政策・制度

経産省、蓄電池供給網の強靭化に重点配分 2024年度概算要求

経済産業省は、2024年度予算の概算要求を発表した。2022年8月に公表した「蓄電池産業戦略」をうけて、車載用リチウムイオン電池をはじめとする蓄電池製造サプライチェーンの強靱化に重点配分している。

<目次>
1.概算要求総額 GX推進対策費を大幅増
2.次世代太陽光 国内供給網を構築へ

 

概算要求総額
GX推進対策費を大幅増

2024年度概算要求の概要(出典 経済産業省)

2024年度概算要求の概要(出典 経済産業省)

財務省は9月5日、各省庁が提出した2024年度予算の概算要求額を発表した。一般会計の要求総額は114兆3852億円で、2022年度の111兆6559億円を上回り、過去最大を更新した。経産省の2024年度概算要求は、一般会計と特別会計の総額が前年度当初比45.8%増の2兆4614億円。増額分の大半がGX推進対策費の上乗せ分だ。GX経済移行債の発行が本格的に始まることから、GX推進対策費として1兆985億円を計上している。

重点的に配分したのが蓄電池。経済産業省は2022年8月、従来の政策を大幅に見直した「蓄電池産業戦略」を公表した。日本のリチウムイオン電池の製造能力を2030年までに国内で150GWhと現在の約7倍に向上させる。開発や製造に関連する人材を同年までに3万人確保する。世界市場で2割のシェアを獲得するなど、蓄電池の国際競争力向上を図り、脱炭素社会実現に向けた対応を急ぐ。

かつて日系企業は蓄電池の世界市場で高いシェアを占めていたが、近年は中国と韓国メーカーが海外市場を積極的に開拓している。2015年に51.7%でトップだった日本の車載用リチウムイオン電池の世界シェアは、中国や韓国に抜かれ、2020年には21.1%となっている。定置用リチウムイオン電池の世界シェアは2016年の27.4%から2020年は5.4%まで低下している。

「蓄電池産業戦略」では、全固体電池などの技術開発に集中投資していた、これまでの政策を改め、足元の需要増が見込まれるリチウムイオン電池への投資を支援する内容を盛り込んだ。電池産業への投資を促すため、政府は2022年度補正予算で3316億円を確保した。国内投資をさらに加速させるため、2024年度概算要求では4958億円に増額している。パワー半導体の国内供給網強靱化にも1078億円を要求する。

次世代太陽光
国内供給網を構築へ

ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池

ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池(出典 パナソニック ホールディングス)

ペロブスカイト太陽電池、水電解装置、浮体式洋上風力といったその他の革新的な脱炭素製品の国内サプライチェーン構築にも1171億円を計上している。政府は、蓄電池、パワー半導体、ペロブスカイト太陽電池、水電解装置、洋上風力発電設備、パワー半導体などの革新的な脱炭素製品などの国内サプライチェーン構築支援に5年で1.2兆円規模を投じる計画。中小企業をはじめとする需要家設備の非化石転換やデマンドレスポンス対策を伴う先進的な省エネ対策支援に5年で1925億円を投入する。

そのほか、需要家主導太陽光発電導入促進事業に前年度当初比50%増の158億円。洋上風力発電の導入促進に向けた採算性分析のための基礎調査事業に75 億円(208%増)。再エネの大量導入に向けた次世代型の電力制御技術開発事業に80 億円(27%増)。再エネ導入拡大に資する分散型エネルギーリソース導入支援事業に120 億円(新規)を要求する。

2024年度の概算要求について、経産省は「経済産業政策の重点に関連し、産業競争力強化・経済成長及び排出削減の効果が高い GX の促進、物価高騰下で生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者等の成長の下支え、大阪・関西万博の会場整備に関する施策、総合的な防衛力の強化に資する研究開発、福島復興の着実な実施を進める事業を盛り込んだ」と説明している。

DATA

経済産業省 2024年度概算要求・税制改正要望について

経済産業省 蓄電池産業戦略検討官民協議会


取材・文/高橋健一

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