【ふくしま再生太陽光パネル導入日記】効果を実感! 地方の戸建て住宅の一例
2025/12/04
福島県郡山市で太陽熱を利用するソーラーハウスを建ててから34年。集熱板を乗せた屋根はいたみが目立ち、その修理に合わせて太陽光発電を導入した。思った以上の効果を実感しているが、手続きが意外に煩雑なことがわかった。
平成初期の選択肢は
太陽熱しかなかった

パネル設置前の状況(福島県郡山市)
家を建てたのは1991年(平成3年)。当時はまだ太陽光パネルが普及しておらず、再生可能エネルギーの選択肢は太陽熱を利用するぐらいしかなかった。太陽熱を集めて夏のお湯取りや冬の暖房に使うソーラーハウスを建てたのだが、高気密仕様ではなくエアコンもない。若い頃は耐えられたが、年齢を重ね、近年の酷暑や冬の冷気の侵入に耐え難くなり、エアコンやガスヒーターを次々と導入した結果、冷暖房費がかさむことになった。年金生活に入り、ランニングコストが高い家は自分一人で住むにしても次世代に引き継ぐにしても負担が大きい。
原子力発電所と
再生可能エネルギー
福島県は戦後一貫して電力供給県だった。東日本大震災の前は原発と火力発電所を合わせて、県内で消費する量の約10倍もの電気を首都圏に送っていた。震災後、原子炉10基は廃炉と決まったが、福島県は2040年までに再エネ発電で100%自給を目指すという導入促進のビジョンをつくった。太陽光発電は、原発に頼らずに一般家庭で手軽にCO2削減に貢献できる発電方法だ。一般住宅には、太陽光発電システムの独自の補助制度もある。国や自治体の手厚い補助制度も導入の後押しになった。
性能は年々向上
自家消費型でも手の届く価格に

パネル設置後の自宅(福島県郡山市)
数年前から雨漏りらしい壁紙のシミが目立ち始めた。太陽熱集熱板の継ぎ目が劣化し、屋根そのものの修理も必要になっていた。今が太陽光発電に移行するタイミングなのかもしれない。しかし、FIT制度の買取期間が終了し、売電だけでは初期費用の回収が期待できない。一方で太陽光パネルや蓄電池の性能が向上し、価格も手の届くところまで下がってきたように思えた。蓄電池があれば昼夜とも電気が使えるし、停電時の心配も大幅に減る。
今回、5社から見積もりを取ったが、太陽光パネルと蓄電システムの組み合わせはさまざまだった。結果的に決めたのは、C社のパネル16枚(出力7.28kW)とD社の蓄電池2基(容量14.08kW)の組み合わせだ。これに国の補助金申請に必要な機器代なども合わせて、導入費用は税込みで約360万円ほどになった。
手間もかかるし
時間もかかるが……
太陽光パネルと蓄電池が8月中旬から動き出した。国と福島県、それに郡山市の補助金を合わせると122万5000円。差し引きでかかった費用は237万5000円で、ちょうど3分の1が補助金で補填されたことになる。売電単価は9円/kwと、以前に比べて下がっているが、少なくとも夏場はかなり売電に回っている。
導入から1ヶ月間の発電量は890kW、売電量は578kW、当初の想定を上回る売電量だ。自家消費電力は252kWと発電量の3割以下。最初のひと月間、電力会社から購入した電気はほぼゼロだったので、経済的な面からみても効果は大きいと感じる。1階の窓を全て二重化したこともあって、夜間も蓄電池からの供給で賄えている。少し大きめの容量にして正解だったと思う。
前述のとおり、国や県、市の補助制度をフルに利用すれば、導入費用の約3分の1を支援してもらえる。ただ、手続きが多少面倒だ。補助金申請のほかに電力会社との系統接続、買取会社との売電契約などもある。これらが終わらないと発電が開始できない。6月上旬に設置は完了していたが、それから2ヶ月以上も待たなければならなかった。大手業者なら担当窓口がありそうだが、地方の中小企業の場合、そうもいかないようだ。補助制度の要件や補助金額、受け付け開始の時期なども年度によって変わり、申請書類の手続きに奔走してくれた担当者は、私のケースが初めてなので時間も手間もかかって申し訳ないと話していた。こちらこそ申し訳ない気分だ。
国、県、郡山市、3つの補助金は、11月22日までにすべて決定通知が届いた。入金は、11月中に市と県、一番遅い国が12月末になる見通しだ。11月に入って日が短くなり、給湯や暖房などで電気を使う頻度が増え、さすがに全量自給は難しくなってきたが、いまのところは、ほぼほぼ太陽光発電でまかなえている。
これから発電量が落ち電気使用量が増える冬場にどうなるか、心配もあるが、毎日スマホのアプリで発電状況を見ながら、再エネ暮らしを楽しんでいる。
PROFILE
ふくしま再生
福島県いわき市生まれ、郡山市在住。地元テレビ局で報道の仕事に長く携わる。環境問題や原発の安全性と地域経済との関係性などの取材経験も多く、再エネへの関心も高い。
SOLAR JOURNAL vol.55(2025年秋号)より転載
12月12日(金)に開催する「第36回PVビジネスセミナー」では、東京都江戸川区気候変動適応計画課の担当者が、事業者を公募して新たに設立する住宅向け太陽光PPA会社をテーマに講演します。

第7次エネルギー基本計画では、太陽光発電と蓄電池の普及を加速させる方針を打ち出しています。そうしたなかで、供給側の変動に応じて、電気需要の最適化を図る必要性が高まっています。今回のセミナーでは、国の最新の政策動向とともに、PPAの先進事例と蓄電池活用の市場動向を紹介します。長期脱炭素電源オークションの現状と課題、自治体による住宅向けPPA会社、国内外で開発された最新テクノロジーなどを紹介します。











