政策・制度

2026年、日本の電力需要家に訪れる3つの大変革。省エネ法改正&排出量取引制度スタート

「省エネ法」「排出量取引制度」「需給調整市場」が同時進展。需要家企業の行動を確実に変える、3つの制度改正が近づいている。再エネソリューション企業にとって、それは大きな商機となる。何がどう変わり、どんな影響を及ぼすのか──再エネ関連ビジネスに役立つ視点を整理する。

 

<目次>
1.日本の電力需要家に“3つの変化”が訪れる
2.1 省エネ法改正 特定事業者1万2000社に「太陽光設置目標」提出義務
3.2 排出量取引制度スタート カーボンプライス「炭素コスト」が経営課題になる

 

日本の電力需要家に
“3つの変化”が訪れる

2026年度、日本企業の経営戦略を左右するエネルギー制度が大きく変わる。その方向性を一言でいえば、「電力を使う側(需要家)が動く時代」の本格到来である。これを牽引するのが、本稿で紹介する3つの制度改革だ。

これらの制度は、いずれも「エネルギーを自らつくり、蓄電し、制御する企業」に有利に働くものとなる。その結果、電力需要家である企業にとって、太陽光発電と蓄電池導入の必要性と価値が急速に高まることになる。

 

 

1 省エネ法改正
特定事業者1万2000社に
「太陽光設置目標」提出義務

2026年度から、省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)に基づく省令・告示の改正により、一定規模以上の電力需要家に対して、屋根設置太陽光発電設備の設置目標を策定することが義務づけられることになった。具体的には、省エネ法が定める「特定事業者等」を対象とし、中長期計画書において、「屋根設置太陽光発電設備の設置に関する定性的な目標」の提出が求められる。

さらに、2027年度からは、定期報告書において、「屋根設置太陽光発電設備を設置できる建屋の①屋根面積、②耐震基準、③載積荷重、④そのうち既に屋根設置太陽光発電設備が設置されている面積」の報告義務も追加される。1建屋あたりの屋根面積が1000㎡以上の「エネルギー管理指定工場等」に、これら追加報告が求められる見通しだ。

特定事業者とは「会社全体の年間エネルギー使用量が、原油換算で1500kl以上」の事業者のことで、対象となる企業は約1万2000社に及ぶ。対象企業は、東京都(2690社)、大阪府(940社)、愛知県(821社)の順に多いが、日本全国47都道府県すべてに多数存在する。業種別にみると、製造業・サービス業・自治体など92業種、やはりほぼすべての分野に対象企業があることが分かる。

屋根設置太陽光に関する追加報告義務が生じる「エネルギー管理指定工場等」とは、年間のエネルギー使用量が1500kl以上で、エネルギー使用の合理化を特に推進する必要があるとして国に指定された工場や事業所を指す。その数は、約1万4500棟にも上る。

屋根設置太陽光は、設置を検討すれば良いというものではなく、設置していくことを前提に、具体的な「中長期計画」を策定し、その実績を毎年「定期報告」しなければならないものへと変わる。しかも、これに対応すべき需要家企業は約1万2000社、追加報告義務が生じる可能性のある工場等は約1万4500棟だ。このことは、発電設備の導入を提案する事業者にとっても、極めて重要なサインとなる。法律で求められる取り組みとして“提案のきっかけ”が明確化し、アプローチすべき“ターゲット”も明らかになったということだ。

 

2 排出量取引制度スタート
カーボンプライス「炭素コスト」が
経営課題になる

来年度からは、いよいよ「排出量取引制度」もスタートする。日本で初めて、本格的にカーボンプライシング(炭素に価格をつける仕組み)が導入されるのだ。これはGX推進法に基づいて設けられるものであり、国が定める排出上限のもと、企業間で排出枠を売買できるようになる。同時に、CO2排出量の多い企業ほど、それに伴うコストも多く負担しなければならず、排出量削減への大きな原動力になるものと期待されている。

排出量取引制度の対象となるのは、CO2の直接排出量が前年度までの3ヶ年度平均で10万トン以上の事業者だ。この制度では、国が一定の削減目標に従って業種別の排出上限を設定し、その範囲内で企業に排出枠を配分する。企業は自社の排出量をこの枠内に収める努力をするが、枠を超えた場合には市場で他社から排出枠を購入し、余った場合は販売することができる。

現在、詳細制度設計が行われているところだが、製造業では「ベンチマーク方式」が導入される見通しだ。これは鉄鋼・化学・セメント・自動車など業種ごとに、生産量当たりのCO2排出原単位を基準値として設定し、各企業の実績との比較で配分量や負担が決まる仕組みである。この方式では、同じ生産量でもエネルギー効率の高い企業ほど優遇され、炭素効率の低い企業ほど多くのコストを負担することになる。

カーボンプライシングは、炭素排出に経済的コストを与え、企業が自発的に削減策をとるよう促す政策手法である。排出量取引制度の導入により、企業は自社のCO2排出に明確な金銭的価値がつく世界に入る。ここでは、「炭素コスト」をどこまで抑制できるかが、利益率や国際競争力に直結する。とりわけ電力多消費型産業では、電力をどこから調達するか、どれだけ自家発電で賄うかが、直接的に炭素コストに影響する。自家消費型太陽光発電を導入すべき理由が、また1つ加わったと言っても良いだろう。

排出量取引制度は、単なる環境政策ではなく、企業行動を根本から変える制度だ。需要家企業にとって、太陽光発電や蓄電池の導入は、その制度的変化に対する「最も実効的なリスクヘッジ」であり、「最強の炭素コスト防衛策」となる。

炭素排出がコスト化され、エネルギー選択が経営判断の中核に入る時代。電力需要家が炭素コスト削減を求める限り、太陽光発電・蓄電池の経済的説得力が強まることは間違いない。

●排出量取引制度のしくみ

・排出量取引制度の対象事業者(ETS対象事業者)は、CO2の直接排出量が前年度までの3ヶ年度平均で10万トン以上の事業者。
・義務対象者である親会社などが、密接な関係にある子会社(義務対象者のみ)も含めて一体で義務を履行することも可能。
・これにより、制度の対象事業者数は300~400社程度、カバー率は日本における温室効果ガス排出量の60%近くとなる見込み。
・対象事業者は、排出枠割当の基礎となる排出目標量の届出や、排出実績量などの報告に当たって、登録確認機関の確認を受けなければならない。


出典:経済産業省


取材・文:廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.55(2025年秋号)より転載

 

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