岡山県美作市が太陽光パネル税導入を検討 「二重課税」が今後の焦点に
2019/08/02
晴れの国、岡山県の美作市が太陽光パネル税の導入を検討している。 自治体が条例で制定できる法定外目的税として、1平方メートルあたり50円の課税。 対象となるのは、10kW以上の野立て太陽光発電設備だ。 議論を呼んでいる新しい税制度の争点について考える。
1平方メートルあたり50円
早ければ2020年にも
岡山県美作市は、事業用太陽光発電所のパネル面積に応じ、発電事業者に課税する「事業用発電パネル税」の新設を進めている。
10kW以上の野立て事業用発電設備を対象とし、パネル1平方メートルあたり50円の課税。10kW未満及び屋根置き太陽光は対象にならない。対象期間は2020年度から2030年度の10年間で、すでに稼働している発電設備も対象となる予定だ。
このパネル税創設の目的について、美作市は「安心安全な環境の保全を目的とし、防災対策、生活環境対策及び自然環境対策のための施策に要する費用に充てるため」としている。
2000年に新設された「法定外目的税」という仕組みでは、自治体の条例によって税目を新設することが可能。全国では、これまでに使用済核燃料税や砂利採取税などの導入事例が存在する。美作市もこの法定外目的税を利用して新設を進めており、市議会での条例可決の後、総務省の同意が必要となる。
事業用発電パネル税条例は、6月25日の美作市定例会に上程されたものの、継続審査となっている。
「二重課税」との指摘
これからの審議の争点に
岡山県のすすめる「晴れの国おかやま 太陽光発電のススメ」によると、岡山県内はどの地域においても太陽光発電に優位性があり、県の1kWあたりの平均年間発電量(平成24年度アンケート回答者平均)は全国平均値より約16%も高い。
こうした背景があり、岡山県東部に位置する美作市にもいわゆるメガソーラーが多数建設されてきた。しかし、一部の市民からは、「環境への影響や災害時の二次被害などが起こりやすくなるのでは」といった懸念の声が挙がっており、同市は事業用発電パネル税の検討に至っている。
太陽光発電設備が建設されると、市には固定資産税が新たな税収となるものの、設備の減価償却とともに税収も下がっていく。今回のパネル税は、償却期間にかかわらず10年間の税収が保証される仕組みになっており、市側には税収の補填という意図もあるとみられる。
一方で、このパネル税は「二重課税」に該当するのではないかという意見も出ている。太陽光発電事業者には、すでに法人税、法人住民税、法人事業税や償却資産税が課されていることに加え、発電パネルの面積に応じた課税方法は、固定資産税の課税標準と同じだからだ。
さらに、パネル税の創設は新たな太陽光発電設備の建設を抑制し、再生可能エネルギーの主力電源化を目指す国の方向性に沿わない可能性もある。
今後の審議は、二重課税に該当するかどうかが焦点となりそうだ。
DATA
文/山下幸恵