政策・制度

ホルムズ危機が暴いた50年の怠慢!? 日本のエネルギー転換は待ったなし

ホルムズ海峡の封鎖が世界を揺るがすなか、日本が半世紀も放置してきた海外エネルギー依存の構造的欠陥が一気に可視化されつつある。 危機を「技術転換の好機」と捉え、再エネ・蓄電池・EVへと舵を切る世界の流れに対し、日本が直面している課題と進むべきとは。

<目次>
1.危機の本質を見極めよ。その影響は多岐にわたる。
2.危機は産業を組み替える 次の主役はどこか?
3.コストは逆転している―― 再エネという不可逆な流れ
4.日本は自ら署名した なぜ国内で語られないのか

 

危機の本質を見極めよ。
その影響は多岐にわたる。

ホルムズ海峡の封鎖が世界を揺るがすなか、日本政府の危機感は各国の対応と明らかに乖離している。 欧州各国やオーストラリアがエネルギーの利用制限を議論しているのに対し、日本は平常モードのまま危機対応をしていない。 それ自体が最大の危機である。

影響はガソリンに留まらない。 電気料金の上昇はもちろん、手袋や輸血バックなど医療用プラスチック、半導体製造プロセスへの影響、化学肥料を介した食糧生産など、負の連鎖は産業・生活の全域に及ぶ。 日本が半世紀も放置してきた海外エネルギー依存の構造的欠陥が、今この瞬間に一気に可視化されつつある。

問題の根は深い。 第一次石油危機を経験し「脱石油」を掲げたはずの日本が、半世紀を経て中東への依存度をむしろ高めてきた。 低下し続ける食糧自給率とともに、安全保障の最重要問題を改善できない「日本権力構造の最大の謎」である。
 

危機は産業を組み替える
次の主役はどこか?


歴史を振り返れば、危機はつねに産業構造の組み替えを促してきた。 1973年の第一次石油ショック後、日本の自動車メーカーは低燃費技術の開発に全力を注ぎ、燃費の悪い大型車に依存していた米国メーカーを制した。 危機をいち早く「技術転換の好機」と捉えた者が、次の時代の覇者になる。 この法則は今回も変わらない。

では、今回の危機における勝者はどこか。 明らかにEVと再エネ・蓄電池である。ホルムズ危機後、世界各国でEV販売店への問合せ・来店・予約が爆発的に増加し、中古車を含むEV販売が急増する兆しだ。 例えば豪州のEV販売は3月に前月比4割増・前年同月比9割増となった。この勢いは今後、世界中で加速するだろう。

日本は、その波にまったく乗れていない。国内のEV普及率は依然として主要先進国の中で最低水準に近く、再エネへの投資額でも中国・欧州・米国に大きく水をあけられているだけでなく、逆に市場が唯一縮小している。太陽光発電に対するバッシング的な議論が進むなか、世界は次の時代の産業地図を描き直している。
 

コストは逆転している
再エネという不可逆な流れ

半世紀前の石油危機と決定的に違う点がある。 今や確かなソリューションが存在し、しかもそれが最も安いという事実だ。 太陽光のコストはこの10年で10分の1、蓄電池は過去30年で100分の1になった。 太陽光と蓄電池を組み合わせれば、天然ガスのピーク火力と同等かそれ以下のコストで、需給調整可能な電源として成立する。 再エネへの転換は、経済的にも最も合理的な選択であるだけでなく、ホルムズ危機に対するもっとも素早い対応策なのだ。

これまで日本は、化石燃料の輸入により、年間20兆円以上を海外に流出させてきた。 対して、太陽光は純粋な国産エネルギーだ。 太陽光であれば地産地消が可能であり、CO2を排出せず、大気を汚染せず、放射性廃棄物も生まない。 個人にとっても、地域にとっても、国家にとっても、再エネを最優先しない合理的な理由は、もはやどこにもないのである。
 

日本は自ら署名した
なぜ国内で語られないのか

2023年12月のCOP28 (ドバイ)で、日本を含む120ヶ国以上が「UAEコンセンサス」に合意した。 2030年までに世界の再エネ設備を3倍にするという国際目標だ。 翌2024年のCOP29 (バクー)では、蓄電池容量を約6倍にする目標にも合意している。 ところが日本では、この「UAEコンセンサス」という言葉がほとんど知られていない。 政府もマスコミもほぼ取り上げないからだ。 自ら調印しながら国内で語らないという事実が、今の国の姿勢を示している。

ホルムズ危機は、エネルギー自給の重要性をあらためて突きつけた。 再エネ・蓄電池・EVへの転換は、もはや待ったなし。 安全保障の面からはもちろん、技術的にも、コスト的にも、再エネは最も合理的で迅速な現実解なのである。
 

PROFILE

NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP)
所長

飯田哲也氏


自然エネルギー政策の革新と実践における国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利団体である環境エネルギー政策研究所所長。
X:@iidatetsunari


取材・文/廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.57(2026年春号)より転載

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