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【再エネの達人】EV需要が拡大し続ける世界 ガソリン補助を続ける日本はどこへ向かうのか。

政府の3兆1千憶円超の補正予算案が決まり、6月3日に閣議決定された。 ほとんどがエネルギー費対策である。電気ガス代の3か月分補助が5000憶円、残りは一か月だけで5000憶円かかるというガソリン補助対応とされる。対して、財源が枯渇する、脱炭に反するとの正論が何度も起きるが、どこ吹く風である。世界を見るとEVが拡大を続け、ガソリン脱却に向かっている。 イラン情勢の危機は続くが、その対処法を間違っていないのか。論点をまとめる。

 

<目次>
1.“安いガソリン代を誇る”高市首相
2.「EV不振」の日本報道と実際の「順調な拡大」の落差

 

安いガソリン代が導く未来とは

 
5月25日午後、今年度の補正予算案の説明で首相の姿は壇上にあった。
継続するガソリンなどへの補助に触れ、「ガソリン価格は、米国を含めたG7で最も安い水準であります全国平均170円に抑制しています。」と語った。下のグラフが説明の根拠である。高市首相の4月30日のブログにも載っている。
 


資源エネルギー庁が作成した各国のガソリン代の比較

 

ガソリン補助に関しては、このコラムでも複数回、疑問を投げかけてきている。もちろん、すべての新聞などマスコミ、シンクタンクも繰り返して苦言を呈す。財政環境の悪化から長期金利の上昇や円安を引き起こしガソリンの輸入価格をさらに引き上げる悪循環、消費者の節約意識を麻痺させ、脱炭素に反することなどが論点である。正論である。自民党内からも小林政調会長が「持続可能でない」と声を上げた。石油の輸出国であるアメリカより安いガソリン代は、自慢すべきことなのか。大きなズレを感じざるを得ない。忘れてならないのは、補助金の原資は我々の税金であるということである。個別の話になるが、車を持たない知人が「不公平」と一言で感想を述べた。所有者の間でも、車が無くては仕事や生活ができない人とただレジャーで使う人とでも大きな差があるのに、一括の支援の仕組みである。
 

「EV不振」の日本報道と実際の「順調な拡大」の落差

 

省エネ、脱炭素の視点から見ても、重要な課題が存在する。
今回のホルムズ海峡が何らかの解決を見ても、将来に“石油関連の欠品”のリスクは残る。ナフサなど原料は別課題として、エネルギーに絞ってみよう。現状では、石油の発電はほとんどないので、ターゲットは車を動かすガソリンと暖房などの熱利用のための重油となる。世界は、脱炭素化の流れの中で、それぞれBEV(バッテリー電気自動車)とヒートポンプという確立した技術へのシフトを進めてきている。今回の事象は、実際にEV拡大の追い風となっている。(*確認しておくが、世界的にEVとは、BEVとPHEVのことを言い、HEV(ハイブリッド)は含まれない。)ところが、日本ではガソリン補助に加えて、なぜか“EVの不振キャンペーン”の雰囲気が作られている。コラムの冒頭に、EVの順調な拡大、と書いたが、お読みになった中にも、「EVの売れ行きは世界的に低迷しているのでは」と違和感を持った人がいるかもしれない。背景に、主要な新聞やテレビで『EV不振』を聞いたり見たり、したことがあるはずである。
5月29日版の日経新聞朝刊に掲載された「トヨタ、EV開発一部中止」の記事では、その原因について「EVの世界的不振を踏まえて」とはっきり書かれている。ホンダのEV開発撤退やパナソニックの新型蓄電池の量産延期でも、同様にEVの低迷などが理由として挙げられていた。日経だけではない。朝日新聞の30日朝刊の「トヨタ、次世代EV中止」では、「EVの普及が世界的に足踏みするなか」と評論している。日本のクオリティペーパーでそこまで繰り返されれば、EVは世界で売れていないのだと思って当然かもしれない。
ところが、実態は大きく違っている。
 


世界のEVの販売数2020-2026、中国(オレンジ)、欧州(青)、アメリカ(緑)(出典:IEA、Global EV Outlook 2026)

 
上のグラフは、IEA(国際エネルギー機関)が5月に発表したばかりの「Global EV Outlook 2026」による世界のEV販売数の推移である。
データは、2025年に販売された新車のうち4台に1台がEVで、2024年から毎年20%以上の成長を続けたことを示している。毎年の販売数が2000万台以上に達した。全体のボリュームが増えてきた中での2割増は、変わらず“驚異”の部類であろう。“世界的不振”は、全く当たらない。グラフでは、成長をけん引する中国(オレンジ)のシェアがやや落ちていることもわかる。欧州が2024年の停滞から3割増えて400万台越えで勢いが戻り、一方、トランプ政権のEV優遇策廃止でアメリカ(緑)での2026年の売れ行きは下がると見られている。トヨタやホンダEVの売り先は主にアメリカを想定しているため、新聞記事は、そこを強調して書かれた可能性もある。
 


 世界各国の新車に占めるEVのシェア(2020年、2025年)
出典:IEA、Global EV Outlook 2026

 
新車でのシェアでは、ほぼ100%のノルウェーを先頭に、中国などが50%越えを示す「EV先進国」と呼ばれている。
気になるのは、日本車の上得意であった東南アジアで、EVが急激にシェアの伸ばしていることである。シンガポールが6割超、ベトナムが4割超、タイも2割を越えた。EVラインナップが少ない日本車は苦戦を強いられていて、各国でガソリン車を含め二けたのシェアを落としている。マスコミ報道のチェックが主眼ではない。中東情勢と脱炭素化の対処がうまく一致できるのに、ちぐはぐな対応をして、どちらも失敗してしまうことを恐れる。世界の動きを正しくつかみ、適切な方向性をつかむことが重要である。
 

プロフィール

エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
埼玉大学社会変革研究センター・脱炭素推進部門 客員教授

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
 
世界各国の新車に占めるEVのシェア(2020年、2025年)(出典:IEA、Global EV Outlook 2026)

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