政策・制度

【飯田哲也さんコラム】蓄電池の導入拡大の障壁。制度と市場と技術のアップデートを

蓄電池ビジネスが転換期へ。COP29で6倍増が合意された今、世界が加速する中、日本は制度と技術で遅れを取っている。日本は容量市場改革と制度更新が急務だ。再エネ拡大の鍵を、環境エネルギー政策研究所 所長の飯田哲也氏が解説する。

 

<目次>
1.蓄電池設備容量を6倍増で合意 日本の現状は周回遅れ
2.資金調達が大きな課題 容量市場の抜本的な改革を

 

蓄電池設備容量を6倍増で合意
日本の現状は周回遅れ

いま国内では、系統用蓄電池ビジネスが盛り上がりを見せています。昨年12月にアゼルバイジャンで開催された国連機構変動枠組条約締約国会議(COP29)では、「エネルギー貯蔵設備の設備容量を2030年までに6倍増(22年比)にすること」を目指す有志国の誓約が合意されました。日本もこれに参加しているため、蓄電池の導入をさらに進めなければなりません。そうすることで、再エネ出力抑制の低減も期待できます。

その一方で、蓄電池の導入を受け止める側である、電力会社や各種の市場制度、それらを全体的に包括する国の政策、蓄電池を施工する技術の方向性は、必ずしもCOP29が目指す方向性と一致しているとはいえません。系統用蓄電池の爆発的な導入が進む米国カリフォルニア州や、世界で初めて大型の系統用蓄電池が設置された豪州のホーンズデールを訪れると、こうした日本の現状は周回遅れであるということを痛感します。蓄電池をめぐる制度と技術の両方を大幅にアップデートしなければなりません。

 

 

資金調達が大きな課題
容量市場の抜本的な改革を

最近の系統用蓄電池事業は、一見すると、FIT制度の初期に太陽光発電が急激に普及した頃に似ています。しかし、決定的に異なるのは、金融機関が系統用蓄電池ビジネスに対してなかなか融資しない点です。FIT制度を活用した発電事業は、20年間にわたる収益の見通しを立てやすく、金融機関も融資を行う判断をしやすい仕組みでした。それに対して系統用蓄電池事業では、収益の柱となるのは、容量市場、需給調整市場、電力卸市場のスポット市場における運用です。いずれも予測が立てにくく、事業者が金融機関から融資を受けるのに苦労するケースをよく耳にします。系統用蓄電池のさらなる普及に向けては、こうしたファイナンスの課題を解決することが必要です。

そのためには、容量市場をはじめとする国の制度や仕組みを進化させなければなりません。例えば、英国の容量市場システムでは、蓄電池が出力の増減の指令に対して即座に応答することを高く評価するため、蓄電池が高値で約定しやすく、蓄電池の導入が加速度的に進んでいます。こうした海外の容量メカニズムの仕組みは自然変動型再エネの導入を促進するために「柔軟性」を高める方向で進化を続けており、日本政府もそれを見習うべきです。

技術に関して例を挙げると、テスラの蓄電池には、電力系統の周波数を擬似的につくる「グリッドフォーミング」という機能が搭載されています。これによって、1秒以内に周波数の変動に対応し、停電も回避することが可能になっていますが、日本にはこうした最先端の技術を活用する市場がありません。急激に進化する世界の〝蓄電池先進国〞から取り残されないためには、エネルギー政策の根幹である電力市場を根底から見直し、自然変動型再エネの飛躍的な導入と大手電力会社の完全な所有権分離を前提とした容量市場の抜本的な改革を行うべきだと考えます。


出典:資源エネルギー庁より筆者作成

 

PROFILE

NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長

飯田哲也氏


自然エネルギー政策の革新と実践における国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利団体である環境エネルギー政策研究所所長。
X:@iidatetsunari


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

SOLAR JOURNAL vol.55(2025年秋号)より転載

 

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