東京都がグループ購入で再エネ電力の普及促進、国内初モデル事業
2019/09/02
東京都は、2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」に力を入れている。7月5日、都は再生可能エネルギー電力の購入希望者を募り、一定量の需要をまとめ価格を低減することで再エネ電力の購入を促す、国内初のモデル事業を開始した。
再エネ電力のニーズをとりまとめ
家庭の再エネ電力購入を後押し
「再生可能エネルギーグループ購入促進モデル事業」という国内初のモデル事業は、都内の家庭が再生可能エネルギーによる電力を選択する機会を増やし、購入を促進することを目的としている。事業期間は2019年7月末から2019年3月末までの予定だ。7月5日、この事業を都と共同で運営する法人の募集開始が発表された。
この事業のスキームは以下の通り。
まず、都が都民に対し、再エネ電力の内容やグループ購入の仕組み・メリットを説明。公募により選定される実施事業者は、購入希望者の募集や受付、申し込み後はプランの説明などを行う。さらに、実施事業者が入札によって最も安価に再エネ電力を販売する電力会社を選定し、その選定された電力会社と都民との間に再エネ電力の購入契約が成立するという仕組みだ。
再エネ電力の購入を希望する都民が、実施事業者によってグループ化され、需要がまとめられる。それによって実施事業者と電力会社との間に入札が成立し、結果的に都民個人が電力会社と契約するより安価に契約することができる。
また、都民が自身で再生可能エネルギーによる電力メニューを持つ電力会社を探すよりも、実施事業者が入札というかたちで公募することでリサーチの手間を省くメリットもある。
家庭のCO2削減は喫緊の課題
「バーゲニングパワー」の活用に注目
東京都のCO2排出量の部門別構成比を見ると、2017年度速報値において、家庭部門からの排出は全体の29.3%を占める。全国平均における家庭からのCO2排出割合は15.6%であるため、都の数値は全国平均を大きく上回っている。
もちろんこれは、都に人口の多くが集中していることや、他の地方と異なり工場等の産業部門が少ないということも影響している。しかし2010年度の同部門からの排出が26.8%と増加傾向であることは否めず、都にとって家庭部門のCO2排出量の抑制が喫緊の課題であることがわかる。
今回のモデル事業によって、都は消費者を束ねることで「バーゲニングパワー」、つまり電力会社から安価な電力メニューを引き出す交渉力を高めることが可能。この交渉力を活用し、再エネ電力の普及を後押しするねらいだ。消費者と電力会社との間に実施事業者という仲介を入れることによって、単身世帯もその「バーゲニングパワー」によるメリットを受けることができる。
さらに電力会社にとっては、参加世帯の電力使用量データを最適な料金メニューの開発につなげるなど、今後のビジネスにも波及することが考えられる。
DATA
文/山下幸恵