政策・制度

我が社に合う、非化石転換ソリューションの選び方 〜省エネ・非化石転換法でSクラス獲得するために〜

非化石転換の実現には、多様な設備や調達手法の中から自社に最適な組み合わせを選ぶことが重要だ。主要なソリューションの特徴と活用の考え方を概観する。

 

<目次>
1.非化石転換を進めるために いま何を導入すべきか
2.太陽光発電(屋根設置)
3.太陽光発電(地上設置)
4.ソーラーカーポート
5.産業用蓄電池
6.コーポレートPPA
7.コージェネレーション設備
8.エネルギーマネジメントシステム
9.電力会社・電力プランの切り替え
10.証書(非化石証書等)の活用

 

非化石転換を進めるために
いま何を導入すべきか

 


非化石転換ソリューションのポジショニングマップ (イメージ)

ひとくちに非化石転換と言っても、そのためのソリューションは多岐にわたる。自ら再生可能エネルギーを創り出す方法もあれば、調達スキームを見直す方法もある。設備を自社で保有する方法もあれば、外部事業者のサービスを活用する方法もある。重要なのは、個々の設備や制度を個別に捉えるのではなく、それぞれがどのような役割を担うのかを理解することだ。

本稿では、非化石転換に寄与する燃料・熱・電気のうち、どの事業者にとっても比重の大きい「電気」に関することを中心に、制度上の評価の仕組みと結びつけながら整理する。

 

太陽光発電(屋根設置)

非化石電気の使用割合を高める手段として最も直接的なのが太陽光発電設備の導入である。太陽光発電設備による自家発電は、評価上の「重み付け非化石」という扱いを受けることができる。非化石エネルギー使用状況の算定において、その使用量を1.2倍して計算するというもので、同じ発電量・使用量でも、評価上は通常の非化石電気より大きくカウントされる仕組みだ。

屋根設置太陽光の報告ルールは本稿冒頭でみたとおりだが、導入を検討する段階から、報告フォーマット(耐震基準・積載荷重・1建屋あたりの屋根面積という3軸)に沿って自社の建屋を棟ごとに分類し、設置可能エリアを早期に特定しておくと、中長期計画書に記載する導入目標の精度も上がる。

 

太陽光発電(地上設置)

評価上の扱いは屋根設置と変わらない。

一方で、実務上の制約は屋根設置とは性質が異なる。屋根設置が耐震基準・積載荷重・屋根形状といった建屋側の条件に左右されるのに対し、地上設置では土地の確保・造成、地目(農地の場合は農地転用の要否)、都市計画法・建築基準法上の規制など、土地側の条件が導入の可否を左右する。その代わり、屋根のような構造上の出力制約を受けにくいため、遊休地の規模次第では屋根設置よりも大きな容量を確保できる。

 

ソーラーカーポート

工場・事業場の駐車場スペースに太陽光パネルを設置するソーラーカーポートは、屋根置き太陽光と並ぶ、もう一つの自家発電の選択肢だ。

ソーラーカーポートの利点は、屋根設置太陽光が直面しがちな制約(耐震基準や積載荷重、屋根形状といった建屋側の条件)を受けにくく、地上設置型のように新たに土地を確保する必要もないところにある。

敷地内の土地や建屋に太陽光発電設備の設置が難しい場合、駐車場は見逃せない選択肢となる。

 

産業用蓄電池

蓄電池は、「電気の需要の最適化」の評価軸で重要な役割を果たす。蓄電池単体でも、ピークカットによる電気代削減やBCP対策などに効果的だが、非化石転換の観点からは太陽光発電と組み合わせて導入したい。

余剰電力を蓄電池に蓄えておけるので、太陽光で発電した電気をより多く自家消費に活かすことができ、結果として非化石比率を高めることに結びつく。さらに、出力制御時間帯に発電した電気を蓄え、需給逼迫時に放出するといった運用をとおして、電力系統の安定化に貢献することもできる。加えて、卸電力市場や需給調整市場での運用が可能になるなど、新たな収益も期待できる。

