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太陽光発電が、2023年に世界で見せた驚異の実力

世界の脱炭素をけん引するのは、太陽光発電である。それを証明する各種のデータが2023年にそろった。例えば、かつてない510GWの増加を見せた再エネ発電施設の4分の3が太陽光発電であるなど、記録ずくめの年であった。今回のコラムでは、昨年のデータの分析などから、太陽光発電の実力と可能性をまとめる。

再エネ、記録尽くめの
2023年と突出する太陽光発電

新たな発電施設の年間設置容量が300GWを越えたのが2021年、それからわずか2年で500GWを突破した。特に2022年から2023年への伸び率は+50%でこの20年間で最大の拡大となった。それを引っ張ったのは、太陽光発電であった。

再エネ発電施設の電源別の年間追加容量(GW)の推移 出典:IEA

 上のグラフは、国際エネルギー機関(IEA)がまとめた、歴年の再エネ施設の追加導入量である。過去最大の伸びを示した2023年の再エネ追加の4分の3が太陽光発電(黄色)であり、10年前までは主役の座にあった風力発電を大きく引き離した。

太陽光発電施設の年別追加容量(GW)と伸び率(%) 出典:BERNREUTER RESEARCH

 こちらのグラフは、太陽光発電だけの毎年の追加容量を国別に示している。一見してわかる通り、赤で表された中国が圧倒的な存在感である。2023年の中国の新設容量は、2022年の世界全体の追加分を越えている。
右端の棒グラフは2024年の導入予測であるが、昨年ほどではないにしても世界全体で4割以上の拡大が見込まれている。

最速で記録を作る
太陽光発電

太陽光発電の拡大のスピードは、これまでの各種の電源と比べても際立っている。
次のグラフは、イギリスのシンクタンクEmberがまとめたもので、それぞれの電源が世界で100万TWhの発電量を達成した後、どのような拡大の道筋をたどっているかを比較したものである。わかりやすくするために、10倍の1,000TWhまでにかかった年数が示されている。

電源別、100万TWh達成から拡大のスピード 出典:Ember

 縦軸に年間発電量、横軸に100万TWh達成からの年数を置いているが、歴史の長い右側の発電源では、最も長くかかった水力発電が39年、石炭火力発電が32年、天然ガス発電が28年と続いている。
一方、再エネ発電はもっと短期間で10倍に行き着いた。
風力発電(深緑)が12年、そして太陽光発電(黄緑)はわずか8年となっている。さらにその勢いを増していることが見て取れる。

化石燃料から再エネへの転換を象徴するデータがある。

アメリカの電源別の新設発電所の推移(1950-2023) 出典:American Clean Power

 上のグラフは、アメリカの発電所開設の移り変わりを電源別に示している。1950年から2023年と70年以上の長期間をカバーしているので、その推移がよくわかる。
1960年代後半からの新設ラッシュでは、黒=石炭、グレー=天然ガスの化石燃料による火力発電が主役となり、少し遅れて、赤=原子力発電が追いかけて来る。その後、スリーマイル島の原発事故で新設はパタッと止み、2000年以降、大量の天然ガス発電所が導入される。そして2000年代の後半からは、再エネの躍進がはっきりしてくる。最初は、青=風力発電が目立つが、2010年代半ばからは、まさに黄色=“太陽光発電の時代”が到来していることがわかる。2023年では風力発電を大きく上回った。同時に、棒グラフの先端に、紫=蓄電池がしっかり確認でき、新しい躍進の兆しが見えている。

世界に比して、陰りの見える
日本の太陽光発電

かつて太陽光発電の導入で先頭を走っていた日本であるが、ここに来てその勢いは衰えている。
これまでの各国の累積導入量は、ダントツの中国、アメリカに続き、日本第3位となっている。(次グラフ参照)

 太陽光発電累の積導入容量、国別トップ10(2023年) 出典:自然エネルギー財団

 しかし、これは過去の“貯金”が効いているためと言ってもよい。日本では、このところ年間導入量5GW程度が続いていたが、2023年は3GW余りと落ち込んだ。4位のドイツの昨年の導入量が13GWなので今年逆転される可能性が高い。グラフでは5位となっているインドがすでに日本やドイツを越えているという統計もある。日本は間もなく5位に落ちる。
資源エネルギー庁が度々強調するように、日本の平地における太陽光発電の設置率は世界一位であることから、適地が減っていることも一因である。また、系統容量に余裕がないこと、そして、出力抑制がジワリと増えていることも投資意欲の減退や金融機関のファイナンスに響いてきていることを忘れてはならない。

解決策は複数ある。
系統の強化やカリフォルニアのような蓄電池の普及、そして、ほぼ屋根の対荷重を気にせず設置できるペロブスカイト太陽電池の実装化である。また、DR(デマンドリスポンス)の普及など、コストをあまりかけずに導入できる、いわゆる「柔軟性」の活用もこれからである。
太陽光発電施設の平地での設置率の高さを強調する以外に、できることはたくさんあると、あえて書き記しておきたい。

プロフィール

エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
埼玉大学社会変革研究センター・脱炭素推進部門 客員教授

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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