低圧蓄電池のバルク運用をサポート Tensor Energy、アグリゲートに新機軸
2026/05/19
多数の低圧太陽光と蓄電池を束ねた「低圧バルク運用」が電力市場の主戦場へと浮上した。 この歴史的転換点において、AI駆動のプラットフォームで業界を牽引するのがTensor Energyだ。 システム提供から低圧アグリゲーションのことまで──共同創業者・代表の堀ナナ氏に聞いた。
1.独自のクラウドサービスで低圧の課題解決に挑む
2.低圧の現場で培った最適化技術と高精度予測
3.システム提供者から運用者へ 2本柱で市場に貢献
4.運用の担い手として再エネ新時代の旗手へ
独自のクラウドサービスで
低圧の課題解決に挑む
2026年4月からは、小規模な蓄電池や発電所も電力の需給調整市場に参加できる制度改革が施行された。 かつて金融ビッグバンが証券取引を一般に開放し、取引量が急増したように、日本の電力市場もいま、電力会社だけでなく一般企業・中小事業者・個人まであらゆるプレイヤーが参加し、取引量が爆発的に拡大する歴史的な転換点を迎えている。しかし、この変革の恩恵を受けるには、全国に分散した発電所・蓄電池をリアルタイムで一元管理し、複雑化する市場ルールに即応できる高度なプラットフォームが不可欠となる。
この課題解決に向けて脚光を浴び始めているのが、福岡発のスタートアップ、Tensor Energy(テンサーエナジー)だ。同社は2021年の設立以来、太陽光と蓄電池を用いた発電事業のために、事業計画の策定から、発電所の運用・管理まで一気通貫で支援するAI駆動のクラウドサービス「Tensor Cloud(テンサークラウド)」により、再エネ価値の最大化を追求してきた。そして、このテンサークラウドを用いた「低圧蓄電池のバルク運用」に、いま業界内外から熱い視線が注がれているのだ。
同社はこのほど、シリーズAラウンドで9.5億円、累計16.5億円の資金調達を完了。名実ともに再エネ業界のフロントランナーとしての地位を固めつつある。
低圧の現場で培った
最適化技術と高精度予測
現在、同社のシステムは全国約800ヶ所、合計111の発電所に採用されている。低圧発電所を200件規模でまとめて管理するポートフォリオでの運用実績も複数持ち、低圧バルクのアセットマネジメントにおいても高いシェアを誇る。
低圧バルク運用の難しさは、件数の多さにある。 高圧案件であれば個別に手をかけて管理できるが、低圧では数百件の発電所を同時に最適化しなければならない。同社のプラットフォームはこの課題に対し、発電所ごとに個別最適化されたAIモデルを大規模に並列運用するアーキテクチャで応じている。 9ヶ国から集まった、電力システム工学等の専門家チームが開発するこのアルゴリズムは、インバランスリスクの最小化と収益最大化を極めて高い次元で両立させる。
低圧でも蓄電池との組み合わせと運用次第で、収益構造を大きく変えられることを同社は示す。その根拠の1つが、30分ごとの電力価格・発電量を自動生成し、運転期間30年に及ぶ長期の事業収支を精緻に試算できるシミュレーション機能だ。FIT発電所をFIPに転換した場合の収益変化、さらに蓄電池を併設して需給調整市場に参入した場合の効果まで、シナリオを変えながら1つのシステム上で試算できる。この機能はすでに30社に採用されており、EPCが発電所オーナーへのFIP転換・蓄電池併設を提案する際の根拠資料としても活用されているという。
システム提供者から運用者へ
2本柱で市場に貢献
低圧の現場でノウハウを磨いてきた同社が、今後は自らアグリゲーターとして低圧蓄電所の運用を直接担う立場にも立つ。今年6月から、本格的に始動する予定だ。背景には顧客からの切実な要望があった。「FIP転換を考えている低圧太陽光のオーナー様たちから、運用ごと引き受けてほしいという声が増えてきたのです」と堀氏は明かす。
低圧の発電事業者にとっては、そもそもアグリゲーターを見つけることが難しかった。膨大な数の低圧リソースを束ねて、一件一件を個別に最適化しながら収益を出し続けられるアグリゲーターは、まだごく少数に限られている。テンサーエナジーは率先して、この空白を埋めていきたい考えだ。すでに肥後銀行グループのKSエナジーから、国内初となる「低圧太陽光のFIP転換および蓄電池併設プロジェクト」のアグリゲーション業務を受託するなど、先進的な案件が動き出している。ただし、自らアグリゲーターになるからといって、他社へのシステム提供を止めるわけではない。 並行して、アグリゲーターや大手需要家に向けた支援サービスも続けていく。
同社は、JEPX(日本卸電力取引所)の新システム移行により従来の取引画面(GUI)を通じた発注機能が廃止されることを受け、新たなAI電力取引支援サービスの開発を開始した。さらに、2026年5月より需給調整市場一次オフラインの市場価格予測とJEPXスポット市場の横断的最適化、及び、需給調整市場一次オフラインへの自動入札サービスを開始。制度やシステムの変更に迅速に対応し、事業者の業務負担を軽減する姿勢は、サービスが変わっても揺るぎない。
運用の担い手として
再エネ新時代の旗手へ
低圧アグリゲーション市場は、まだ制度が整いはじめたばかりだ。数百件を個別に最適化しながら複数市場で運用する仕組みを一から構築するには、膨大なコストと時間がかかる。
需給調整市場の上限価格引き下げへの対応が迫られる今こそ、早期に参入して価格が高い時期に投資を回収し、運用体制を確立することが重要となる。その意味でも、高圧・特高に比べてリードタイムの短い低圧市場への期待は大きい。事業者にとって、差別化がより鮮明になる局面だ。
分散した低圧電源が日本の電力システムを支える調整力として機能する未来は、すでに見えている。それを現実のものにすべく、テンサーエナジーは技術と運用の両輪で、分散型電源の価値を解き放つ「次世代の電力デジタルインフラ」の構築を加速させていく。日本のエネルギーシステムが根本から変わる歴史的な転換点を、同社は最前線で牽引していくことになるだろう。
問い合わせ
Tensor Energy株式会社 共同創業者・代表
堀ナナ氏


Tensor Energy株式会社
福岡県福岡市中央区天神1-11-1
TEL:080-4292-7385
取材・文/廣町公則
BATTERY JOURNAL vol.01(2026年春号)より転載
Sponsored by Tensor Energy株式会社






