太陽光発電一体型計測ステーション。計画段階から運転開始後までデータ収集
2025/08/20

米国のNRG社が開発した「フレア」は、7つの気象センサーを一体化した計測ステーション。太陽光発電事業の計画段階から運転開始後まで、途切れなくデータを収集し、収益の最適化をサポートする。
メイン画像:一体型計測ステーション「フレア」を2014年に設置(岡山県美咲町 写真提供 インター・ドメイン)
1.7つの気象センサーを一体化して計測
2.<計画段階>計画発電量や建設計画の不確かさを軽減
3.<運転開始後>ソイリング計測でパネルの保守費用を最適化
4.不確実性を排除して確かな事業計画を
7つの気象センサーを
一体化して計測
太陽光発電事業の計画と設計を最適化し、余計な費用を抑えて最大の利益を得たい。そのためには太陽光パネルの選定、傾斜と設置方角の最適化、気温変化を考慮したケーブルの選定、風圧を考慮した架台の選定などが必要となる。フレアは、「日射量」「風速」「風向」「気温」「雨量」「湿度」「気圧」の7つの気象センサーを一体化した計測ステーションだ。
2012年に固定価格買取制度が導入されて以降、日本の太陽光発電所は急速に拡大してきた。しかし現在においては、島国である日本の限られた国土で太陽光発電所の新規開発に適したエリアは減少傾向にあり、運転を開始した既設発電所でも運営上の課題がうきぼりになっている。
フレアは、太陽光発電の計画段階の「事前調査」だけでなく、運転開始後の「検証調査」も実施する。2010年に販売を開始して以来、これまでに米国を中心にイタリアやスペイン、豪州、インドなど40ヶ国で約300基が設置されている。日本総代理店のインター・ドメインは、製造元のNRG社と風況調査の分野で35年間取引を続けてきた。同社代表取締役の杉本信策氏は、「欧米の国々では、大規模な太陽光発電所を設置する際に、日射量や気象データを現地で計測することが融資の条件になっています。また、太陽光パネルやO&Mの品質保証確認にも利用されています」と説明する。
<計画段階>
計画発電量や建設計画の
不確かさを軽減
フレアには、高さ2メートルの「観測タワー」に、7つのセンサーと自立電源、データロガー、ソイリング計測などの機器が設置されている。100W太陽光パネルと蓄電池で構成される「自立電源」によって、計画段階から計測機器を安定的に運用する。「データロガー」は、予定地に電源と構内通信網(SCADA)がないあいだ、リモートパックを接続して観測データを電子メールで毎日送り届ける。
太陽光発電の適地選定には、地元自治体の条例による規制と立地条件の両面からの検討が必要だ。特に、災害リスクが高い地域や環境影響の大きい場所では、設置が制限される場合がある。杉本氏は、「フレアは太陽光発電の予定地において、計画段階では地上付近の『真実』を語る日射量と気象データを総合的に収集し、商業運転に向けて計画発電量や建設計画の不確かさを軽減します。そして、低リスク低コストの、より高レベルのプロジェクトファイナンスに必要な根幹のリソースとなります」と強調する。
<運転開始後>
ソイリング計測で
パネルの保守費用を最適化
一体型計測ステーション「フレア」の設置モデル
太陽光発電の商業運転が始まると、最適な運用のためのモニターを提供する。太陽光パネルが太陽追随型か固定型かにかかわらず、また表面型でも両面型でもシェアリング型でも、パネルの効率と環境をモニターし、適切なタイミングの保守および清掃計画を策定するために必要なデータを得られるようにしている。稼働モニターは、太陽光発電モニタリング・評価についての国際規格「IEC61724‐1:2017」に準拠している。
太陽光パネルの表面が汚れた場合の出力低下を観測するのが「ソイリング計測」だ。同じ太陽光パネルを2枚並べ、一方は表面を常に汚れのないように保ち、もう片方は放置しておき、2枚の出力の違いを計測する。
たとえば春は、大気中のホコリや黄砂、飛来する花粉や種子が太陽光パネルに付着しがちな季節である。太陽の光はパネルに届く前に減衰してしまう。たとえば秋は、大気も人の心も澄み渡る季節だ。パネルの表面は春と異なり、きれいに保たれている。この違いは、パネルの発電量だけをモニターしていても把握できない。天気や大気の状態による出力変化と区別できないためだ。
「最大限の発電が期待できるよう、広い敷地に並ぶすべてのパネルをこまめに清掃して常にきれいに保つのは経済的に非効率です。ソイリング計測によって、パネル表面の状態を定量的に把握すれば、季節ごとに最適な費用配分となる保守計画を立てることができます」と杉本氏は力を込めて語る。
不確実性を排除して
確かな事業計画を
インター・ドメインは、フレアの設置からメンテナンスまですべて自社で対応し、日本国内での導入実績を積み上げている。フレアは2014年に岡山県美咲町で、山あいの未利用地に太陽光発電の計画検討を目的に国内で初めて設置された。長野県では牧草地における計画検討のために、島根県では新設のメガソーラーにモニター用の計測ステーションとして導入されている。
代表取締役の杉本氏は「これからは日本国内でも融資などで資金を調達するにあたって、事業の確実性がこれまで以上に求められる時代になると予想しています。太陽光発電の適地が少なくなるなか、不確実性を最小限にとどめ確かな計画にしていくため、また運転開始後の利益取りこぼしの排除と回復にご活用いただけたらと考えています」と話している。
PROFILE
インター·ドメイン株式会社
代表取締役
杉本信策氏
問い合わせ
インター・ドメイン株式会社
横浜市保土ヶ谷区神戸町134 横浜ビジネスパーク ウエストタワー11F
電話 045-459-9501
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SOLAR JOURNAL vol.54(2025年夏号)より転載
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