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太陽光パネル大量廃棄問題への打開策となるか。パネルリユース市場が抱える3つの課題と新たな未来

2030年代後半から、毎年約50万〜80万トンの使用済みパネルが排出されると予測されている。政府はリサイクル体制の整備を進めているが、環境負荷が最も低いとされる「リユース」は、どこまで進んでいるのだろうか。

 
太陽光パネルのリユースは期待されているものの、実際には新品より高い中古品や、基準の不在、海外への流出といった課題が山積みなのが現状だ。この記事では、一般社団法人太陽光パネルリユース・リサイクル協会(以下、SP2R協会)の細田雅士氏(事務局長)と石中貴之氏(事務局次長)に、リユース市場の構造的課題と展望を聞いた。

 
リユース・リサイクル協会(SP2R協会)とは
太陽光パネルのリユース・リサイクルを普及・啓発する団体。使用済み太陽光パネルの大量廃棄問題に対応するために2022年設立された。会員にはリクシア(丸紅×浜田の合弁会社)、ベストワンといったリユース事業者のほか、ガラスメーカー、物流事業者、大手ディベロッパー学術研究者など、パネルのライフサイクル全体を包含するステークホルダーが集う。主な活動は、国・自治体への政策提言、業界標準化、技術・研究支援の3つ。「リユース市場の創出」と「適正なリサイクルの促進」を二軸に、健全な流通・循環スキームの確立を目指している。

 

SP2R協会が語る 
リユース市場を阻む「3つの障壁」

「リユース市場の最大の課題は、市場がない、あるいは非常に少ないという一点に尽きる」細田氏は端的にそう述べた。リサイクルは産業廃棄物処理の許可とセットで制度的インフラが必要だが、リユースは『市場原理に基づく普通のものの売買』として成立し得るため、制度的な介入は本来少なくて済む。しかし現実には、市場はほとんど育っていない。その原因として以下の3つの障壁を挙げる。

① 結果的に新品パネルを上回るコスト
「海外メーカーが過剰生産している。EVと同じ構図だ」と細田氏は説明する。低価格で輸入される新品パネルが市場に溢れる一方、リユース品は丁寧に検査すればするほどコストがかかる。絶縁検査、発電容量のチェック、クラック(ひび割れ)の外観検査──これらを一枚一枚行うと、相応の費用が発生する。結果として『中古にもかかわらず、新品よりワット単価が高い』という逆転現象が起こっている。「検査コストを上乗せすると、1枚あたり数百円から千円程度のコストが乗る。価格競争では勝てない」と細田氏は語る。

② 政策的支援の不在
新品パネル導入には補助金が出るが、リユース品利用に対する政策的支援はほぼゼロである。「まじめに品質保証をしている事業者ほど報われない構造」と細田氏は指摘する。

③ 不明瞭な業界基準
本当に使えるのか、保証はあるのか… こうした疑問を払拭する業界基準がない。環境省のガイドラインは存在するが「ほとんど具体的ではない」と細田氏は語る。「業界としての基準を作りたいが、それを守る事業者と守らない事業者が混在すれば、『安かろう悪かろう』が市場を席巻してしまう」。協会ではリユース委員会を立ち上げ、業界自主基準の策定に取り組んでいる。
 

加速する太陽光パネルの海外流出 
国内リユース市場の現状

協会が最も懸念しているのは、国内で発生する中古パネルの多くが、適切な検査もトレーサビリティもないまま海外に流出していることだ。

細田氏は、「協会会員企業の話では、10回見積もりを出して、国内リユースに取れるのは数回程度。残りは海外に流れてしまう」と明かす。輸出業者は「廃棄に回るような、パネルが割れているものも含めて、全部もらい受けます。費用はかかりません」という提案をしてくる。

