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「ペロブスカイト」と相性の良い「蓄電システム」とは? 沖縄発「創蓄トレーラーハウス」に先進の実装事例をみた!

ペロブスカイト太陽電池と蓄電システムには“相性”があるという。ペロブスカイトを使って、創蓄連携・自家消費型太陽光発電システムを構築するためには、何を基準に蓄電池を選べば良いのか? 沖縄で公開された創蓄トレーラーハウスに、ファーウェイの住宅用ハイブリッド蓄電システムが採用された理由とは?

 

<目次>
1.ペロブスカイト太陽電池と蓄電システムを搭載した動く家
2.悪天候の多い沖縄に最適!弱い日差しでも発電できる
3.ペロブスカイトは電圧が高い!ファーウェイの蓄電システムなら好相性
4.多様な用途と拡がる可能性 課題解決に向けて環境省も期待
5.自立運転を極めたファーウェイの最新ハイブリッド蓄電システム

 

ペロブスカイト太陽電池と
蓄電システムを搭載した動く家

ペロブスカイト太陽電池と蓄電池を搭載した「創蓄トレーラーハウス」が、沖縄で誕生した。2024年10月25日~27日に那覇市で開催された「沖縄の産業まつり」において、その実機が初披露された。従来型のシリコン系太陽電池ではなく、ペロブスカイト太陽電池を使ってこのシステムを構築し、一般向けに商品化した例は、これまで国内には見当たらなかった。

企画・開発したのは、沖縄を中心に太陽光発電設備や省エネ機器のプロデュースを行ってきた沖華産業。同社は昨年、貨物輸送などに用いられる20フィートコンテナに太陽光発電と蓄電池を装備した「発電コンテナハウス」を発売し、全国的な注目を浴びた地元企業だ。

創蓄トレーラーハウスは、いわばその進化形であり、他に先駆けてペロブスカイト太陽電池を実装したことで、より大きな関心を集めている。今年は、同トレーラーハウスの販売を専門に手掛ける会社・フォーフューチャーが設立され、国内外に展開していく体制も整えられた。

ペロブスカイト太陽電池は、軽くて、薄く、柔軟性があり、半透明にすることもできるなど、従来のシリコン系太陽電池にはない特長を有している。そのため、これまでは難しかったビルの壁やガラス面、耐荷重の低い屋根や局面にも設置することが可能だ。太陽光発電のさらなる導入拡大が求められる一方で、新たな設置場所の確保が難しくなっていく状況にあって、ペロブスカイト太陽電池への期待は大きい。

窓ガラスの代わり設置できるガラス型ペロブスカイト太陽電池。透過度を変えることで多様なデザインが可能。

 

悪天候の多い沖縄に最適!
弱い日差しでも発電できる

とはいえ、未だほとんどが実証段階にあるなか、沖華産業は、なぜいち早くペロブスカイト太陽電池の実装に踏み切ったのか。そして、創蓄連携による自家消費型システムを構築するにあたり、ペロブスカイトならではの難しさはなかったのか。沖華産業会長の中村英樹氏に聞いた。

株式会社沖華産業 会長 中村英樹氏

「ペロブスカイト太陽電池は、シリコン系太陽電池に比べて光の吸収率が高く、弱い日差しでも発電します。そのため、早朝や夕方、曇りや雨の日でも、思いのほか大きな発電量を得ることができます。最大出力では、まだシリコン系太陽電池に及ばないにしても、実環境下での累積発電量では、すでにペロブスカイト太陽電池の方が優っています。台風が多く、悪天候が続くことの少なくない沖縄にとっては、こうした発電能力の高さこそが重要なのです。

沖縄の課題解決に向けて、ペロブスカイト太陽電池は大きな役割を担っていくことになるでしょう。私たちは、その普及に先鞭をつけるべく、今回のトレーラーハウスの開発に取り組んできました」(中村氏)。

10月25日は雨のち曇りだったが、晴れていた26日と比べて、発電量に極端な減少はなかった。

 

ペロブスカイトは電圧が高い!
ファーウェイの蓄電システムなら好相性

創蓄トレーラーハウスには、ペロブスカイト太陽電池とともに、蓄電容量10kWhのファーウェイ製ハイブリッド蓄電システムが設置されている。中村氏は、ペロブスカイト太陽電池と蓄電池のマッチングにはシリコン系太陽電池の場合とは異なる難しさがあるとして、蓄電池選定にあたってのポイントを話す。

「シリコン系太陽電池と比較した場合、ペロブスカイト太陽電池には、電圧が高いという特性があります。これは同じ光強度であっても、より多くの電力を生成できるということであり、ペロブスカイト太陽電池のポテンシャルともなっています。

しかし、パワーコンディショナを含む蓄電システムは、従来のシリコン系太陽電池との連携を前提に設計されているため、ペロブスカイト太陽電池の高電圧には上手くフィットせず、効率が悪くなってしまうケースが少なくないのです。それでは、わざわざペロブスカイト太陽電池にする意味がなくなってしまいます。この電圧への対応力こそが、蓄電システム選びの最大のポイントだといえるでしょう。

パワコン・蓄電池メーカー各社とも、ペロブスカイト太陽電池との相性に関するデータは公表していません。そこで弊社では、国内外いろいろなメーカーの蓄電システムを実際に導入して、1年以上にわたり実証試験を重ねてきました。その結果として、もっとも相性が良かったのがファーウェイの蓄電システムだったのです」(中村氏)。

