初回の長期脱炭素電源オークション、976.6万kW約定。蓄電池で厳しい競争
2024/05/02
長期脱炭素電源オークションの初回の約定結果によると、全体で976.6万kWが約定した。電源方式別では蓄電池で募集容量を大きく超える応札があった。水力、太陽光、風力の応札はなかった。
蓄電池の落札率24%
落札容量の4倍を越える応札
電力広域的運営推進機関(広域機関)は4月26日、容量市場の長期脱炭素電源オークションの2023年度の約定結果を公表した。約定総量は脱炭素電源が401.0万kW、LNG専焼火力が575.6万kWだった。
(発電方式別の応札容量・落札容量。出典:電力広域的運営推進機関)
発電方式別の落札容量は、揚水が57.7万kW、蓄電池が109.2万kW、水素混焼への改修が5.5万kW、アンモニア混焼への改修が77.0万kW、バイオマス専焼(新設)が19.9万kW、原子力(新設)が131.6万kW、LNG専焼火力が575.6万kWだった。なお、水力、太陽光、風力の応札はなかった。
応札容量のうちの落札容量の割合を示す落札率は、揚水が69%、蓄電池が24%だった一方で、水素混焼など既設火力の改修、バイオマス、原子力、LNG専焼火力が100%だった。特に、蓄電池には455.9万kWの応札があり、厳しい競争だったことが読み取れる。
(エリア別の応札容量・落札容量。出典:電力広域的運営推進機関)
エリア別の応札容量・落札容量は上図の通り。四国を除くエリアで落札容量を超える応札があった。北海道、東北、北陸では落札容量の2倍近く、九州では3倍を超える応札があった。
他市場の収益を還付するルール
容量拠出金の抑制に奏功するか
約定総額は、脱炭素電源が2,336億円、LNG専焼火力は1,766億円。ただし、長期脱炭素電源オークションの落札電源は、他の市場における収益の9割を還付しなければならない。約定総額から他の市場における推定還付額を差し引いた額は、脱炭素電源が706億円、LNG専焼火力がマイナス1,343億円だった。LNG専焼火力では、推定還付額が約定額を上回っている。
ただし、広域機関によると、推定還付額は過去3年の電力卸市場(スポット市場)、非化石価値取引市場などの取引価格などをもとに試算したものであり、実際の還付額とは異なるとしている。
容量市場のメインオークションと長期脱炭素電源オークションの原資は、すべての小売電気事業者が負担する容量拠出金だ。最終的には需要家が負担することになるため、他市場の収益の還付金が実際にどれくらいになるのかに関心が集まる。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)