次世代太陽電池の実装加速連絡会を設立 設置・施工ガイドラインを今年度中に策定
2025/10/14

次世代太陽電池の社会実装を加速するため、経済産業省と環境省は9月12日、自治体や民間需要家、メーカーの実務担当者による連絡会を立ち上げた。安全性を考慮したフレキシブル太陽電池の設置・施工ガイドラインを今年度中に策定する。
1.社会実証の加速を目指して 3件の実証事業を採択
2.設置・施工ガイドラインを 今年度中に策定
3.企業や自治体で需要が 急激に拡大する見通し
4.中国依存からの脱却へ 耐久性が大きな課題
社会実証の加速を目指して
3件の実証事業を採択
次世代太陽電池戦略のイメージ(出典 経済産業省)
政府は2024年11月に「次世代型太陽電池戦略」を策定し、世界に引けを取らない規模とスピードで、量産技術の確立・生産体制整備・需要創出を三位一体で進める方針を示している。具体的には、30年までにGW(ギガワット)級の生産体制を構築して、40年に国内で約20GW程度、海外で500GW以上の導入を目指し、量産技術の確立によって25年に20円/kWh、30年に14円/kWh、40年には自立化が可能となる10~14円/kWhのコスト水準の達成を目標としている。
グリーンイノベーション基金(GI基金)では、さまざまな設置形態での社会実装に向けて、ユーザーと連携したフィールド実証を進めており、9月10日に第2弾の案件採択を行った。40年までにフィルム型で300MW以上、ガラス型で200MW以上の量産化構想を有する実証事業を提案した、(1)京都大学発スタートアップであるエネコートテクノロジーズ、(2)パナソニック、(3)リコーの3社を採択した。
エネコートテクノロジーズは、ペロブスカイト太陽電池の量産技術開発と実証を、パナソニックはガラス型ペロブスカイト太陽電池の量産技術開発とフィールド実証、リコーはインクジェット印刷ペロブスカイト太陽電池生産技術と設置施工技術・電装技術開発を行う。
設置・施工ガイドラインを
今年度中に策定
政府は、フレキシブル太陽電池の設置・施工ガイドラインの作成のためのワーキンググループを近く設置し、安全性を考慮したガイドラインを今年度中に策定する。26年度政府予算の概算要求でも、「ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業」で50億円、「太陽光発電大量導入への課題解決に向けた技術開発事業」で31億円を計上し、積極的に導入拡大を図る考えだ。
この一方で量産体制の整備も進みつつある。今年10月には積水化学工業がシャープ工場(大阪府堺市)の一部を取得し、27年からペロブスカイト太陽電池の量産を開始する。エネコートテクノロジーズも26年夏にペロブスカイト太陽電池の量産工場の稼働を目指している。
企業や自治体で
需要が急激に拡大する見通し
全国のペロブスカイト太陽電池導入の取り組み(出典 経済産業省)
東京都は40年に2GWの次世代太陽電池の導入へ向けたロードマップを策定し、都の保有施設に先行導入していくとともに、民間事業者への導入にかかる機器や施工費の全額を補助する。さらに都有施設での実証場所の提供や開発企業向けに経費の助成なども実施する。また大阪府や福岡市、福島県、愛知県でも、GW級の導入目標設定や大規模実証などの取り組みが進められている。このほかにも20の自治体で次世代太陽電池導入に向けての予算措置などが行われている。
企業・自治体の導入予定・検討状況(出典 環境技術普及促進協会)
ペロブスカイト太陽電池の需要予測(出典 環境技術普及促進協会)
一般社団法人 環境技術普及促進協会は、官民協議会に参加している自治体や企業を対象にアンケート調査を実施した。それによると、ペロブスカイト太陽電池の導入を予定もしくは検討している企業は36パーセント、自治体は39パーセントだった。この結果をもとに将来の需要を予測すると、今年度は企業と自治体を合わせて828kW、26年度は1728kW、27年度以降は9万1470kWと、急激に拡大していく見通しだ。
中国依存からの脱却へ
耐久性が大きな課題
ペロブスカイト太陽電池などの次世代太陽電池にも課題はある。耐久性が低く劣化しやすいため、屋外で長期にわたり高効率の発電を保証できないことだ。また材料に鉛を使うため、破損や廃棄時に環境への影響が心配されている。政府は次世代太陽電池を「中国依存からの脱却」の起爆剤と位置づけているが、すでに中国でも製造が開始されている。耐久性や寿命の短さといった課題を解決して次世代型太陽電池の産業競争力を高めなければ、シリコン型太陽電池の二の舞になりかねない。
DATA
第1回 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた実装加速連絡会
取材・文/宗 敦司