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出力制御は珍しいことではない? 再エネ先進国では”ごく日常的”

今年の再エネトピックのひとつとして挙げられる、九州電力が行った"出力制御"。日本国内では物議が醸されたが、実は再エネ先進国ではごく日常的に起きているのだ。

前回記事:「九州電力の”出力制御”はなぜ実施された? 発電量を調節する理由と背景」

出力制御のポイントと
問題点は何か

問題は、事前に出力制御を避けるための十分なシステムが整備されているのか、またその制御を避ける努力がきちんとされたかどうかである。

その前提として、重要なポイントがある。再エネ電力の価値と重要性の認識である。CO2削減効果や分散型によるBCP対策としての利用価値は当たり前として、何より限界費用ゼロのコストが安い電気であることを忘れてはならない。つまり、多面的な価値があるうえ安いエネルギーであり、様々な努力を図っても優先的に使うのが経済的に見ても有利という共通の考え方である。

九州電力は、余剰電力分を揚水発電でため込んだり、火力発電を抑制したり、また他の地域へ送電したりする努力をしたが、それでも大きな需給のギャップが出ると予想されたと述べている。今後の検証などを待ちたいと思うが、特に他地域への電力融通が十分であったかどうかは重要である。日本の電力システムは、地域独占する大手の9つの電力会社がそれぞれの管内で需給バランスを合わせることを原則としてきた。このため他の地域との電力のやり取りは例外的にしか扱われておらず、融通システムも未熟であった。さらに原発事故後でも連系線の利用率は低いままである。

今年の猛暑で、一部の大手電力会社が他の大手からの電力融通を受けたことがあった。これを「停電を免れた綱渡り」と一部のマスコミが報じた。しかし、この出来事を見て危機をあおるのではなく、電力の融通の効果が十分あったというポジティブな実例と考えるのが正しい。欧州では、国家間での電力のやり取りが普通に行われている。繋がっているものをこれまで使わなかった方がどうかしているのである。

再エネ拡大のプロセスとしての
出力制御

あえて言えば、出力制御はいずれ珍しくなくなる。需給バランスが崩れることによる電圧の変化が予測される事態は、再エネ先進国ではごく日常的に起きている。そこでは、例えば発電の細かいオンオフなどを含む調整力(柔軟性のひとつ)が必要になり、それ自体が大きなビジネスになっている。最近話題のVPP(バーチャル発電所)は、その調整力を使ったビジネスモデルでもある。

一方で、再エネ先進国のドイツでは何割もの出力制御が行われているわけではない。精度の高い天気予報による発電予測やそれに合わせた市場での電力取引、前述した調整力の機能的な運用などで、可能な限り多くの再エネ電力を使う努力が進んでいる。実際の再エネの出力制御は全体の3%未満といわれている。まだ、蓄電池の価格が高いため、現状での調整力やVPPシステムは蓄電池にはほとんど頼っておらず、今後、蓄電池パリティが達成されれば、さらに再エネが入りやすくなるはずである。

今回の九州電力の出力制御に関してこんなデータがある。九州でメガソーラーを保有する企業の発表によると、最初の2週末分の影響は損失発電量0.1%程度と軽微だとしている。ある太陽光発電業者によれば、2割の出力制御が起きると事業が成り立たなくなるそうである。現状ではあまり大騒ぎせずに、どのような対策が事前にとられていたのか、そして実際に何が起きたのか、どこに問題があったのか無かったのかを把握する努力から始めるべきだと考える。

出力制御は過程であって、最終的な目的は再エネ電力をできる限りたくさん入れることでなければならない。

プロフィール

エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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