営農型太陽光発電、ガイドライン改正案の意見募集 一時転用の法的根拠を明確化
2023/12/19
農林水産省は12月4日、営農型太陽光発電の農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン改正案を公表し、パブリックコメントの受け付けを開始している。意見募集の締め切りは2024年1月2日。
一時転用の
法的根拠を明確化
営農が適切に継続されない事例を排除して農業生産と発電を両立
営農型太陽光発電は、農地荒廃の防止や解消、農業者の所得向上などに寄与する一方、近年は、発電に重きを置いて営農がおろそかにされ、営農型太陽光発電設備の下部の農地の利用に支障が生じている事例が散見される。このため、農林水産省は営農が適切に継続されない事例を排除し、農業生産と発電を両立するという営農型太陽光発電の本来あるべき姿とするため、「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン改正案」を公表した。
改正案は、行政上の取扱いとして実施されていた営農型発電設備 に関する農地の一時転用許可制度を農地法施行規則上の制度として法令上の根拠を明確化するとともに、許可申請手続きや基準の詳細をガイドラインとして制定するもの。農地転用許可権者は、一時転用許可を行う場合には、申請内容が次に掲げる事項に該当することを確認するものとする。
1.申請に係る転用期間が別表の区分に応じた期間内であり、下部の農地における営農の適切な継続を前提として営農型太陽光発電設備の支柱を立てるものであること。
2.営農型太陽光発電に係る事業終了後に当該支柱部分に係る土地が耕作の目的に供されることが確実であり、かつ申請に係る面積が必要最小限で適正と認められること。
3.下部の農地における営農の適切な継続(次に掲げる場合のいずれにも該当しないことをいう。)が確実と認められること。
4.農地転用許可権者への毎年の栽培実績及び収支の報告が適切に行われ、下部の農地における営農の状況が適確に確認できると認められること。
5.営農型太陽光発電設備の角度、間隔等からみて農作物の生育に適した日照量を保つことができると認められること。
6.営農型太陽光発電設備の支柱の高さ、間隔等からみて農作業に必要な農業機械等を効率的に利用して営農するための空間が確保されていると認められるこ
と。
7.位置等からみて、営農型太陽光発電設備の周辺の農地の効率的な利用、農業用用排水施設の機能等に支障を及ぼすおそれがないと認められること。
8.農業経営基盤強化促進法(昭和 55 年法律第 65 号)第 19 条第1項に規定する地域計画の区域内において営農型太陽光発電を行う場合は、当該地域計画に係る協議の場において、農地の利用の集積その他の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがないとして、営農型太陽光発電の実施について合意を得た土地の区域内において行うものであること。
9.支柱を含む営農型太陽光発電設備を撤去するのに必要な資力及び信用があると認められること。
10.申請に係る事業が営農型太陽光発電設備を電気事業者の電力系統に連系することとされている場合には、申請者が連系に係る契約を電気事業者と締結する見込みがあること。
11.申請者が法第 51 条の規定による原状回復等の措置を現に命じられていないこと。
栽培実績と収支状況の
毎年報告を義務付け
発電を廃止する場合は、支柱を速やかに撤去
営農型太陽光発電設備の支柱に係る一時転用許可は、次に掲げる条件を付けてするものとする。
1.下部の農地における営農の適切な継続が確保され、支柱がこれを前提として設置される営農型太陽光発電設備を支えるためのものとして利用されること。
2.下部の農地において栽培する農作物に係る栽培実績及び収支の状況を毎年報告すること。なお、栽培実績については、必要な知見を有する者の確認を受けること。
3.下部の農地において営農の適切な継続が確保されなくなった場合又は確保されないと見込まれる場合には、適切な日照量の確保等のために必要な改善措置を迅速に講ずること。
4.下部の農地において営農の適切な継続が確保されなくなった場合若しくは確保されないと見込まれる場合、営農型太陽光発電設備を改築する場合又は営農型太陽光発電に係る事業を廃止又は第三者に承継する場合には、遅滞なく、報告すること(当該設備を改築する場合は別紙様式例第7号、廃止する場合は別紙様式例第8号、第三者に承継する場合は別紙様式例第9号)。
5.下部の農地における営農が行われない場合又は営農型太陽光発電に係る事業が廃止される場合には、支柱を含む当該設備を速やかに撤去し、農地として利用することができる状態に回復すること。
農林水産省は、ガイドライン改正案について、2024年1月2日まで意見募集を実施している。
DATA
営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン案についての意見・情報の募集について
取材・文/高橋健一