政策・制度

おうちで発電”の新たな選択肢「プラグインソーラー」

イラン情勢などの国際状況が電気代上昇の不安を呼んでいる。一方で、環境破壊につながるメガソーラーなどへの規制が進んでいて、再生可能エネルギーによる発電拡大へのブレーキが懸念されている。 そんな中、家庭に簡単に設置できる手軽なソーラーが、欧州で爆発的に増えているという。今回は、そんな「プラグインソーラー」の実際をまとめる。

 

<目次>
1.ドイツで100万台を突破した“バルコニーソーラー”
2.工事不要、賃貸住宅のバルコニーに設置可の手軽さ
3.短期間の投資回収と再エネ拡大への参加意識の向上

 

ドイツで100万台を突破した“バルコニーソーラー”

まず、ドイツにおける太陽光発電施設の新規導入の推移を見てみよう。
ロシアのウクライナ侵略がきっかけとなったエネルギー費高騰の対策や脱炭素化の必要性などから、ドイツでは太陽光発電の導入が加速している。


ドイツの太陽光発電施設の新規導入の推移 出典:BWS-Solar

上のグラフで見るように、2023年以降、毎年15GWを越える新規導入が進んでいる。これは日本の実績の軽く3倍以上にもなる。特に、事業所や住宅の屋根置きが伸びて累積の設置量が全体の7割を占めるまでになり、合わせて70GWを越えた。ただし、2025年は住宅で前年比マイナス24%、事業所でマイナス9%と、ここに来て屋根置きの勢いは落ちてきている。
その中で急拡大が止まらないのが、グラフ右下のイラスト、プラグがつながっている太陽光パネル、である。前の年に比べて24%も伸びている。これが今回のテーマとなるプラグインソーラーである。


ドイツにおけるプラグインソーラーの登録台数と累積容量の推移 出典:自然エネルギー財団「プラグインソーラー」

工事不要、賃貸住宅のバルコニーに設置可の手軽さ

では、具体的に見ていこう。
ドイツでは、用語として、Steckersolargerät(プラグイン太陽光発電装置)やBalkonkraftwerk(バルコニー発電)が使われる。構成は至ってシンプルである。太陽光モジュール、接続ケーブル、マイクロインバーターを経て家庭用コンセントにつながり、そのまま電気を家庭内で消費できる。設置は、下の写真のようにDIYで可能となる。


バルコニーへの設置 出典:ドイツ連邦環境省

電力会社などへの許可は原則として必要ない。規格として、交流でインバーターの総出力が800ワット以下、モジュールの総出力が直流で2,000ワット以下であれば、MaStR(市場マスターデータレジスタ)という公の機関に登録するだけである。
前述した100万台突破の数字は正式なこの登録台数であり、実際にはその何倍もの未登録のものがあると言われている。また、欧州全体で見ても27か国中25か国ですでに認められ、普及が進んでいる。

短期間の投資回収と再エネ拡大への参加意識の向上

プラグインソーラーを導入するためのシミュレーションなどができるWEBサイトも登場している。
一軒家かマンションか、家族の人数や使用電力量、屋根やバルコニーや庭などの設置場所などを入れると適切な設備を教えてもらえる。


プラグインソーラーシミュレーター 出典:htw-berlin

プラグインソーラー設置の費用は、ドイツ連邦環境省のWEBサイトでも、おおよそ数年で回収できるとされている。やはり、工事費不要が大きいと思われる。また、パネルなどはセットとしてネットで販売されていて、800kWのものは数万円程度で十分手に入ることがわかる。最近は蓄電池付きのセットも多く販売されているが、環境省はコスト面で必ずしも推奨しないとしている。
プラグインソーラーは、導入量の点から見るとやはり脱炭素の主役にはなりにくい。数百万台導入されても数GWがせいぜいであろう。それより強調されているのが、脱炭素化への参加意識である。グラフを引用した自然エネルギー財団のリポートでは、「エネルギー転換の成功は、誰がそれに参加できるのかにも依存する」として、その点でのプラグインソーラーの役割を高く評価している。
特に都会のアパートやマンションに住む人たちが再エネを直接手に入れる方法は非常に限られる。特に賃貸住宅ではほぼ不可能であろう。それをプラグインソーラーは解消してくれる可能性がある。
残念ながら、まだ日本ではグレーな部分も含めて規制やハードルが多く残る。この新しいシステムを正面から受け入れるにはもう少し時間がかかるかもしれない。
筆者としては、脱炭素のカギを握る「エネルギー転換を日常生活の中へと取り込むこと」(自然エネルギー財団「プラグインソーラー」より)を目指すためのゲームチェンジャーを期待したい。

 

プロフィール

エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
埼玉大学社会変革研究センター・脱炭素推進部門 客員教授

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
 

DATA

自然エネルギー財団「プラグインソーラー」
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ
地域活性エネルギーリンク協議会

文/北村和也

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