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これからの農村は“ソーラーシェアリング”が当たり前の時代に。

新しい農村風景が見えてきた。ソーラーシェアリングは、もう決して特別なものではない。これからの農村の“あたりまえ”が、そこにある。

トップ画像:ソーラーシェアリングの一例。アウトドア衣料品大手パタゴニアによる投資案件。運営は市民エネルギーちばが担う。出典:パタゴニア日本支社

FIT全量売電も可能

FIT制度の抜本的見直しにより、低圧(10kW以上50kW未満)の野立て太陽光発電所を新規に設置することは極めて困難となった。FIT認定に際して、発電した電気の一部(30%以上)を自家消費することが要件に加えられたからだ。

一方で、一定の条件をクリアしたソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)は例外とされ、自家消費要件は免除された。2020年度に新設した低圧案件でも、FITによる全量売電を行うことができる。全量FITのための条件とは、農地の一次転用において、いわゆる「10年許可」が認められた設備であるということだ。10年許可については後述する。

こうした制度改革もあり、いまソーラーシェアリングには、これまでになく多方面から関心が寄せられている。さて、ソーラーシェアリングは、現在どこまで進んでいるのか? その先の可能性は?

日本各地に約2000件

農林水産省が、2013年に、農地における太陽光発電の扱いを明確化する通知を発出し、ソーラーシェアリングを実質的に許可してから7年。すでにソーラーシェアリングは日本各地に広がり、その数は2018年度末時点で約2000件、560haの農地で導入されている。

同省では随時、ソーラーシェアリングの導入状況について調査を行っており、今年3月に最新詳細調査(2018年度末現在)の結果を発表した。それによると2013年以降、ソーラーシェアリングの件数は毎年増加傾向で推移してきたが、2017年度には前年度比で減少。2018年度には再び増加し、過去最高の481件が許可された。

「10年許可」が42%

過去の調査で、「ソーラーシェアリングによって営農に支障があった事例の発生割合は、担い手(※)が営農している場合には非常に少なかったこと」「ソーラーシェアリングが荒廃農地の再生に貢献していること」などが明らかになっている。

これを踏まえて2018年5月には、担い手(※)が営農する場合や荒廃農地を活用する場合には、ソーラーシェアリングに必須となる農地の一次転用の期間を、「3年許可」から「10年許可」に延長する改正が行われている。今回の調査では、2018年度末時点で、10年以内の一時転用許可の要件を満たすものが、全体の42%(795件)に上っていることが明らかになった。

※「担い手」とは、効率的かつ安定的な農業経営体、認定農業者、認定新規就農者、法人化を目指す集落営農をいう。

営農に支障が11%

一方で、太陽光発電設備の下部農地において、営農に支障が出ているケースも11%(208件)存在している(2018年度)。


営農への支障の内容(2018年度) 出典:農林水産省

支障の内容をみると、単位面積あたりの収穫量が減少しているもの(営農者に起因)が内53%(111件)と最も多い。

このような発電に支障があるケースに対しては、改善措置を講ずるよう指導が行われる。事業者がこの指導に応じない場合は、最終的に設備の撤去等の命令を行うとされているが、この命令の事例は今のところない。

69%が栽培作物を変更

下部農地での栽培作物は、表のとおりだ。


下部農地での栽培作物 出典:農林水産省

作物の分類としては、野菜等が37%(713件)と最も多く、次いで観賞用植物が29%(553件)、果樹が11%(211件)と続く。

作物別にみると、さかき、しきみ等が29%(553件)、みょうが、ふき、あしたば等が21%(403件)となっており、太陽光パネルにより遮光することを前提とした特徴的な作物が多く栽培されている。なお、太陽光パネルの設置にあたり栽培作物を変更したケースは、全体の69%(1324件)に達している。


取材・文/廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.35(2020年秋号)より転載

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