「JA全農」が立ち上がる画期的な再エネ促進法とは
2016/06/06
再生可能エネルギーを推進しようにも、何かと土地の制約が多い日本。遊休地や工場の屋根などの有効活用が必要なのではないか……。2012年7月に始まった固定価格買取制度(FIT)を機に立ち上がった、全国農業共同組合連合会(JA全農)による、農家の持つ建物屋根や遊休地を活用した太陽光発電などの取り組みを紹介する。
農業関連施設や遊休地を
活用した「支援事業」モデル
JA全農が太陽光発電への取り組みを本格化して3年が経過した。JAグループは2012年10月に、再生可能エネルギーを最大限に活用することを決議。東日本大震災をきっかけとしたエネルギーに関する危機感を背景として、2012年7月に始まったFITの後押しもある。JA全農には、再生可能エネルギーの普及促進と資源・施設の有効活用を通して、農業経営の基盤強化や地域の活性化支援に繋げたいという狙いがある。
JAグループの中で、JA全農は農畜産物の販売や生産資材の供給など、主に経済事業を担う組織だ。幅広いネットワーク内には、大型畜舎や選果場などの農業施設、物流関連施設、食品・飲料工場など、多数の関連施設がある。
狭い国土に急峻な山地が多い日本では、再生可能エネルギーを推進しようにも土地の制約が多い。そこでJA全農では、こうした施設の屋根や遊休地を活用した太陽光発電を事業の柱に据えた。
施設所有者は初期投資不要で、屋根や遊休地の提供だけで発電事業が行える。屋根を提供するこの仕組みは一般的に「屋根貸し」と呼ばれているが、FIT導入を機に新たなビジネスモデルとして注目され、自治体なども積極的に取り組んできた。
JA全農の燃料部で新エネルギー推進を担う藤原敏彦さんは、「農地を保全しつつ発電事業を行うためには、既存建物の屋根等を有効活用するのが最も効果的だと判断しました」と事業開始の経緯を振り返る。
JAグループならではの
包括的な支援を
本格的な取り組み開始から3年が経過した現在、2012〜2013年にFIT認定を受けた案件の内、開発可能と判断した全国の約120ヶ所で、順次開発準備を進めている。
設備容量は400〜500 kW程度が中心と、決して「メガソーラー」と呼ばれる規模ではないが、太陽光をはじめとした再生可能エネルギーの普及促進という意味で、藤原さんは確かな手応えを感じているという。
「農業団体であるJA全農としては、自前の発電所建設が第一義的な目的ではありません。農業関係者の中に太陽光発電の認知度が高まってきたので、今後は成功事例の発信などを通じて、各地域で自発的な取り組みが進むよう応援してきたい」と抱負を語る。
金融機関も有するJAグループならではネットワークで、意欲的な農家を包括的に支援できるのも強みだ。再生可能エネルギーの普及が、さらに強い農業への起爆剤になることを期待したい。