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EPCの設計者必見! 蓄電池併設のFIP転やPPA「DCリンク」で収益を向上させる方法

この4月の制度変更で、蓄電池をPCSよりも太陽光発電側に接続する「DCリンク」が幕を開けた。DC/DCコンバータのパイオニアが、DCリンクの設計のポイントを詳説する。

メイン画像:アンプトのDC/DCコンバータでリパワリングした九州の太陽光発電所。(提供:アンプト)

 

<目次>
1.初期投資を抑え収益をアップ DCリンクの数々のメリット
2.DC/DCコンバータの普及とDCリンク回路の設計方法に課題
3.DCリンクの回路設計で考慮すべき2つのポイント
4.24時間再エネを求める需要家のPPAでも強みを発揮

 

初期投資を抑え収益をアップ
DCリンクの数々のメリット

FIT制度からFIP制度に移行する「FIP転」で収益を向上させるには、発電所に蓄電池を併設しタイムシフト運転することが有効だ。さらに、蓄電池をパワーコンディショナ(PCS)より太陽光発電側に接続する「DC(直流)リンク」には、初期投資を抑え、売電収益をより向上できるメリットがある。蓄電池をPCSより系統側に接続する「AC(交流)リンク」の場合は、太陽光のPCSに加えて、蓄電池にハイブリッドインバータ(AC↓DC↓AC)が必要だ。しかし、DCリンクではハイブリッドインバータが不要になるため、建設コストが抑えられる。また、変換の回数が少なくシステムの効率が上がるため、より多くの再エネ電気(kWh)を系統へ送り出せる。

これまでの制度では、FIP転後に太陽光発電に蓄電池をDCリンクで接続すると、基準価格が、PCSの出力と過積載部分の太陽光発電の出力との比率で加重平均した値に変更されていたため、基準価格が低下していた。これに対して、業界団体などから「実際の潮流を踏まえた場合より、買取価格が過小に算定される」、「事業者にとってディスインセンティブになる」と指摘されていた。

これを受けて国は今年4月、蓄電池をDCリンクで接続する際の制度を変更した。蓄電池を設置したことで増加した電力量の比率を、過積載率に応じて、技術的に算定したピークカット電力量割合の想定値を用いて算定することにした。これによってディスインセンティブが解消され、従来の制度と比べて収益アップが期待できるようになった。FIP転と蓄電池の併設を検討している事業者には追い風となる制度変更だ。
 


 

DC/DCコンバータの普及と
DCリンク回路の設計方法に課題

DCリンクで蓄電池を接続するには、DCリンクならではのいくつかの設計上の注意点がある。近藤氏は、「ACリンクで使用するハイブリッドインバータが広く普及しているのに対して、DCリンクに必要となる高効率なDC/DCコンバータの普及は十分ではありません」と語る。「DC/DCコンバータが入手しにくい環境にあることが、多くのエンジニアがACリンクを選択する理由の1つだと考えています」。

また、DCリンクの回路の設計方法にノウハウが必要であるという。「例えば、DCリンクでは、太陽電池と蓄電池との間にPCSが介在しないため、夜間など太陽電池が発電しないときに蓄電池から太陽電池への電気の逆流を防ぐ回路が必要です。また、蓄電池からDC/DCコンバータやPCSへの突入電流を防ぐ対策も必要です。突入電流は起動時に蓄電池から瞬時的に流れる大きな電流で、これによって回路が損傷しないように考慮しなければなりません」と近藤氏は指摘する。

DCリンクの回路設計で
考慮すべき2つのポイント

これらの課題の解決方法を近藤氏は次のように説明する。「米国企業のアンプトには、高効率なDC/DCコンバータのラインナップがあります。また、北米をはじめとする世界各国での実績から、DCリンクの具体的な設計の方法についてもノウハウがあります」。

まず、設計時に課題となる蓄電池への電気の逆流を防止する方法はこうだ。「電気的な方法の1つ目は、電気を一方向に流すための逆流防止ダイオードを用いる方法、2つ目は、夜になったことを検出して、太陽電池と蓄電池との間に設けた電磁リレーを開放する方法です。どちらの方法でも電気の逆流を防止できますが、コストや全体の電流量などを考えて具体的に設計するのがよいでしょう。また、この電磁リレーは蓄電池の過充電による火災事故を防ぐために使用します。蓄電池の過電圧や充電最大電流(Cレート)の超過をEMS(エネルギーマネジメントシステム)が検出した場合に、電磁リレーをオフにして充電をストップします」(近藤氏)。

続いて、突入電流の対策については「プリチャージ回路」と呼ばれる突入電流の防止回路を設けることが有効だという。プリチャージ回路とは、電源の投入時に一時的に突入電流を抵抗器に流して、過剰な電流を逃がす回路のことだ。「突入電流を一旦抵抗のある回路へバイパスし、数秒後には突入電流が収まるため、通常の抵抗のない電気回路に戻します。プリチャージ回路は一般的なものですが、DCリンク回路を初めて設計する場合、見落とすことがあるかもしれません」と近藤氏は話す。

 


 

24時間再エネを求める需要家の
PPAでも強みを発揮

DCリンクで蓄電池を接続することで、FIP転の他に、電力購入契約(PPA)でもメリットが生まれるという。「例えば、100%再エネ由来の電気による事業活動を目指す企業の間では、夜間も再エネの電気を使いたいというニーズが高まるでしょう。DCリンクだと、発電した電気を直流のまま蓄電池に直接充電でき、過積載率を高めることで、晴天日であれば24時間の再エネ電気を供給することも可能です」。アンプトには、需要家であるデータセンターや24時間稼働の工場などから、こうした運用に関する引き合いが多く寄せられているという。「他にも、広い土地はあるものの電力会社の系統連系容量が足りない発電所では、例えば、500kWの連系容量で3000kWの太陽光発電設備を設置し、蓄電池へDCリンクで接続することで、夜間も売電できるようになります」と近藤氏は力を込める。

アンプトは2007年に米国コロラド州で設立された。同社は、DC/DCコンバータなどの革新的な電気の変換技術を得意とし、再エネ発電システム全体の効率的な設計方法を追求している。北米や欧州、豪州など世界15ヶ国超で数多くのプロジェクトを展開する、リパワリングのリーディングカンパニーだ。「DCリンクの設計に関して不明な点があれば、ぜひお問い合わせください」と近藤氏は話している。

アンプトのDC/DCコンバータとは


アンプトのDC/DCコンバータは、ストリングオプティマイザとして太陽光発電所のリパワリングなどで活用されている。すべてのストリングをそれぞれの最適な動作点で動作させるMPPT機能を備えており、常にダイナミックに変化する太陽電池の電圧を蓄電池のSOC(蓄電残量)電圧に自動的に追従させることができる。

お話を聞いた人

アンプトジャパン 日本支社長

近藤 茂樹 氏


同志社大学電子工学科卒。京セラで太陽電池の開発、JX日鉱日石(現ENEOS)でメガソーラーの開発に従事した。太陽光発電業界のバリューチェーンの広い範囲での経験を基に太陽光発電所のパフォーマンスを向上させることのできる装置メーカーである米国のAmpt LLCの日本支社長を務めている。

問い合わせ


アンプトジャパン合同会社
〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜3-6-12 日総第12ビル10階
TEL:045-565-9977


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

SOLAR JOURNAL 蓄電池特集号より転載

Sponsored by アンプトジャパン合同会社

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