を設立し、500MWの再生エネルギー発電所(太陽光、風力)を管理している。今年から需給調整市場で取引を開始し、日本の再エネ導入拡大に貢献したいと考えている。
これからの太陽光/蓄電システムに
求められるエネルギーマネジメントシステム
メテオコントロールジャパン株式会社
プロダクトマネジメントグループ チーフ
菅佐原 順氏
最適な蓄電システム構築のカギを握るエネルギーマネジメントシステム「ハイブリッドEMS」を紹介した。メーターの数値を計測しながらフィードバック運転制御を行うことで損失を可能な限り最小化し、ガバナフリーによる周波数制御機能を有することで一次調整力向け自制制御にも対応していることを強調した。
JPEAビジョン『PV OUTLOOK 2050』
400GW導入に向けた道筋
一般社団法人太陽光発電協会
基盤強化推進部長
織田 篤彦氏
2020年に公開したビジョン「PV OUTLOOK 2050」が50年にGHG(温室効果ガス)80%削減を前提としていたのに対し、新ビジョンは50年のカーボンニュートラル(CN)実現を前提にしている。50年の太陽光発電導入目標を386GWから400GWに拡大し、その実現のためには経済性のみならず、系統制約や地域との共生などの課題克服に加え、荒廃農地の活用や営農型の推進が不可欠であることを訴えた。
太陽電池用取付架台新製品の
ご紹介
株式会社動力
取締役市場開発部長
芦原 清一郎氏
安全で施工しやすい太陽電池取り付け架台の新製品を紹介した。ハゼ折板用つかみ金具は、業界最軽量(2024年7月自社調べ)で、モジュール間もピッチ業界最小の5ミリと屋根のスペースを最大限に有効活用できる。モジュールの上に乗ることなく設置可能で、モジュール設置と同時に金具の固定、設置ができることをアピールした。
環境配慮型再エネ×脱炭素農業=
地域再生
市民エネルギーちば株式会社
専務取締役
宮下 朝光氏
市民エネルギーちばは、ソーラーシェアリングで得た売電収入を活用し、耕作放棄されていた農地の復活をはじめとして、農業・地域を支援する「匝瑳システム」を育ててきた。この10年間の取り組みと並行して、ほかの自治体へのソーラーシェアリング支援、移住者・新規就農者への支援、地域レジリエンスを改善している点などが評価され、2024年度のソーラーウィーク大賞に輝いた。
懇親会の様子。
Supported by
SOLAR JOURNAL vol.53(2025年春号)より転載