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青森県再エネ共生税・共生条例が県議会で可決、ゾーニングと課税を組み合わせた都道府県条例は全国初 

青森県が提案していた「自然・地域と再エネとの共生に関する条例」(共生条例)と「自然・地域と再エネとの共生税条例」(税条例)が3月24日の県議会本会議で可決された。都道府県レベルでゾーニングと課税を組み合わせた条例は全国初となる。

<目次>
1. 都道府県条例で初の課税を伴うゾーニング
2. ゾーニングと合意形成手続きの2つで構成
3. 再エネ発電設備を共生地域へ誘導

 

都道府県条例で
初の課税を伴うゾーニング

共生条例および税条例制定のきっかけとなったのは、ユーラスエナジーホールディングスが計画していた「みちのく風力発電事業」。八甲田山北側のブナ林が広がる森林を開発し150基の風車を建設する計画に対して、地元ガイドを中心とした「Protect Hakkoda」などが反対運動を展開した。青森県が「再エネ共生構想」を公表したあとにユーラス社は2023年10月に事業を撤回した。

しかし、青森県は今後も同様の事例が出ることを懸念し、より実効性を伴う条例が必要と考え、昨年5月に有識者会議を立ち上げて議論を進め、12月に条例案を公表した。その間、既設の発電設備も課税の対象とする案も示されたが、これに対しては日本風力発電協会(JWPA)と太陽光発電協会(JPEA)、再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)の3つの業界団体が反対を表明し、既存施設に関しては課税の対象外となった経緯がある。

青森県議会で可決された「自然・地域と再生可能エネルギーとの共生に関する条例」(共生条例)は、2000kW以上の太陽光発電所と500kW以上の陸上風力を対象としている。上記の通り既存施設は対象外となるほか、建築物の屋根・壁などに設置する太陽光発電設備の設置も対象外とする。さらに共生条例が施行される時点で、環境影響評価の公告を開始している事業、電気事業法に基づく工事計画の届け出をしている事業も適用外とする。施行時に環境影響評価手続きを開始している事業については、評価後合意形成手続きのみ適用し、税条例も適用される。一方、既存施設でもリプレースや増設の際には条例適用の対象となる。このリプレースおよび増設に対する条例適用に関しては、事業者からは再考を求める声が出ている。

 

 

ゾーニングと
合意形成手続きの2つで構成

共生条例の内容はゾーニングと合意形成手続きの2つで構成される。まずゾーニングでは再エネ事業を基本的に実施できない「保護地域」、条件によって事業が可能となる「保全地域」、それ以外の地域を「調整地域」とする。また、調整地域および保全地域のうち「共生区域」として指定される地域では非課税での事業が可能となる。この共生地域は自治体が設定し、その後県が指定する形となる。自治体での共生地域設定に関しては、今後ガイドラインで詳細を決る。都道府県レベルでゾーニングと課税を組み合わせた条例は、全国で初めてだという。

青森県のゾーニングの区分(出典 青森県)

ゾーニングの設定案(出典 青森県)

これまでは、環境影響強化手続きの中でしか合意形成の機会がなかったが、青森県の条例では環境影響評価の前後で、地域住民との意見交換会や説明会の開催を求めているほか、立地する自治体の首長意見を反映するとともに、最終的には知事の認定を受ける必要がある。これに対してJWPAは今年1月、ゾーニングの設定にあたっては、環境影響評価前段階であることを踏まえて、業者に過度な負担がないようにすべきとの意見を提出している。また、今後策定されるガイドラインがわかりやすい内容であること、施行前に市町村や事業者に周知する時間を設けることを求めている。

合意形成プロセスのイメージ(出典 青森県)

再エネ発電設備を
共生地域へ誘導

青森県再エネ共生税の税率(出典 青森県)

同時に可決された「青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生税条例」(税条例)では、課税について国や地方公共団体による計画によるものや、建築物の屋根に設置するものは非課税とした。また、共生区域に認定された案件も非課税となる。その一方で、共生地域以外の地域での発電事業については比較的高額の税を課している。

この税率によると、100MWの風力発電所では課税の金額が年間2億円規模となり、実質的に事業は成立しない水準となる。この課税により、青森県は非共生地域から事業者を共生地域へ導くことを目指している。青森県の宮下宗一郎知事は「青森の自然環境、景観、文化、歴史遺産を次の世代に残すことがわれわれの大きな役割の一つと考えている。一方で、再エネ導入の推進にも協力することも、風況をはじめさまざまな点で再エネの立地に適した青森の役割であり、この両方をこの制度で上手く達成できるように取り組んでいきたい」と述べた。

再エネ発電設備への課税条例は、総務相の同意が必要だ。昨年4月に施行した宮城県の再エネ新税に総務相は同意しており、青森県条例についても同様の判断が示される見通しだ。青森県の共生条例は今年7月に施行される。課税条例は、総務相の同意の1年以内に施行する予定だ。再エネ発電設備への課税については、山形県も条例制定を検討していて、このほかにも複数の都道府県で導入を目指す動きがある。

DATA

青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生制度検討有識者会議について

日本風力発電協会が青森県に意見提出


取材・文/宗 敦司

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