政策・制度

金属盗対策法が一部施行 北関東などで後を絶たない金属ケーブル盗難

太陽光発電所における金属ケーブルの盗難は2025年6月に金属盗対策法が成立し、同年9月から一部規定が施行されたことから被害は減少へ向かい始めている。しかし依然として課題は多い。北関東を中心に後を絶たない盗難被害と残された問題を追った。

メイン画像:山あいの太陽光発電所で盗難被害にあうケースが多い

<目次>
1.地域全体が犯罪の準備に 巻き込まれるケースも
2.法整備と現場の努力で 被害は減少傾向に
3.盗難リスクの増大で 保険料や免責額が上昇
4.求められる 盗ませない環境づくり

地域全体が犯罪の準備に
巻き込まれるケースも

2024年、茨城県ではおよそ2400件の被害があった(出典 YouTube茨城県警公式チャンネル )

警察庁によると、検挙された容疑者はカンボジア人を中心とする外国人が多く、複数台のワンボックス車で深夜に発電所へ侵入し、ケーブルを大量に積み込み短時間で逃走する手口が確認されている。犯行前の下見も周辺の店舗や宿泊施設を使っていることが多く、地域全体が犯罪の準備に巻き込まれるケースもみられた。

太陽光発電協会(JPEA)は、発電事業者へのアンケート調査を踏まえ、買受業者管理の強化や犯罪情報共有の仕組みづくりを国に求めてきた。金属ケーブル盗難は発電収入の損失にとどまらず、保険の不担保化や融資条件の厳格化を通じて再生可能エネルギーの普及そのものに大きな影響を及ぼす。こうした構造的なリスクも、警察庁が全国的な制度整備を急ぐ背景の一つとなった。

 

 

法整備と現場の努力で
被害は減少傾向に

2025年6月に成立した金属盗対策法(正式名称:盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律)は、買受業者管理、犯行用具規制、盗難防止情報の周知を三本柱としている。このうち、ケーブルカッターやボルトクリッパーの隠匿携帯禁止、犯罪情報の業界向け周知が同年9月に先行的に施行された。施行後には、警視庁で指定工具の隠匿携帯による検挙事例も報告され、制度が早くも現場で一定の抑止効果を示している。

法律で規制している工具の例(出典 YouTube茨城県警公式チャンネル )

金属盗対策法のなかで買受業者の営業届出義務や本人確認義務などの主要部分は、公布から1年以内に施行され、26年6月までに各都道府県で行政事務が本格化する見通しだ。警察庁はすでに都道府県警に対し、施行に向けた体制整備や事業者周知を進めるよう指示している。

自治体独自の取り組みも動き始めた。千葉県と茨城県では条例を改正し、許可制導入や立入検査、記録保存・本人確認義務などを強化している。茨城県警では、取扱い業者への指導の結果、本人確認不備があった業者に対して許可取消処分が行われ、換金ルートの可視化が急速に進みつつある。

法律や条例の施行と警察の取り締まり強化によって、金属ケーブルの盗難被害は減少しつつある。茨城県は金属盗難の件数が20年から5年連続で全国最多となっている。茨城県警のまとめでは、25年1月から10月までの金属盗認知件数は1509件(このうち太陽光発電施設は960件)と前年同期比で54%減少している。千葉県でも、金属盗認知件数が昨年に比べて減少傾向にあるという。

茨城県の金属盗難件数(出典 茨城県警察本部)

この背景には、発電事業者からのセキュリティ強化の依頼、買い取り業者による本人確認の徹底、重点地域でのパトロール強化に加え、警察が店舗や宿泊施設などの地域の事業者に通報協力を呼びかけたことがある。犯行グループが複数台の車で集合する特徴を周知したことで、地域からの通報が増え、検挙につながった事例もみられるようになった。JPEAも、警察や資源エネルギー庁のネットワークを通じて、週に数回の頻度で発電事業者に盗難情報を共有している。こうした業界団体の取り組みも、巡回やセキュリティ対策の強化を後押ししている。

盗難リスクの増大で
保険料や免責額が上昇

金属ケーブルの盗難件数は減少に向かっているものの、現場には重大な課題が残る。その一つが保険の引き受け制限だ。JPEAによると、ケーブル盗難については新規保険のほぼすべてが「盗難不担保」となり、既存契約も更新時に不担保化する例が急増しているという。さらに、盗難によって発生した復旧期間の発電量ロスを補償する保険も対象外となるケースが多い。

自然災害による設備被害が増えるなか、盗難リスクの増大は保険料や免責額の上昇を招いており、小規模案件では「保険が適用されないため建設できない」ケースも生じている。大型案件でも、金融機関が十分な保険加入を融資の条件としているため、事業者の負担は大きい。

JPEAは、金属盗難と自然災害を含む保険制度の見直しに向けて、大手保険会社や省庁と協議を進めている。25年10月には第3次タスクフォースを立ち上げたが、保険会社などとの調整に時間を要する見通しで、制度面の課題は解消されていない。

求められる
盗ませない環境づくり

盗難被害を防ぐには、事業者・行政・地域が一体となって対策を講じる必要がある。日本損害保険協会関東支部委員会は、関東地方で太陽光発電施設の金属ケーブル盗難が多発している状況を踏まえ、茨城・千葉・群馬・栃木の4県の県警と連携して注意喚起動画を制作した。動画では、センサーライトや警報器、AIカメラ、フェンス、ワイヤーセンサーといった複数の防犯手段を組み合わせた多重防犯の重要性を紹介し、事業者に対策強化を呼びかけている。こうした官民連携による啓発活動は、発電事業者側のリスク認識を高め、地域全体で盗難抑止の体制を整える動きにもつながっている。

特に銅線ケーブルに代わるアルミケーブルの導入は、換金価値が低いため効果的な対策の一つとされている。既設設備では管路改造の費用が課題となるが、盗難リスクを減らす効果は高い。しかし、アルミケーブルを敷設しているかどうかを犯罪者が認知しなければ、設備への侵入やケーブル切断を防ぐことができないという課題もある。

茨城・千葉・群馬・栃木では防犯対策動画を制作(出典 YouTube茨城県警公式チャンネル )

茨城・千葉・群馬・栃木の県警は、地域との連携も強化している。犯行グループは事前に必ず下見を行い、犯行後には盗んだケーブルを積んだ車で周辺に立ち寄ることが多いため、周辺施設の協力が検挙につながりやすい。警察が周辺施設に通報への協力を呼びかけた結果、不審車両の目撃通報から検挙につながったケースも報告されている。

太陽光発電所が地域インフラとして重要性を増すなか、ケーブル盗難は設備費用だけでなく、電力供給の安定に大きな影響を及ぼす。被害を完全に抑止するには、行政、事業者、地域が継続的に協力し合い、「盗ませない環境」を社会全体でつくり上げる取り組みが求められている。警察庁では、「ホームページなどの各種広報媒体を活用することによって、金属盗対策法をはじめとする関係法令の周知をしっかりと行い、金属盗の抑止および検挙に取り組んでまいりたい」と話している。

DATA

盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律

取材・文/森英信

 

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