メガソーラー批判から問い直す。危うい日本のエネルギー戦略【SJコラム】
2026/04/27
釧路湿原の問題を契機に問われる太陽光発電のあり方。制度設計の欠陥と開発優先の構造が乱開発を招いた背景をひも解き、再エネと環境保全の両立を考える。環境エネルギー政策研究所 所長の飯田哲也氏が解説する。
1.制度設計の歪みが招いた太陽光バブルと乱開発
2.欠落する絶対命題ーー開発優先の責任は誰に
3.太陽光発電の真価ーー個人と地域が主体になる
4.日本の衰退に直結する再エネ抑制という本末転倒
制度設計の歪みが招いた
太陽光バブルと乱開発
釧路湿原周辺でのメガソーラーをめぐる問題を契機に、日本における太陽光発電のあり方が改めて問われている。日本では2012年にFITが始まり、再エネ導入拡大に大きな役割を果たしてきた。しかし、その制度設計には日本独自の大きな問題があったことも否めない。
固定価格が着工時ではなく「認定時」に決まるという制度設計は、日本だけの設計ミスである。しかも初期は、農地・森林・環境などの他の規制が認定条件になかった。太陽光発電は年々コストが下がるため、着工を遅らせた方が含み益が大きくなる。その利益は、規模が大きいほど大きくなる。結果として、土地ブローカーを含む多くの事業者が、全国でFIT認定を取りに走った。これが日本の太陽光バブルの根源である。
その一方で、電力会社、原子力関係者、そして自民党政権と経済産業省には、分散型電源である再生可能エネルギーを、本音では増やしたくないという思いがあった。結果として、再エネに対して抑制的な政策環境が続いてきた。
欠落する絶対命題ーー
開発優先の責任は誰に
最も問題と考えるのは、日本社会から「絶対命題」が消えていることだ。太陽光を含む再エネが、唯一、持続可能かつ自給可能であるという科学的真理である。エネルギー転換を速やかに進めることは、気候変動対策であると同時に、エネルギー自給という安全保障の問題でもある。個人にとっても、地域にとっても、国にとっても、最優先で取り組むべき絶対命題だ。
釧路湿原の問題は、太陽光発電単体の問題ではない。そもそも釧路湿原全体を包括的に保全する仕組みが、国にも自治体にも十分に存在していない。周辺を見れば、採石場や土砂採取地、原野商法で切り刻まれた土地など、開発はすでに広範囲に及んでいる。自然保護よりも開発が優先される土壌が、根強く存在してきたのだ。
林地開発制度も、環境保全ではなく開発を前提とした仕組みであり、森林の多面的価値はほとんど考慮されていない。太陽光関連事業者は、そうした開発構造の上にそのまま乗っている。個別の事業者に非があるにしても、問題の多い仕組みを放置してきた国と自治体の責任が大きい。
太陽光発電の真価ーー
個人と地域が主体になる
再エネにおける住民合意は、従来の原子力や石炭火力とは性質が異なる。原子力や石炭火力は、基本的に巨大電力会社の事業で、地域の人たちは説得の対象でしかなかった。
一方で太陽光は、地域や個人単位で自立が可能な技術だ。説得される対象だった一人ひとりが、主体を回復していく手段にもなる。エネルギーによって個人が、さらには地域やコミュニティが自立していく。こうした動きは、日本中に小さいながらも点として存在している。自治体、コミュニティの取り組みが広がっていく中で、どこかで盤面が大きく変わっていくことを期待している。
日本の衰退に直結する
再エネ抑制という本末転倒
日本は年間約30兆円の化石燃料を輸入し、食料も約10兆円輸入している。エネルギーと食料の自給は、スローガンではなく、生活防衛と日本の存立危機の問題だ。太陽光など再エネによる自立は、個人と地域、そして日本を守るための喫緊の課題でもある。メガソーラー反対という声が、再エネ全体の停滞を招けば、日本の衰退を早めるだけだろう。
釧路湿原の問題を契機に、メガソーラーへの国の支援の見直しや廃止が取り沙汰されている。FITやFIPのあり方は、本来、経済性や自立化の進展を踏まえて冷静に議論されるべきものであり、調達価格等算定委員会でも、再エネの自立化を前提とした検討は以前から行われてきた。
ただし、個別の開発問題や炎上を理由に、再エネ全体の導入を抑制する方向へ議論が流れていくことは本末転倒だ。自然破壊や地域との摩擦の問題は、ゾーニングやルール、合意形成の設計によって解決すべきであり、それは再エネ推進への対策であって、再エネを抑制すべき理由ではない。エネルギー転換が遅れるのであれば、その影響を受けるのは将来世代と地域社会である。
PROFILE

NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長
飯田哲也氏
自然エネルギー政策の革新と実践における国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利団体である環境エネルギー政策研究所所長。
X:@iidatetsunari
取材・文/廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.56(2026年冬号)より転載






