森林にビジネスチャンス! 新規参入4タイプ紹介!
2018/04/17
バイオマス産業に新規参入するには、どのようなスタイルが考えられるのか? 森のエネルギー研究所の大場龍夫代表取締役に聞いた。
地域との共生が
何よりも大事
今回、大場氏に尋ねたのは、各種バイオマスの中でも、とくに国内の森林資源を活用する事業について。開口一番、大場氏は、「どんな形で参入するにしても地域との共生が何よりも大事」だと釘をさす。それぞれの地域特性に合わせたビジネスモデルを構築しないかぎり、持続可能なバイオマス事業は成り立たないというわけだ。 その上で、これから新規参入する人のために4つのスタイルを提案してくれた。
1.熱電併給
FITと熱でダブルインカム
ホテルや温泉施設などの近くに熱電併給設備をつくる。
まず挙げてくれたのが、発電した電気はFITで売電し、熱はお湯の状態でホテルや温泉施設に供給するという事業スタイルだ。森林バイオマスの場合、太陽光など他の再生可能エネルギーとは異なり、発電に伴って熱が発生する。その熱を利用しないのはもったいないし、中小規模の設備の場合、売電収入だけでは事業としての採算性が低いのも現実だ。「熱を売る相手施設を探すところから始めて、商売をつくっていく。計画段階から、施設側との連 携を図っていくことがポイントになる」という。
2.熱販売
地域の熱供給事業に参画
発電は行わず、熱販売だけを行う。実は、そんな事業スタイルにも将来性があるという。
お湯をつくるだけの設備であれば、導入コストも比較的安い。しっかりした販売先と燃料調達先が確保できれば、長期安定的な事業としてやっていける」との こと。民間の事業者が、公共の温泉施設の脇にチップを燃やすボイラーを設置し、その施設に対して熱販売を行うというケースなどがこれにあたる。熱電併給の場合にもいえるが、公共の施設が相手なら安心して長期計画を練ることができる。温泉施設側としても、 重油を使うより環境に優しく、コスト削減に結びつくなどメリットは大きい。
3.燃料供給
チップを製造し発電所に販売
チップ工場をつくって、バイオマス発電のための燃料供給を行う。
多くのバイオマス発電設備で、木材を細かく砕いたチップを燃料として使用している。発電側ではなく、このチップをつくる側に回ってしまおうという逆転の発想だ。 「これだけバイオマス発電所が増えているので、そこに燃料を供給するビジネスにも大きなチャンス があります」と大場氏。チップの形なら全国流通が可能なので、各地のバイオマス発電所を相手に商売ができるというわけだ。まだまだ事例は少ないが、バイオマス発電事業とチップ製造事業の両方を手掛けるところも出てきているという。
4.森林経営
山主になって材を押さえる
最後に挙げてくれたのが山を買って森林経営を行うという、さらに大胆な参入のあり方。
「バイオマス発電のためだけでなく、住宅の柱材や製材用の材などをしっかりと峻別し、30 年・ 50 年といった長期スパンで取り組んでいただきたい事業です。課題としては、所有者がバラバラの山が多いということ。森林組合などに相談して、まとめあげた上で購入できると良いですね。森林資源のニーズはまだまだ拡がっていきますから、いまのうちに山を握っておくというのも、あながち突飛な発想ではないのです」。 長年、日本の森林を見続けて きた大場氏ならではの提案だ。
DATA
森のエネルギー研究所 代表取締役
大場龍夫氏
問合せ先:株式会社森のエネルギー研究所
東京都羽村市小作台1-4-21 KTDキョーワビル小作台3F
TEL:042-578-5130
取材・文/廣町公則
『SOLAR JOURNAL』vol.24から転載