政策・制度

金属盗防止法が6月1日に全面施行 銅線取引の規制強化と残された課題

太陽光発電施設を標的とした銅線ケーブルの盗難被害が全国で相次ぐ中、「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」(金属盗対策法)が6月1日に全面施行された。新法施行にいたる背景やその効果、さらには発電事業者が直面する新たな課題について検証する。

 

<目次>
1.全国的な被害急増と 法制化への潮流
2.買受業の届出義務化と 不正流通の抑止
3.巧妙化する抜け道と 求められる自主防衛

 

全国的な被害急増と
法制化への潮流

 


盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律の背景(出典 警察庁)

 
近年、脱炭素社会の実現に向けた動きが活発化する中で、再生可能エネルギーの主力である太陽光発電施設は全国各地で急激にその数を増やしてきた。しかし、それに伴い顕在化したのが、施設内に敷設されている銅線ケーブルを狙った組織的な金属盗難の多発である。背景には、世界的な需要拡大や供給不足を起因とする銅価格の歴史的な高騰が挙げられる。2020年時点では年間約5000件前後であった金属盗の認知件数は、2024年には2万件を超える規模へと急拡大し、そのうち大きな割合を太陽光発電施設でのケーブル窃盗が占める事態となった。

一部の自治体では、独自に「金属くず営業条例」を制定して買い取り時の本人確認を義務付けるなどの対抗策を講じてきた。しかし、条例のない近隣県へ盗品を移動させて売却するなどの「抜け穴」が横行し、地域的な規制格差が大きな問題視されていた。こうした状況を踏まえ、地域ごとの格差を解消し、国全体で統一的な網羅策を講じる必要性が浮き彫りとなった。その結果、2025年6月に国会で法律が成立し、同年9月の一部施行を経て、今回の買受業規制の全面施行へとつながった。
 

買受業の届出義務化と
不正流通の抑止

 


盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律の概要(出典 警察庁)

 
6月1日に全面施行された金属盗対策法の中核をなすのは、盗品の主な換金ルートとなっている金属くず買受業者への法的な規制強化である。具体的には、銅をはじめとする「特定金属くず」を買い受ける事業者に対し、都道府県公安委員会への届出を義務付けた。さらに、取引の際には売り手の確実な本人確認を行い、その内容や取引記録を3年間保存することを義務化している。もし持ち込まれた物品に盗難の疑いがある場合は、直ちに警察官へ申告しなければならない。これらに違反した業者には、拘禁刑や罰金などの厳格な罰則が科される。

2025年9月に先行して施行されたボルトクリッパーや大型ケーブルカッターなどの指定金属切断工具を正当な理由なく隠して携帯することを禁じる規制に加え、今回の買受規制が全面施行されたことにより、犯罪グループの足元をすくう換金抑止効果が強く期待されている。市場への盗品流入を遮断する法的な包囲網は確実に強まっており、買い取り現場での警戒レベルが引き上げられることで、犯罪の発生自体を抑え込む効果が実効性を現しつつある。
 

巧妙化する抜け道と
求められる自主防衛

 
法的な規制強化によって一定の成果が見込まれる一方で、再エネ発電事業者の間では、新法がすべてを解決する抜本的な防壁にはなり得ないという懸念も根強い。厳格化された本人確認をすり抜けるため虚偽の身分証を悪用するケースや、正規の届け出を行わないヤードへ盗品を持ち込む違法業者の存在が依然として懸念されているからである。また、国内の監視の目を避けて、海外へ直接不正輸出するルートへ犯罪組織がシフトする恐れも排除できない。

さらに深刻なのは、度重なる盗難被害によって損害保険の引き受け拒否や免責金額の大幅な引き上げが相次ぎ、事業者のリスク管理が限界を迎えている点である。新法は犯罪の発生を間接的に抑止する一助にはなるが、現場の被害を物理的に防ぎ切るものではない。事業者は法律の存在に依存するだけでなく、防犯カメラやセンサーアラームといった物理的なセキュリティの強化や、盗難されにくいアルミ製ケーブルへの移行、監視体制の再点検といった独自の防衛策を継続していく必要がある。
 

DATA

警察庁 金属盗対策


取材・文/ソーラージャーナル編集部

アクセスランキング

太陽光関連メーカー一覧

アクセスランキング

広告お問い合わせ 太陽光業界最新ニュース

フリーマガジン

「SOLAR JOURNAL」

vol.57 / ¥0
2026年5月29日発行

お詫びと訂正

ソーラー電話帳