安全・安心でダウンタイムのない発電所のために。気象情報と稼働状況をAIが予測し一次対応を軽減
2025/06/02

発電のダウンタイムを避けるため、発電事業者やメンテナンス事業者がすべきこととは? 次世代型の遠隔監視システム「Nobest IoT」を開発した、環境系ITスタートアップの創業者が解説する。「Nobest IoT」を導入すべき4つの理由とは。
1.遠隔監視システムによる一次対応に課題
2.複数のシステムで管理が煩雑になるケースも
3.特許技術で原因を予測 一次対応をスムーズに
4.非接触タグで情報共有 見積もりや提案に役立つ機能も
5.安全・安心に太陽光発電を誰もが利用できる社会に
遠隔監視システムによる
一次対応に課題
「トラブルによる発電のダウンタイムをなくし、安全・安心な発電所の運営を実現したい」。これは、発電事業者とメンテナンス事業者の共通の願いだ。発電所のO&Mのために遠隔監視システムを活用している事業者も多い。
しかし、遠隔監視システムを提供するNobestの石井宏一良CEOは、トラブルの一次対応に課題を感じる場面も多いと指摘する。「設備の異常を知らせるアラームが届いたので、メンテナンス事業者を現地に派遣したところ、ブレーカーが落ちていたなど、メンテナンス事業者でなくても対応できる事象だったというケースも聞かれます」(石井氏)。「スタッフが現場に行く前に異常の原因を推測できれば、対処方法の解像度が上がり、ダウンタイムの軽減につながると考えています」と石井氏は話す。
複数のシステムで
管理が煩雑になるケースも
複数の発電所を管理する事業者の場合、それぞれ異なる遠隔監視システムを使用しているケースも少なくない。これも、発電所のO&Mや管理を煩雑にする原因の1つだと石井氏は指摘する。「管理する発電所がすべて同一の遠隔監視システムを利用しているケースは珍しく、発電量の集計などを手作業で行わなければならないこともあります。そのため、かえって管理コストが膨らんだという事例もしばしば聞こえてきます」(石井氏)。
また、メンテナンス事業者とは別の電気工事店などが現地対応に向かう際、発電所の設備情報や図面、メンテナンスの履歴といった情報の共有に時間を要するケースがあるという。「こうした細かなコミュニケーションの時間が積み重なって対応が遅れると、発電のダウンタイムが長引く可能性があります」と石井氏は、スムーズに情報を共有する重要性を強調する。
特許技術で原因を予測
一次対応をスムーズに
「Nobest IoT」のサービス構成
神奈川県川崎市のNobestは、AIやIoTといった先端技術を得意としている環境系ITスタートアップ企業だ。量子コンピューターを用いて気象情報とさまざまな現象の因果関係を解析し、導き出すシステム「CAEOS」を開発し、特許を取得している。2024年度には、神奈川県のベンチャー支援事業「ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK)」に採択された。
この特許技術を活用したのが、太陽光発電の遠隔監視システム「Nobest IoT」だ。パワーコンディショナやパネルなどに小さなセンサを取りつけてリアルタイムで監視する。ストリングス単位で直流電流の異常を計測することもできる。今後、発電所のトラブルの原因をAIが推測し、対処方法を予測する機能を盛り込む。
こうして蓄積したデータと気象情報を連携させ、異常の原因を迅速に推測する。例えば、気象情報で雷が観測された後に発電所の異常が検出された場合、一次対応としては落雷からの復旧作業が想定されるといった具合だ。これによって、「行かないと原因がわからない」というブラックボックスのような状態が解消され、スムーズで迅速な対応が可能になるという。
非接触タグで情報共有
見積もりや提案に役立つ機能も
「Nobest IoT」の4つの特徴
「Nobest IoT」では、設備にRFIDタグを貼りつけ、これを読み取るだけで施工情報や仕様、メンテナンスの履歴などが確認できる。RFIDタグとは非接触でさまざまなデータを読み取ることができるタグで、交通系ICカードなどに使用されている。メンテナンス事業者のパートナー企業などが現地に駆けつけた場合でも、スマートフォンをRFIDタグにかざすだけで必要な情報を確認でき、メールなどで資料をやり取りする手間を省略できる。
さらに、「Nobest IoT」には、無料サービスとして簡易的な発電シミュレーションが可能な「発電量予測機能」が付帯されている。ブラウザ上で指定した住所の屋根をクリックすると、発電量の予測値が即座に表示され、「売電モード」、「自家消費モード」といったシミュレーションのタイプも選択できる。従来、現地調査を経て作成していた見積もりなどを瞬時に作成できる優れた機能だ。
安全・安心に太陽光発電を
誰もが利用できる社会に
Nobestの創業者の石井氏は、ゴミ拾いをして褒められたことをきっかけに、幼少期から環境分野でのビジネスを志していた。しかし、東日本大震災の際、太陽光発電を搭載した住宅で、漏電による火災の懸念から太陽光発電の電気を使わなかったというエピソードに衝撃を受け、「重要なことは、再エネ発電設備を導入するだけでなく、安全・安心に利用できるようにする仕組みを作ることだ」と気付いたという。そうした信念から、「持続可能な電気を買わない家」の実現を目指すNobestを設立した。「今後は、住宅向けのサービスも開発し、より多くの方がエネルギーを持続的かつ安全・安心に使える環境を作っていきたいと考えています」と石井氏は展望を語る。
PROFILE
株式会社Nobest CEO
石井宏一良 氏
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問い合わせ
株式会社Nobest
〒211-0004 神奈川県川崎市中原区新丸子東2-895-33
取材・文:山下幸恵(office SOTO)
SOLAR JOURNAL 蓄電池特集号より転載
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