一方、協会会員の国内事業者は品質を重んじている。丁寧に検査を行い、1〜2年の保証をつけて販売する。運搬時のラッピング方法、傷の程度によるグレード分け、製造年数に応じた品質区分などを明確化している。例えば、1枚あたり25枚をパレットに載せるのは、それ以上載せると割れるリスクがあるからだ。クラックが何ミリ以上であればランクを落とす、といった基準も設けている。

しかし、海外にリユースする際の明確な基準はない。輸出業者の中には、積載効率を高めるためにクッション材や束を省略するケースもある。途中で割れても、「コンテナを開けたら割れていた。いつ割れたかわからない」といった、一部ずさんな対応をする業者もいるという。

細田氏は「海外に中古品を輸出すること自体を否定しているわけではない。発展途上国の方々が再利用していただくことは、いい面もある」と補足した。

協会が求めているのは、基準に基づいた輸出であり、トレーサビリティの確保だ。「どの時点で、どの形式のものが、どの国に何枚出ていったか──そういった統計が取り得る制度であってほしい」と細田氏は語る。

さらに、リユース市場には需給ミスマッチという構造的な問題もある。「災害時などに突発的に大量のパネルが排出される一方、需要は散発的だ。このタイミングのずれが、保管コストの問題を引き起こしている」と石中氏は指摘する。物流(解体→運搬→倉庫)と商流(EPC事業者、商社など)が一致しないことも多く、構造が複雑だ。

協会としては、国内で使えるものは最後まで国内で使うという考えを普及させたい。「今は圧倒的に海外だ。国内市場を相対的にもう少し厚くしたい」と細田氏は語った。
 

迫る太陽光パネルの大量廃棄問題 
リユース促進が「企業価値」を高める新局面へ

厳しい現実がある一方で、リユース市場を育てるための動きも確実に生まれている。

SP2R協会の活動
協会は2024年10月からリユース委員会とリサイクル委員会を立ち上げ、実務レベルでの議論を重ねている。「リユース委員会にはベストワンなどのリユース事業者が参加し、品質基準の策定や情報連携の仕組みづくりに取り組んでいる」と石中氏は説明する。また、国への政策提言も継続して行っており、リユースパネル利用への補助金制度の創設を要望している。

さらに、協会は太陽光発電協会(JPEA)や再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)といった業界団体とも連携し、意見交換を重ねている。現在進行中の太陽光パネルリサイクル義務化法案の検討委員会にもオブザーバーとして参画しており、政策形成の場にも関与している。

民間企業の活動事例
リクシア(丸紅×浜田の合弁会社)は、性能検査体制と大手保険会社との提携による瑕疵保証(かしほしょう:商品に重大な欠陥が見つかった際、修理費用をカバーしてくれる保証)を武器に、リユース品に1〜2年の保証をつけて販売している。
ベストワンは、取扱いパネル15万枚以上、総容量131MW以上という実績を持ち、専用検査所で全数検査を実施する。ECサイト「ソーラーオフ」で在庫を可視化し、需給ミスマッチの解消に取り組んでいる点も特筆される。

「こうした企業が品質保証に真摯に取り組んでいることが、市場の信頼性を支えている」と石中氏は評価する。

リユースパネルの社会実装例も生まれている。UPDATERが2025年秋から開始した「世田谷ピーパ」プロジェクトは、廃校の屋根にリユースパネルを設置し、約50世帯分の電力を供給するクラウド型ソーラー発電サービスだ。昭和製線は大阪・関西万博で、リユースパネルを活用したソーラー発電ベンチを設置した。コーユーレンティアは、土木工事など短期で利用される現場に50〜60kWクラスのソーラーパネルのレンタルを行っている。

「SDGsなど社会貢献に関心のある企業が、PR目的でリユースパネルを採用するケースは増えている。建設現場事務所の電源、万博やイベントでの利用など、短期・スポット的な需要は確実にある」と細田氏は語る。

『リユース促進が企業価値につながる』こうしたイメージの転換が、リユース市場拡大の鍵を握っているのではないのだろうか。


取材協力:一般社団法人 太陽光パネルリユース・リサイクル協会

取材・文:森 英信

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