「太陽光発電事業の評価ガイド」はなぜ制定された? 活用方法は?
2019/01/24
2018年6月に制定された「太陽光発電事業の評価ガイド」。発電事業の健全化を図るためのものだが、具体的にはどんな役割があるのだろうか。「太陽光発電事業の評価ガイド」策定に参画した、JPEAの長峯卓氏にお話を伺った。
多様なリスクを洗い出し
発電事業全体の健全化を促進
西日本豪雨や台風21号、北海道胆振東部地震など、昨年は多くの自然災害に見舞われました。太陽光発電設備に関しても、強風によるパネルの破損や土砂崩れによる設備の倒壊など、各地で被害が報告されました。保安・安全対策のあり方が、改めて問われているといえるでしょう。
太陽光発電協会(JPEA)はこれまで、関連団体とも協力しながら、安全確保に向けて様々な取り組みを行ってまいりました。「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン」や「保守点検ガイドライン」など、各種ガイドラインの策定もその一環です。ただ、これらは発電設備を中心とした技術的なマニュアルという意味合いの強いものでした。
真に太陽光発電の安全性を担保するためには、発電事業全体の健全化が不可欠です。発電設備だけでなく、土地・権原・土木・構造関係も含めた発電事業全体を評価して、長期安定稼動に対するリスクをトータルに洗い出していかなければなりません。昨年6月に策定された「太陽光発電事業の評価ガイド」は、正にそのためのものなのです。
権原・手続、土木・構造など
多岐にわたる評価項目を設定
太陽光発電事業には、企画立案、設計・施工、運用管理、撤去処分に至るまで様々なフェーズにおいてリスクが存在します。また、土地の権利、発電設備の安全性、発電事業の収益性、地域との共生などリスクの種類も多様です。
今後、太陽光発電の長期安定電源化を実現するためには、個々の発電事業における各種リスクを低減し、リスクが顕在化されたものについては改善し、健全性の高いものを増やしていかなければなりません。その実現のためには、太陽光発電事業にどのようなリスクが存在するかを評価できるようにすることが、はじめの一歩となります。
このガイドでは、太陽光発電事業に関するリスクを、「権原・手続き」「土木・構造」「発電設備」それぞれの観点から評価できるよう、必要な評価項目・ポイントや評価方法をまとめています。
本ガイドの対象は、住宅用以外の地上または建築物等に設置される太陽光発電システム全般であり、評価レベルは1次評価・2次評価の2段階としました。1次評価は形式確認・目視確認など比較的簡易に実施可能な評価とし、2次評価は実態確認・検査確認など、さらに深堀りを行うためのものとなっています。
中古市場の適正化を促し
長期安定稼働をサポート
評価ガイドは、今後拡大が予想される太陽光発電所のセカンダリー(中古)取引において、発電事業の継続に伴うリスクを客観的に分析するための指標という役割も担っています。
FIT買取期間終了後も継続する太陽光発電事業の長期安定稼働を実現するためには、健全な発電事業を正しく評価し、適正な取引が行われることが不可欠です。私ども太陽光発電協会としては、本ガイドが発電所の事業性を評価する際の客観指標となることで、発電所売買の透明性が向上し、セカンダリー市場の活性化(再投資の促進)につながればと考えています。
本ガイドの活用に関しては、業界はもちろん、関係省庁からも様々な期待を寄せられています。今後はそれに応え、本ガイドに基づいて適切に事業評価ができる人材の育成や、資格制度の創設なども検討してまいります。また、不動産鑑定士等と連携を図りながら、本ガイドに基づく評価レポートが有効活用される環境作りにも取り組んでいく方針です。
なお、長期安定電源化に向けた取り組みについては、「太陽光発電シンポジウム」でも様々に論じられる予定です。皆さまのご参加をお待ちしております。
プロフィール
一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)
政策推進部長 長峯 卓
1979年三菱電機株式会社に入社。2011年より太陽光発電関連事業に従事。2017年より現職。「太陽光発電事業の評価ガイド」策定に事務局として参画。
取材・文/廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.27(2018年秋号)より転載