東京電力エリアで初の出力制御、形骸化する「再エネの主力電源化」
2026/03/25
東京電力パワーグリッドは3月1日、管内の発電事業者を対象に再生可能エネルギーの出力制御を初めて実施した。新潟県の柏崎刈羽原子力発電所6号機の再稼働が、首都圏エリアの電力需給バランスに大きな影響を与えたとみられている。
東京電力エリアで
再エネ出力制御が頻発予想
出力制御の優先給電ルール(出典 経済産業省)
東京電力パワーグリッド(東電PG)が初めて実施した出力制御の実施期間は3月1日11時〜16時、再エネ余剰電力発生時刻は12時〜12時30分。再エネ出力制御量は184万kW、内訳はバイオマス発電が4万kW、太陽光・風力発電が181万kW(四捨五入のため合計出力は一致しない)。これにより日本全国で出力制御が実施されることになった。
出力制御は、自然エネルギーである太陽光発電や風力発電が気象条件により出力が大きくなった際に、系統を保護するため実施される。電気の発電量がエリア内の需要量を上回る場合には、まず火力発電の出力抑制、これに続いて揚水発電の汲み上げ運転による需要創出、地域間連系線を活用したほかのエリアへの送電が行われる。それでも発電量が多い場合、バイオマス発電の出力制御のあとに、太陽光、風力発電の出力制御を行うことと定めている。これに対して水力・原子力・地熱発電は「長期固定電源」として、最後に出力抑制される。
東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市・刈羽村)
東京電力の出力制御も、優先給電ルールに沿って実施されたので、法的に問題があるわけではない。出力制御の3週間前の2月9日に柏崎刈羽原発6号機が再稼働し、その7日後の16日に試験的な送電を開始している。そして、3月3日には出力が最大に達していた。3月1日の出力制御は柏崎刈羽原発6号機の定格出力135万6000kWを上回る規模となった。東電PGでは、3月1日は休日で電力需要が少なかったこともあり、出力制御の規模が大きくなったと説明している。これに続いて同社は3月7日にも87万kWの規模で出力制御を実施した。東京電力エリアでは、今後も大規模な出力制御が頻発することが予想される。
電力需給のイメージ(出典 経済産業省)
原発の再稼働で
出力制御が大規模に
出力制御の実施状況 上段:[年間制御電力量(kWh)]、下段:[年間総需要(kWh)](出典 経済産業省)
出力制御は、国内では九州電力エリアで最も早く実施された。九州電力エリアは地熱発電が多く、さらに風力・太陽光発電などの自然エネルギーも急速に普及している。それに加えて原子力発電も2015年の川内原発1号機(鹿児島県)に続き、2018年に玄海原発3号機、4号機(佐賀県)が再稼働した。この2018年に九州電力エリアにおいて国内で初めての出力制御が実施されている、それ以来、同エリアでは出力制御が徐々に拡大し、23年度には年間12億9000万kWhと過去最大規模の出力制御を行っている。ここ数年は、そのほかのエリアでも出力制御が拡大傾向にある。
出力制御の広がりは、再エネ電源の導入拡大の成果でもある。ただし、そこに原子力発電の稼働が絡んでくると、話はやや様相を変える。電力需要がさほど大きな変化をしていないなか、出力が大きく、変動への対応性の低い原子力発電が系統に入ると、その分、再エネの出力を制御することになり、再エネの導入も抑制されてしまう。
イラク攻撃で
日本の脆弱性が顕在化
主要国の一次エネルギー自給率 日本はG7で最低の15.3%(出典 経済産業省)
日本のエネルギー需給構造は極めて脆弱で、資源のほとんどを輸入に頼っているのが現状だ。米国とイスラエルによるイラン攻撃で、ホルムズ海峡が封鎖され、化石エネルギーを輸入に頼る日本の脆弱性を再認識させられたばかりである。いまこそ、国産エネルギーを拡大する必要がある。それに加えて、温室効果ガスの排出量を削減するため、脱炭素化を進めることも重要だ。
つまり日本のエネルギー資源は、①できる限り輸入に頼らない、②脱炭素電源である、③安価である、以上の3点が必須要件と筆者は考えている。原子力発電は脱炭素電源ではあるが、燃料を輸入に頼らざるを得ず、初期投資も維持更新費用も高くつく。そのうえ、日本の原子力発電所から発生する高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場は、具体的な場所が決まっておらず、最終的な処理・処分方法は確定していない。エネルギー分野の世界的学術誌である『Nature Energy』には、原子力発電を推進しても温室効果ガスの削減につながらないという分析結果をまとめた論文が掲載されている。
これに対して、風力・太陽光発電などの再エネは脱炭素電源であり、燃料輸入の必要がない。最近ではメガソーラーなどによって、太陽光発電が国内で最安の電源となっており、コスト面でも有利になっている。一方、火力発電は燃料を輸入に頼っているうえ脱炭素に逆行するため、当面はディスパッチ電源としての役割を果たしつつ、将来的には水素やアンモニア燃焼へと転換していくことにならざるを得ないと考えている。
原子燃料の資源量は100年程度しかなく、原発の世界的な拡大や地域紛争の頻発に伴って燃料価格は上昇しており、今後も値下がりは期待できない。仮に日本で核燃料サイクルを実現できたとしても、膨大なコストがかかるので、燃料価格の上昇を加速させるとの見方もある。以上のような状況を考慮すれば、日本としては再エネの最大限の活用が最適解であり、原子力発電も再エネを支援する形で運用すべきと考えている。原子力発電のために再エネの出力制御をするのは本末転倒と言える。
政府は第7次エネルギー基本計画で「再エネの主力電源化」を掲げているが、実際には原発を優先させ、再エネの導入拡大を妨げるような政策を展開している。日本の将来のエネルギー構造を真剣に考えるのであれば、再エネ100%を目標として掲げ、そこからバックキャストでエネルギー政策を再構築していくことが望ましい。
今後は送電ネットワークの統合で変動性を緩和する一方、再エネとディスパッチ電源という電源構成への転換を進めるべきだ。そのうえで、余剰再エネによる水素製造・流通ネットワークの構築を目指してほしい。政府の「再エネの主力電源化目標」を形骸化させてはならない。
DATA
東京電力パワーグリッド 再生可能エネルギー出力制御の実施について
取材・文/宗 敦司










