中国、2020年には太陽光を「補助金不要な市場」へ 2019年はその移行期
2019/05/29
太陽電池モジュールの世界最大生産地である中国。現在、国家による大規模なプロジェクトが進められているが、具体的にどのような目標に向かっているのだろうか。資源総合システムの貝塚泉氏が、世界の再エネ情勢を読み解くコラム第5回。
5.31問題により
価格低下が加速
中国は、世界最大の生産地かつ消費地であり、国内の需給状況が、国際的な太陽電池モジュールの価格にも大きな影響を及ぼしている。
中・国家能源局(NEA)によれば、2018年末の中国の系統連系形太陽光発電システム累積導入量は174.63GWであった。NEAが発表している2017年末の系統連系形太陽光発電システム累積導入量は130.25GWであるため、2018年の新規導入量は約44GWとなり、前年の53.1GWから約16%減少したことになる。
中国政府による5.31問題(導入抑制政策)により、下期以降に不透明性が生まれた結果市場が縮小し、2018年下期に生産能力と需要のギャップが拡大。ポリシリコンから太陽電池モジュール、太陽光発電システムまでの価値連鎖全体で価格低下が加速した。
下図に中国における太陽光発電の年間導入量及び累積導入量の推移を示す。
図1 中国の太陽光発電システム導入量推移
出典:中・国家能源局(NEA)プレス・リリースから(株)資源総合システムが作成
多結晶シリコン太陽電池モジュールのスポット価格は2018年1月時点では、31米セント/Wであったが、下期には25米セント/Wになり、2018年12月26日時点で21.9米セント/Wと報告されている。
ポリシリコンのスポット価格も2018年12月26日時点で9.53ドル/kgとなった。2018年は上流側にとっては急速な価格低減に直面した困難な年であったが、価格低減の進展により、太陽光発電は世界各地で最も安価な電源として認識されるようになった。
一方で、中国国外での中国太陽光発電産業協会(CPIA)が発表した、2017年及び2018年の中国国内の太陽電池関連製品の生産量を示す。ポリシリコン、結晶シリコン・ウエハー、太陽電池セル・モジュールとも中国国内の生産量は前年比で増加している。
図2 2017年及び2018年の中国国内における太陽電池関連製品の生産量
出典:中国太陽光発電産業協会(CPIA)「太陽光発電産業2018年回顧および2019年展望」(2019年1月)講演資料から(株)資源総合システムが作成
2018年の価格動向をみると、中国市場が世界の太陽電池モジュール価格に大きな影響を与えることが示され、2019年の中国市場の動向に関心が集まっている。
補助金不要な市場への転換
国家能源局(NEA)は、2019年2月18日に2019年の太陽光発電プロジェクト開発の管理方針に関する意見交換会を実施した。
2019年は、「国家の補助金を必要とするプロジェクト」と「国家の補助金を必要としないプロジェクト」を明確に線引きすることが打ち出された。
中国政府は2020年に国内太陽光発電市場を補助金不要の市場へと転換していくことを目指しており、2019年はその移行期として位置づけていることが反映された。
この4月14日には「2019年の風力発電、太陽光発電建設管理に関する要請の通知(草案)」がNEAから公表され、2019年に国家の補助金の適用を受けるプロジェクトの枠組みが提案された。
2019年に国家の補助金の適用を受けるプロジェクトは以下の5つ。計30億元の予算が充当されることが明らかになった。
①太陽光発電による貧困緩和プロジェクト
②住宅用太陽光発電
③設置容量6MW以上の大規模太陽光発電所
④設置容量6MW未満の業務用分散型太陽光発電所
⑤国家の専門プロジェクトや実証プロジェクト(省際送電を行うプロジェクト等)
この草案の発表により、導入が予測されるプロジェクトの設置容量は約30GWになると報じられた。草案段階ではあるが、市場の不透明感が薄らいできた。
今回の草案が正式に公布されるのは2019年5月になる見通しであることから、実際の設置は2019年下期以降になると考えられる。また、中国国家再生可能エネルギーセンター(CNREC)が発表した中国の2019年第1四半期の太陽光発電システム新規導入量は、前年同期比46%減の5.2GWであったことから、方針の正式公布の前倒しを望む意見もでてきている。
資源総合システムによる中国関係者へのヒヤリングでは、業界は2019年の新設導入目標を45~50GWとしているが、中止が必要である。
文/資源総合システム 調査事業部 部長 貝塚泉