政策・制度

新・出力制御対策パッケージ。「蓄電池の活用」を強化へ

再エネの出力制御の実施エリアは全国に拡大し、足元の出力制御量は増加の傾向にある。経済産業省・資源エネルギー庁は制御量を抑えるため、新たな「対策パッケージ」をまとめた。需要家の行動変容や再エネ利用に重点が置かれている。

<目次>
1. 2024年度に全国で実施へ 節電の影響で制御量が増加
2. 2年ぶりの対策パッケージ 需要サイドの取り組みを強化
3. 系統用蓄電池の先進事例 卒FIT発電所の有効活用にも

 

2024年度に全国で実施へ
節電の影響で制御量が増加

再エネの出力制御は9つの電力エリアに広がり、東京電力パワーグリッドは、2024年度に最大1.5MWの出力制御を行うと発表した。実施されれば、全国で再エネの出力制御が行われることになる。今年度の再エネ出力制御量と、年間の出力制御率の見込みは、下表の通り。近年の電気料金の高騰から節電が進み、電気の需要が減ったことで、足元の出力制御量はますます増加しつつある。

2023年度の再エネ出力制御の実施状況


中国、四国、九州といった西日本を中心に出力制御率の伸びが著しい。(出典:経済産業省・資源エネルギー庁)

2年ぶりの対策パッケージ
需要サイドの取り組みを強化

こうした背景を受け、資源エネルギー庁は2年ぶりに「出力制御対策パッケージ」を取りまとめた。2021年の対策パッケージでは、再エネ発電設備のオンライン化や、火力発電の最低出力の引き下げなど、供給側の対策が中心だった。需要側の対策として、電気料金を変動させて需要のシフトを促すビジネスモデルなどが盛り込まれていたものの、PRや実証のレベルにとどまっていた。

今回の対策パッケージは、前回と比べて需要側の取り組みが大幅に強化された。「需要面での対策により、出力制御時間帯の需要家の行動変容・再エネ利用」を促進することを基本的な考え方に据え、産業部門に向けた具体策として、系統用蓄電池や再エネ発電所併設型の蓄電池などの導入を通じて、需要の創出やシフトを行うとしている。

系統用蓄電池の先進事例
卒FIT発電所の有効活用にも


画像提供:株式会社リエネ

対策パッケージに先駆けて、東急不動産の子会社である株式会社リエネは去年7月、伊藤忠と東京センチュリーが共同出資するIBeeTとの合弁会社を設立し、福岡県で系統用蓄電池の建設を始めた。足元では、需給調整市場と卸電力市場、容量市場を活用して収益化を目指すが、さらなる展望も視野に入れる。アセットマネジメントを行う全国99ヶ所(2023年11月末現在)の再エネ発電所が、卒FIT後も安定的な発電を続けられるように、調整力などとして利用する考えだ。株式会社リエネ総務企画部の熊澤圭悟氏は「再エネ発電所を長期的に有効活用するために、系統用蓄電池をさまざまな場面で役立てていきたい」と話す。

新たな対策パッケージには、FIP制度の活用促進など供給側の対策も盛り込まれ、出力制御量の低減が期待される。

需要側の対策

□ 系統用蓄電池、再エネ併設蓄電池、水電解総理の導入を通じた需要の創出・シフト
□ 家庭用蓄電池・ヒートポンプ給湯機を通じた需要の創出・シフト
□ 電力多消費産業におけるデマンドレスポンスの推進
□ データセンターなど、電力多消費産業の立地誘導・需要構造の転換

供給側の対策

□ 再エネ発電設備のオンライン化のさらなる推進
□ 新設火力発電の最低出力の引き下げ
□ FIP電源に蓄電池を併設する場合の価格変更ルールなど、FIP制度の活用促進

系統側、電力市場の対策

□ 連系線の運用見直しや、地域間連系線のさらなる増強による域外送電量の拡大
□ 電力市場構造における対応を中長期的に検討

出典:経済産業省・資源エネルギー庁


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

SOLAR JOURNAL vol.48(2024年冬号)より転載

4月23日(火)に開催する「第29回PVビジネスセミナー」では、2024年度の国の政策動向や、PPA・蓄電池を活用した新たなビジネスモデルのほか、長期脱炭素電源オークションの仕組みや今後の展望について講演します。


2024年、再エネの新規開発スキームは、固定価格買取制度に頼らないオフサイトPPAが主流になりつつあります。今回は2024年度の国の政策動向や、蓄電池を活用した新たなビジネスモデルを徹底解説します。また、今年1月にスタートした長期脱炭素電源オークションの仕組みや今後の展望、東京都が取り組む事業者向け再エネ導入事業を紹介します。

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