政策・制度

環境省 脱炭素先行地域に17道府県20地域を追加

環境省は11月1日、二酸化炭素の排出削減をほかの地域に先駆けて進める「脱炭素先行地域」として17道府県20地域を新たに選定した。今年4月の1回目と合わせ、29道府県の計46地域となった。同省はそれぞれの地域の特色に合わせた取り組みを後押しすることで、脱炭素化を加速させたいとしている。

農村や離島も……
多彩な地域を選定


政府は50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。脱炭素先行地域は、政府目標を前倒しして30年度までの脱炭素化実現を目指す。1回目の募集では、今年4月に横浜市や川崎市、さいたま市など全国26地域が選定されている。2回目の募集は8月下旬に締め切られ、全国から50件の応募があった。

環境省は11月1日、2回目の選定地域を公表し、札幌市や千葉市、京都市など17道府県の20地域が選ばれた。市街地から農村、離島までさまざまな地域が含まれ、企業や大学と連携して取り組みを進める地域もみられる。

北海道奥尻町
再エネ推進で全島の脱炭素化

サスティナブル・アイランドを目指す奥尻島(北海道)

新潟県関川村は、02年に「地域新エネルギービジョン」を策定して、地域ならではの温泉熱や雪氷冷熱などの導入に取り組んできた。15年には廃校になった中学校のグラウンドや農場の跡地などを有効活用してメガソーラーを設置している。

奈良県三郷町は、公共施設で太陽光発電設備の導入を進めるとともに、創エネ・省エネシステムを取り入れた住宅などに補助金を交付している。廃食用油の再利用や生ごみのたい肥化に積極的に取り組むほか、サテライトオフィスの誘致や予約制乗合タクシーへの電気自動車(EV)の導入を進めている。

北海道奥尻町は、既存の水力発電と地熱・太陽光・木質バイオマスなどの多様な再エネ電源を活用して、島全域の脱炭素化を進める。人口や公共施設が集中する島内2つのエリアに自営線によるサブネットワークを構築して、離島におけるエネルギーコストの低減と電力供給の安定化を図る。町有バスや公用車のEV化、EV自動運転デマンドバスなどを導入し、高齢者をはじめとする住民の利便性を向上し、脱炭素化の取り組みを通じて「サスティナブル・アイランド奥尻」の実現を目指す。

5年間で
最大50億円を交付

脱炭素先行地域のロゴマーク(環境省のホームページより)

脱炭素先行地域に選ばれた地域には、1自治体あたり5年間で最大50億円が交付される。環境省は、2030年度までに少なくとも100地域を選び、再生エネやEVの導入などを集中的に支援する。来年度予算の概算要求に、同省は脱炭素先行地域への交付金として、今年度当初予算の倍の金額となる400億円を計上している。

環境省は同日、脱炭素先行地域のロゴマークを発表した。四角い線が建物、三角が山々、楕円に縦線が木々、そして活動的なイメージのあるオレンジ色の円で、脱炭素化に取り組みつつも自然とうまく共生する生命をイメージしている。同省はwebサイトやSNS、イべント・講演資料、名刺などに掲載することで、脱炭素先行地域の取り組みを周知するきっかけになることを期待しているとしている。

DATA

環境省ホームページ


取材・文/高橋健一

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