 

コーポレートPPA

自社で発電設備を所有せず、発電事業者と契約して電気や環境価値を調達するコーポレートPPA(Power Purchase Agreement: 電力購入契約)は、初期投資を抑えながら非化石電気の使用割合を高める手法として広まっている。
制度上・実務上、大きく3つの形態に分かれる。

 
①オンサイトPPA
自社敷地内(オンサイト)に発電事業者が発電設備を設置し、そこから直接受電する形態。今回新たに報告義務対象となった「屋根設置太陽光発電設備」をこのスキームを使って導入するケースも増えている。

②オフサイトPPA
需要地(工場等)の敷地外(オフサイト)の特定の発電設備から、系統や自営線を経由して受電する形態。省エネ・非化石転換法上の扱いは、FIT/FIP認定の有無、自己託送か系統経由かによって異なる。

③バーチャルPPA
電力の物理的な受電を伴わず、環境価値(非化石証書等)のみを長期契約で取得する形態。同法の報告方法については、契約内容を証書等に関する規定と照らして確認する必要がある。

なお、PPAの対象は太陽光発電に限らない。近年は、太陽光発電設備と蓄電池をセットで提供し、需要家の電力使用パターンに応じて放充電を制御するタイプのPPAサービスも登場している。
この場合、評価上は電気そのものの非化石区分と、蓄電池の運用による電気需要の最適化への寄与とを、それぞれ切り分けて捉える必要がある。

 

コージェネレーション設備

熱と電気を同時に取り出すコージェネレーション設備も、非化石転換に向けた主要ソリューションの一つだ。コージェネレーション設備は、①エネルギーの使用の合理化、②非化石エネルギーへの転換、③電気の需要の最適化という、省エネ・非化石転換法の3つの評価軸に関係する。

ただし、コージェネレーション設備の導入自体が、自動的に非化石比率を引き上げるわけではない。評価を左右するのは、投入するエネルギーの中身である。都市ガス等の化石燃料を用いるコージェネレーションは、省エネの評価軸には寄与するが、非化石転換の評価軸には寄与しない。非化石燃料を投入して初めて、非化石転換の評価軸にも効いてくる。

 

エネルギーマネジメントシステム

同法の判断基準として、事務所についてはBEMS、工場等についてはFEMSの導入・検討が掲げられている(総称してEMS: エネルギーマネジメントシステム)。EMSの本質的な価値は、エネルギー使用を最適化するとともに、「計測・記録」を自動化・見える化するとこにある。

定期報告書にもこれを報告する欄があり、EMSの導入はこれらの実施状況を客観的に把握する土台となる。あわせて、エネルギー消費原単位の年平均1%低減という努力目標に向けた具体的な改善余地の発見にもつながる。

 

電力会社・電力プランの切り替え

定期報告書には「熱・電気供給事業者から購入した熱・電気の種別及び非化石割合に係る情報」という報告欄があり、契約している電力メニューごとに使用量と非化石割合を記載することになっている。

電力小売事業者が提供する非化石比率の高いメニュー(再エネ由来メニュー、非化石証書付帯メニュー等)に切り替えれば、追加の設備投資なしに、この欄に記載する非化石割合の数値を引き上げられる。

コーポレートPPAのように特定の発電設備と紐づいた長期契約を結ぶ必要がなく、契約更改のタイミングで比較的柔軟にメニューを見直せる点が特徴だ。

証書(非化石証書等)の活用

非化石証書、グリーン電力証書、再エネ電力由来の国内クレジット(クレジット)などを購入することで、それら証書の非化石エネルギー量を「非化石エネルギー使用状況」に反映させることができる。証書等は設備投資を伴わないため即効性があるが、毎年度の購入コストが発生し続ける。

 

DATA

取材・文/廣町公則

【GX JOURNAL vol.1】より転載



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