営農型太陽光の制度見直し案を了承、「市町村特例」で地域共生の道へ
2026/04/24
農林水産省の有識者会議は4月15日、営農型太陽光発電の制度見直し案を了承した。新制度では形だけの営農を厳格に排除する一方、地域の主体性を尊重する「市町村特例」を導入する。
1.地域主導の農業振興を後押しする 「市町村特例」の役割
2.営農の継続性を確保するための 「望ましい姿」の具体化
3.不適切事案への厳格な対応と 監視体制の強化
4.農業経営の改善と カーボンニュートラルへの貢献
5.持続可能な地域農業の 発展に向けた制度の活
地域主導の農業振興を後押しする
「市町村特例」の役割

望ましい営農型太陽光発電に関する検討会 資料(出典 農林水産省)
今回の制度見直しにおいて、最大の焦点となったのが農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本方針の改定案に盛り込まれた「市町村特例」である。これは、国が一律に定める基準を基本としつつも、市町村が自らの「基本計画」において、地域の特性に応じた独自の基準や運用を定めることができる仕組みである。
農林水産省の説明資料によると、この特例は、市町村が地域の農業振興の方針に基づき、特定の品目や栽培手法が地域活性化に資すると判断した場合に適用される。例えば、公的機関による複数年の試験栽培結果から、遮光環境下でも適切な営農が継続できるという科学的根拠が示された場合、遮光率や設備の高さといった数値基準に柔軟性を持たせることが可能となる。これにより、一律の規制では対応しきれなかった地域固有の農業モデルや、最新技術を用いた先駆的な取り組みが阻害されることなく、地域主導で推進される環境が整う。
検討会では委員から、地域の意欲的な取り組みを後押しする重要性が指摘されてきた。市町村特例は、単なる規制緩和ではなく、市町村が主体となって「どのような農業を目指すのか」を明確にし、それに合致する発電事業を認定するという、地域共生型の仕組みを形にしたものである。
営農の継続性を確保するための
「望ましい姿」の具体化

望ましい営農型太陽光発電に関する検討会 資料(出典 農林水産省)
今回の制度見直しの背景には、2025年12月に政府が策定した「大規模太陽光発電事業に関する対策パッケージ」がある。ここでは、地域との共生が再エネ導入の大前提とされており、農林水産省は「営農型太陽光発電の望ましい姿」を明確にする必要があった。
制度見直し案では、適切な営農の継続を担保するため、設備下での農作物の収量が地域の平均的な単収と比較して「概ね2割以上減少するおそれがないこと」を求めている。また、設備の形状についても具体的な基準が示された。パネルによる遮光率は原則30%未満とし、遮光率での判断が難しい垂直設置型などの設備については、日射量の減少を20%未満に抑えることを条件とした。さらに、農業機械の円滑な利用を確保するため、設備の最低地上高を概ね3m以上、支柱の間隔を概ね4m以上と定めている。

望ましい営農型太陽光発電に関する検討会 資料(出典 農林水産省)
営農者に対しても、地域計画において将来の農業の担い手として位置付けられていることや、一定の生産・販売実績を有していることなど、農業経営を安定的かつ継続的に行う能力を厳格に問う。これは、売電収益のみを目的とした「名目上の営農」を防ぎ、真に農業経営の改善に意欲的な農業者を保護するための措置である。
不適切事案への厳格な対応と
監視体制の強化

新たな制度の手続きフロー(出典 農林水産省)
新しい制度では、適正な運用を確保するための取り締まりも大幅に強化される。農林水産省は、都道府県と一体となって現地調査を行う対象を、これまでの「4ヘクタール超」から、大規模な事業にあたる「2ヘクタール超」へ広げた。国の関与を強めることで、全国的な運用の統一を図り、指導のばらつきを抑える狙いがある。
さらに、勧告や命令を出す際の判断基準も具体化された。営農実績報告書の未提出や、2年以上継続して収量要件を大幅に下回っている場合、また営農計画通りの収穫が行われていない場合には、厳格な行政指導が行われる。改善が見られない悪質なケースに対しては、再許可の不許可だけでなく、固定価格買取制度(FIT)の支払い停止や、最終的には設備の撤去命令といった厳しい措置が取られることになる。
最新の監視手法として、人工衛星データを活用した営農実態の把握も検討されている。こうしたハード・ソフト両面での監視体制の構築は、一部の不適切な事例が営農型太陽光発電全体の信頼を損なう事態を防ぎ、健全な市場環境を維持するために不可欠なステップであるといえる。
農業経営の改善と
カーボンニュートラルへの貢献
今回の制度見直しは、規制の側面ばかりが注目されがちだが、その本質は「農業を主役としたエネルギー活用」の推進にある。適切な営農型太陽光発電は、作物の販売収入に加えて、発電した電力の自家利用によるコスト削減や、売電収入による経営の多角化を可能にする。
検討会の議論では、遮光環境でも生育が安定する米、麦、大豆などの主要品目だけでなく、新たな品目への期待も寄せられた。例えば、さつまいもの栽培において、発電した電気を貯蔵庫の温度管理やキュアリング(熟成)に活用することで、エネルギーの地産地消と高付加価値化を同時に実現するモデルなどが提案されている。農業が単にエネルギーを消費するだけでなく、自ら創出したエネルギーを経営に活かすことで、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献する産業へと進化する道筋が見えてくる。
持続可能な地域農業の
発展に向けた制度の活用
農林水産省は今後、パブリックコメントを経て、今夏にも関連規定などを改正。経過措置を設けたうえで早ければ年内に新制度に移行する。既存の事業者に対しても、予見可能性を考慮した一定の猶予期間や丁寧な周知が行われる見通しだ。
営農型太陽光発電が「農地の一時転用」という特例的な措置であるという原則は変わらないが、今回の「市町村特例」の導入は、地域が主導権を握ることで、規制と普及のバランスを最適化しようとする試みである。農業者、発電事業者、そして自治体が連携し、地域計画に即した形でこの制度を活用していくことが求められる。
新しい制度の策定により、営農型太陽光発電は「単なる空きスペースの活用」から、「農業経営を強化し地域を守るための戦略的な手段」へと位置づけが昇華された。この制度見直しを機に、地域に根ざした健全な再エネ事業が広がり、日本の農業がより強固で持続可能なものへと発展していくことが期待される。
DATA
取材・文:ソーラージャーナル編集部






