政策・制度

環境省 脱炭素先行地域の募集終了、コスト増大や地元合意の難航などが課題

環境省は2月13日、「脱炭素先行地域」の第7回選考結果を発表した。これまでに102件が選定されたことから、2025年度で募集を終了する。しかし、予期せぬコストの増大や地元合意の難航などによって、全体の半数の地域で計画の遅延がみられる。

<目次>
1.これまでに102件を選定 2025年度で募集終了
2.5県で初めての地域選定 多くの企業や団体が参画
3.官民連携で 地域共生型再エネを推進
4.コストや人材不足が課題 全体の半数で計画遅延

これまでに102件を選定
2025年度で募集終了


これまでに選定された脱炭素先行地域(出典 環境省)

脱炭素先行地域は、政府目標である2050年までの温室効果ガス(GHG)排出量実質ゼロに先行して、2030年までに脱炭素化の実現を目指すモデル地域を選定する事業だ。選定された地域は、太陽光発電・風力発電・バイオマス発電などの再生可能エネルギーの導入や、建物の断熱化などの省エネ事業を推進する。環境省は最大50億円を上限として、事業推進に必要な費用の3分の2を補助する。

環境省は2月13日、脱炭素先行地域の第7回選考結果を発表した。今回は39の自治体から18件の提案があり、青森県中泊町や茨城県笠間市などの12件が選定された。2022年度にスタートした脱炭素先行地域は、今回を含めて133市町村の計102件(うち3件が撤退)が選定されている。

環境省の石原宏高大臣は2月13日の会見で、「これにより少なくとも100地域を選定するという目標を達成しました。選定に至らなかった提案を含め、これまでに意欲的な提案をしてくださった地方公共団体のみなさまに改めて感謝を申し上げたいと思います。100地域以上の選定という1つの区切りを迎えたため、今回で募集を終了します」と述べた。

5県で初めての地域選定
多くの企業や団体が参画


第7回脱炭素先行地域の選定結果(出典 環境省)

今回の地域選定では、これまで脱炭素先行地域がなかった7都県のうち、石川、和歌山、徳島、大分、香川の5県において初めての選定があった。今回選定された12件は、自治体と連携して多くの地元企業・団体などが参画しているのが特徴だ。脱炭素先行地域は、第3回の公募以降、地方公共団体だけでなく、民間事業者などとの共同提案が必須となっている。

香川県高松市では、高齢化などから維持管理が課題となっているため池へ太陽光発電設備を導入し、ため池と発電設備の保全管理を一体的に運用するスキームの組成や売電収益の還元を通して、地域ニーズに沿った再エネの活用方法の確立を目指す。共同提案者として地域の金融機関、電力・ガス会社、JRなどの企業のほか、大学や観光団体、公益法人など計23団体が参画している。


高松市の提案概要(出典 環境省)

自治体が主導して、地元の企業・団体などが数多く加わることで、地域全体で脱炭素を推進する体制を構築している。これには、再エネ導入への反発を極力減らそうとする意向も加わっているものとみられている。

これまでに選定された脱炭素先行地域のなかには、地域での合意形成が進まず、計画の進行が遅延している地域も少なくない。できる限り地域全体を巻き込み、合意形成を進めてから、選定後に円滑な計画推進を図るというのは、有効な手法といえる。

官民連携で
地域共生型再エネを推進


青森県中泊町の提案概要(出典 環境省)

青森県中泊町では、地域特性を活用した国産の中型風力発電設備を導入し、地域エネルギー会社を通じた再エネ電力の供給と収益の還元により、基幹産業である漁業振興を通じた小泊漁港周辺エリアの持続可能性の向上を図る。


千葉県銚子市の提案概要(出典 環境省)

千葉県銚子市では、風況に恵まれた地域特性を背景に、風力発電のノウハウを有する大手事業者と地元事業者・地域金融機関が連携して発電事業会社を設立し、大型の陸上風力発電を導入する。発電事業で得た電力・収益で基幹産業の水産業を支援するため、冷凍・冷蔵施設の冷熱需要を制御する仕組みを構築する。変動性のある風力発電の効率的運用(変動リスク低減)とエネルギーコスト低減を実現するなど、漁獲・保管・加工・販売の各段階で脱炭素化と持続可能性を高める取り組みを漁協や水産加工協同組合の関係者と連携して推進する。さらに、陸上・洋上風力発電事業の地域展開を通じて、風力関連産業の創出・拡大や人材育成を進め、漁業・水産加工中心から新たな産業モデルへの転換を図る。

京都府福知山市では、市民の参加・理解を促す市民出資型オフサイト太陽光を養豚団地跡地に設置するとともに、営農者のニーズを踏まえた角度可変型営農型太陽光を導入するなど、地域の理解を得ながら再エネ導入を推進する地域共生型再エネを促進するモデルを示す。

熊本県荒尾市では、「地域再生エリアマネジメント負担金制度」(内閣府)を活用し、脱炭素×まちづくりの新たなスキームを構築する。そのうえで、地域エネルギー会社の収益も活用し活動費を拡大するなどして、エリアの魅力向上につながる取り組みを官民連携で推進する。

コストや人材不足が課題
全体の半数で計画遅延


地域脱炭素推進交付金の概要(出典 環境省)

脱炭素先行地域からは、これまでに3件が辞退・撤退している。採算性の悪化や送電線接続費用の増大、地元合意の難航などが主な要因だ。事業の仕組みが複雑であることも、要因のひとつと指摘されている。想定以上に脱炭素の関連費用がかさむことや、地域での合意形成に時間がかかることは選定された地域全体の課題であり、全体の半数の地域で計画の遅延がみられる。

脱炭素事業を進めるにあたっての最大の課題は、再エネ設備(太陽光・風力・蓄電池)や熱利用設備への初期投資が大きいことだ。補助金に依存していては、自立的な収益モデル(PPA・地域電力など)を確立しにくい。さらに地域内での電力需要が小さい場合、スケールメリットが出にくいことも課題のひとつだ。自治体の人材・ノウハウ不足を補うため、コンサルタント会社などに依存すると、地域に知見が蓄積しにくいという問題点も指摘されている。

また、メガソーラーや風力発電への反発から、地域住民の合意を得られないケースも目立つ。そのうえ、地域への利益還元が明確でない事業もある。脱炭素事業を順調に進めている地域をみると、公共施設や大口需要家などの電力需要を核とした事業設計になっていること、地域新電力や特別目的会社(SPC)が十分に機能しFIT制度に依存していないこと、地域への利益還元が明確で合意を得やすい仕組みになっていることが成功の要因として挙げられている。

石原環境相は「すでに取り組みを進めている脱炭素先行地域のなかには、脱炭素の取り組みを地域課題の解決と両立させ、地域の活性化につながっている事例も出てきています。今後は、脱炭素先行地域での取り組みの実現に向けて注力していくとともに、その成果を全国へ横展開し、地域脱炭素の取り組みをさらに推し進めてまいりたいと思います」と話している。
環境省は今後も選定した地域への支援を継続するとともに、地域の脱炭素化を推進する新たな事業を検討する考えだ。

DATA

環境省 脱炭素地域づくり支援サイト

取材・文/宗 敦司

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