トレーラーハウスに設置されたファーウェイのハイブリッド蓄電システム。

なお、沖華産業では、昨年発売した発電コンテナハウスでもファーウェイ製ハイブリッド蓄電システムを採用しており、そこでの運用実績も今回の選定の判断材料になった。故障など導入後のトラブルが一切なく、ユーザーからの評価も極めて高いものだったという。

発電出力、蓄電容量、トレーラーハウスのサイズ、付帯設備ともに、用途に応じて変更することができる。

 

 

多様な用途と拡がる可能性
課題解決に向けて環境省も期待

この日、産業まつりを視察し、創蓄トレーラーハウスを訪ねた環境省 沖縄奄美自然環境事務所 地域脱炭素創生室の川崎浩明 室長補佐は、次のように述べている。

「ペロブスカイト太陽電池が、全国に先駆けて、実用化に向けて動き出したということで注目している。離島をはじめ、停電が長引くことも多い沖縄にあって、蓄電池とセットになった自家消費型太陽光発電システムへの期待は大きい」(川崎氏)。

会期中、創蓄トレーラーハウスには、沖縄はもちろん、日本各地から見学者が訪れた。すでに民泊用の施設として活用したいというオーダーもあるという。たしかに、その洗練されたデザインと機能は、観光客向けの宿泊施設としても違和感がないだろう。

このトレーラーハウスなら、ユーザーそれぞれの用途に合わせて、様々なスタイルで活用することが可能だ。沖華産業では、コロナ禍の経験を踏まえて、感染症対策用の診察室として運用することも提案している。

トレーラーハウス内部。感染対策用の診察室としても使えるようにダイニングキッチン、シャワー・トイレ、寝室が明確に区分けされている。キッチンの天井には開閉式の窓があり、明るく洗練された雰囲気を醸し出している。

 
同社は今後、創蓄トレーラーハウスを通して“ペロブスカイト太陽電池+蓄電池”の魅力を広め、あわせて各種建物にも同システムの導入を進めていきたい考えだ。建物に関しては、現在3つの病院で、ペロブスカイト太陽電池とファーウェイのハイブリッド蓄電システムの導入計画が進められているという。

自立運転を極めたファーウェイの
最新ハイブリッド蓄電システム

ここで採用予定のハイブリッド蓄電システムは、住宅用の最新バージョン。高性能な新スマートパワーコンディショナ「SUN5000-4.95K-LB0-NH」を核に、スマートストリング蓄電池「LUNA2000-5/10/15-NHS0」やスマート管理アプリ「Fusion Solar」が連携する。

スマートパワーコンディショナは、業界トップクラスの最大変換効率97.5%を実現。大容量の過積載充電機能を備えており、一般的なパワーコンディショナではピークカットが発生するような状況でも、発電した電力を無駄なく蓄電池に充電することができる。同パワーコンディショナの定格出力は4.95kWだが、日本国内では住宅用初となる自立運転時の並列運転にも対応しており、2台並列最大9.9kWの運用ができる。

スマートストリング蓄電池は、1機5kWhの電池パックを連結させることで拡張が可能。スマートパワーコンディショナ1台あたり、5kWhから30kWh(15kWh×2)の蓄電システムを任意に構成することができる。電池パックごとに独立したBMU(Battery Management Unit/バッテリー管理ユニット)を搭載することで、最適化した充放電制御を実現。分散制御により故障時のリスクを低減するとともに、電池パック本来のポテンシャルを最大限に引き出すことを可能にしている。

現在の発電量や蓄電池残量・充放電量のチェック、過去の履歴確認、蓄電池の設定変更などは、Fusion Solarアプリを使って建物の中からでも外からでもスマートフォンやPCで簡単に行なうことができる。さらに。AIエネルギー管理サービス「EMMA(エマ)」により、発電量と消費電力の予測を実施。その予測と機器構成、蓄電池残量などをもとに、充放電のスケジュールを自動生成し、つねに最適な自動運転を行うことも可能だ。

 

加えて、新バージョンは、これまで外付けされていたデータ収集装置「スマートロガー」をパワーコンディショナ本体に組み込むなど、より場所を取らず、より簡単に設置できるものとなっている。

卓越した性能に加え、施工性も着実に向上し続けているというファーウェイ製ハイブリッド蓄電システム。中村氏は、改めて、「ペロブスカイト太陽電池を使って自家消費ソリューションを構築していくためには、ペロブスカイトと相性の良い、こうしたハイブリッド蓄電システムの存在が不可欠なのです」と強調する。そして、今後展開する各種ソリューションを通して、引き続き実証を続け、その成果をひろく社会に活かしていきたいと話す。

沖華産業のビジョンとファーウェイの技術力が融合し、ついに日の目を見ることとなった創蓄トレーラーハウス。この取り組みは、ペロブスカイト太陽電池の早期社会実装に向けて、確かな試金石となるだろう。この先、太陽光発電の可能性はどこまで拡がるのか──沖縄発の挑戦から、しばらくは目が離せそうにない。

問い合わせ先

株式会社 沖華産業
沖縄県那覇市安謝264-3
Tel:098-988-1899


 

取材・文・写真/廣町公則

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