【トップランナー座談会】円安を超えて、FIT後の太陽光発電市場を展望
2022/12/20
ロシア・ウクライナ危機、為替の激変など、風雲急を告げる太陽光発電市場。モジュールメーカー、パワコン・蓄電池メーカー、商社・EPC、新電力、各トップランナーは今の状況をどう捉え、未来に何を見据えるのか? ライセンエネルギー上地康文氏のファシリテーションにより緊急座談会が実現した。
円安により加速する
自家消費型太陽光発電
ライセンエネルギー株式会社
営業部長
上地 康文氏
株式会社UPDATER(みんな電力)
事業本部BPO事業部 マネージャー
小杉 啓太氏
Sungrow Japan株式会社
営業部 統括マネージャー
唐 晨氏
株式会社エクソル
商品本部長
薄井 陽一氏
ライセンエネルギー 上地氏(以下、上地氏) ロシア・ウクライナ問題により激変した国際情勢のもと、歴史的な円安も加わり、日本の太陽光発電業界はいま試練の時を迎えています。
本日は、それぞれのお立場から再生可能エネルギーの導入拡大に取り組む3社、「太陽光発電の総合企業」として様々なソリューションを提供するエクソル 薄井陽一様、「顔の見える電力」を掲げて需要家のニーズに応える新電力みんな電力(株式会社UPDATER)小杉啓太様、世界有数のパワーコンディショナ・蓄電池メーカーとして知られるサングロウ 唐晨様にお集まりいただきました。
この機会を通して、日本の太陽光発電業界の課題を共有し、解決への糸口を探れればと考えています。まずは、目の前の問題として、円安の影響についてお聞かせください。
エクソル 薄井氏(以下、薄井氏) 円安の影響により海外からくる部品のコストが上昇し、案件の中止や延期を検討されるお客様も出てきました。ただし、それはFIT案件に関してであり、自家消費案件においては、逆に導入を急がれるお客様が少なくありません。それは太陽光の導入コストよりも、電気代の高騰の方が深刻な問題であると捉えられているからです。
円安の影響はもちろんありますが、私たちとしては、EPCコストと電気代のバランスが鍵だと考えています。
みんな電力 小杉氏(以下、小杉氏) 弊社は小売電気事業者として、全国の発電事業者からFIT電気もしくは非FIT電気を調達しております。FIT電気は制度上、調達単価がJEPXのスポット市場価格と連動するため、実質的に燃料価格の高騰や為替の影響を大きく受けています。市場価格の高騰は、燃料費調整額のような調整額として電気料金に反映せざるを得ない状況です。
需要家様に対しては、相対契約を結んで再エネ発電所をつくり固定価格で供給するコーポレートPPAや自家消費型太陽光発電導入のご案内もしています。薄井様がおっしゃったように、できるだけ早く自家消費型太陽光を導入して買電量を減らしたいというニーズが、これまでになく強まっているのを感じます。
上地氏 確かに、コンビ二や工場の自家消費案件が増加しており、モジュールに関しては屋根上に設計しやすい小型パネルのニーズが高まっています。また、営業時間に影響がでないよう深夜早朝に納品するなど、これまでとは異なる細やかな対応が求められるケースも増えてきました。
弊社としても、為替状況や電気料金高騰の影響により、卸電力市場に依存しない自家消費やPPAへの移行が加速するのではないかと考えています。
サングロウジャパン 唐氏(以下、唐氏) おっしゃる通りですね。現状では為替の影響もあり、需給バランスに支障がでているところもありますが、来年からは着実に回復していくものと予測されます。FITが終わっても、日本の太陽光発電は自家消費やPPAで大きく伸びていくでしょう。
我々もメーカーとして、新たなニーズに応えるパワーコンディショナを開発し、同時にコストパフォーマンスを高めていきたいと考えています。また、太陽光のこれからを支える蓄電池にも、いっそう力を注いでいく方針です。
FIT後に求められる
PVソリューションとは?
上地氏 これからの主流になるであろう自家消費型システムにおいて、太陽電池モジュールメーカーに期待することは何でしょうか。
薄井氏 自家消費、とくに住宅用に関しては、小ぶりな太陽光パネルに力を入れていただきたいと思っています。モジュールメーカーさんの間では、セルの大型化が競われ、それに伴いパネルのサイズも大型化してきていますが、日本の住宅の屋根には大き過ぎるものも少なくありません。
一般に、セルが大きくなると電流値が上がり、代わりに電圧が下がってしまう傾向にあります。少ないパネル枚数では、パワーコンディショナを動かす電圧すら得られないということにもなりかねません。
弊社では独自に設計した住宅用の高電圧モジュール「VOLTURBO(ボルターボ)」を開発し、たった2枚からでも屋根上に設置できるシステムを作り上げました。モジュールメーカーさんにも、日本の住宅事情にふさわしい小型モジュールを開発して、選択肢を増やしていただければと願っています。
上地氏 私どもも、日本の自家消費市場には小型モジュールが必要であると考え、開発を進めてきたところです。現在すでに2種類の屋根上に適した小型パネルを展開しておりますが、今後はさらにラインナップを拡充し、屋根上自家消費案件の課題解決に直結するご提案をしていきたいと思っています。
唐氏 我々はパワコンメーカーとして、大型セルを採用した高出力モジュールにも、屋根上の小型モジュールにも、それぞれに対応するラインナップをご用意して、お客様の多様なニーズにお応えしています。
ライセンさんは最新のN型HJTモジュールなど超高効率モジュールを各種発売しておりますが、モジュールがどんなに優れていても、それに見合うパワコンがなければ、宝の持ち腐れです。弊社では製品回路ごとの入力最大電流および最大短絡電流を高めたほか、MPPT回路数を他メーカーよりも多く設けることで、超高効率モジュールの150%を超える過積載にも対応しました。
現在、工場や物流倉庫など産業用の自家消費案件に向けて、蓄電システムもラインナップしています。今後は、設置義務化の動きが拡がると予想される住宅用太陽光に向けて、ラインナップを拡充してまいります。パネルメーカーさんとは、知見を共有しながら、自家消費に役立つソリューションを一緒に考えていけばと思っています。
小杉氏 自家消費型太陽光発電のニーズの増加に伴い、このところ弊社のお客様には、太陽光発電所の長期安定稼働、ひいては最終的な廃棄の問題に関心を寄せられる方が増えてきています。パネルはどう処分されるのか、リサイクルはできるのかなど、一般消費者の方々も気にされているようです。モジュールメーカーさんには、パネルのライフサイクルについても積極的に発信して、社会の安心感を醸成していっていただきたいと思っています。
上地氏 メーカーとしては、廃棄のことなどを知ってもらう努力に欠けていたと言わざるを得ません。一般には誤解もあるようですが、モジュールの廃棄やリサイクルの方法は既に確立されています。弊社も、お客様に対しては、それぞれのモジュールにおける金属のグラム数やガラスのグラム数などを詳細にお伝えして、不安解消に努めているところです。今後は、より幅広い方々に向けて、業界各社の皆様とも協力しながら周知を図っていきたいと思います。
太陽光発電は、30年以上は余裕で機能するシステムです。長期安定稼働を当然のこととし、日本の主力電源として受け入れらるものとなるよう、今後とも情報共有を図っていければ幸いです。本日は、ありがとうございました。
問い合わせ
ライセンエネルギー株式会社
東京都中央区京橋2-12-2NEWSXビル 8階
TEL:03-3538-3533
取材・文:廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.43(2022年秋号)より転載
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